未曽有の不況を打開する救世主? RIAとは
クラスメソッド株式会社
福田 寅成
2009/1/22
未曽有の不況を打開する救世主はRIA?
2008年末、世の中は未曽有の不況時代に突入しました。「100年に一度の不況」ともいわれ、資料によっては第2次世界大戦時より不況になっていると論じている者まで現れて、その底はまだ見えません。
よく「大不況のときこそ技術革新が行われる」といわれます。不況によって、いったんさまざまなものがリセットされ、新しい技術、新しい人材が不況の後に出現するというのは自然な流れなのかもしれません。そういった「世界を変えていく技術」とは、どのようなものなのでしょうか?
その可能性の1つが、RIA(Rich Internet Application)/リッチクライアントなのではないかと筆者は考えています。
□ いまさら聞けないRIA入門
本特集では、前中後編3回に渡ってRIA入門をお届けします。いま注目されているRIAに関して、その概要と主要なRIA技術たちを紹介し、サンプルアプリケーションも作ってそれぞれを検証します。前編の今回は、RIA概論をお届けします。
なお本連載では、RIAとは基本的に「エンタープライズRIA(業務用RIA)」を指すことにします。アニメーションや動画中心のアプリケーションに関しては、本連載では対象外とさせていただきます。
アプリケーションの歴史の中に潜むヒント
RIAに関する話をする前に、まずこれまでのアプリケーションの歴史をおさらいしておきます。
われわれは何度かの技術革新を経ていまに至っています。コンピュータの登場、といった大きなものは抜きにして、主にデスクトップPC向けのアプリケーション開発に注目すると、1990年台前半にマイクロソフトからVisual Basic(以下、VB)が、1996年12月に同じくマイクロソフトからASPが、1998年にサン・マイクロシステムズからJavaのサーブレット(Servlet)やJSPが登場しました。PerlやPHPが登場して普及し始めたのも1990年代ですね。同時期に初期のWebブラウザである「Mosaic」「Netscape Navigator」「Microsoft Internet Explorer 1」も登場しています。これらの開発技術を中心として、アプリケーションの構築形態に関しては5年から10年周期で変化が訪れています。
図1 アプリケーション開発の歴史 |
□ どんな技術でも普及には5年かかる
図1は、それぞれの時代のアプリケーション開発技術が「登場した」時代を並べているよく用いられる図です。筆者の個人的な感覚ベースですが、標準で利用される技術は普及フェイズの5年前ごろにわれわれの前に登場しているという法則があります。図1に書いてある年の5年後位にそれぞれ普及しているということです(技術を提供する側の年代と実際に利用している開発者側で、この年代の扱いに違いがある場合があるので注意してください)。
1990年代初頭(米国では1991年)に登場したVBですが、1990年代後半にはメジャーな開発技術に成長していました(VB6)。Webアプリケーションが当たり前になってきたのも、そのベース技術が登場した1990年代中盤から時を経た2000年代前半です。Javaでは、2009年現在でもまだ主要な開発技術の1つであるStrutsも2000年には登場していましたが、特に日本で多くの技術者が当たり前に利用し始めたのは2005年前後でした。筆者もStrutsはバージョン1のベータのころから案件で使っていましたが、周りで一般的に流通し始めたのは2005年ごろだった記憶があります。
まずプロジェクトに先進技術を導入する企業が現れ、その後大手企業が標準技術として採用し、大規模な事例が公になるにつれて、より一般にその技術が普及していきます。意外なことに、技術というものは一定のペースで登場→普及→衰退を繰り返しているようにも見えます。
この流れには5年ほどの時間がかかるということです。先端を走る企業から見ると、よく「技術の変化は日に日に速さを増している」といわれますが、どれだけ良い技術でも普及するには、5年ほどは我慢しなければいけないということです。つまり、この5年は「人間に人間が技術を布教する期間」でもあります。ただ、いまの不況を考えると、この「技術の普及」に関しては、いままで以上に時間がかかるかもしれません。
では、この不況時代を切り抜けるカギになるかもしれないRIAが普及するのはいつでしょうか?
□ RIAが普及するのはいつ?
図1では、RIAの登場は2003年ごろ登場となっています。FlashやCurlが登場したのはもう少し前ですが、2003年前後からさまざまなRIA技術が登場しています。Flex 1.0も2004年には登場しています。2003年の5年後の2008年を振り返ると、例えばFlexに関しては比較的多くの企業で採用されるようになり、大規模な基幹システム案件でも使われていますが、まだVBやASP、Strutsなどの過去の普及技術にとって代わるほど普及しているとはいえない状況です。
5年前後の周期で技術革新が行われることが正しいと仮定すると、あと数年先にはRIAが当たり前になるかもしれません。そんな未来のための大きな転換の年が、昨年の2008年でした。昨年はRIAに関するさまざまな技術が登場し、各種RIA技術のラインアップが出そろい、今年以降のRIA普及に向けて本格的に走り始めた年です。2008年を「RIA第2フェイズ」最初の年と本連載では定義することにします。
この「RIA第2フェイズ」の技術が普及を迎えるのが、2008年の5年後の2013年ごろ。ひょっとすると、そのころわれわれはこの未曽有の大不況を乗り越えて新しい(技術の)歴史を刻んでいるかもしれません。
次ページでは、いよいよRIAとは何か? なぜ必要なのかを説明します。
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検証特集:結局、RIAはどれを使うべきなのか?(1) 未曽有の不況を打開する救世主? RIAとは |
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Page1 未曽有の不況を打開する救世主はRIA? アプリケーションの歴史の中に潜むヒント |
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Page2 そもそも「RIA」とは何なのか? なぜRIAが必要なのか? 3つのポイント |
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Page3 RIA開発の問題点 RIAの近未来はどうなる? これからRIAと正しく付き合っていくには? |
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