スタンドアロン型リッチクライアントとは?



野村総合研究所 情報技術本部
主任研究員 田中 達雄
2005/9/9

  スタンドアロン型のリッチクライアントとは?

 それに対し、スタンドアロン型リッチクライアントは、Webブラウザを必要とせず、クライアントOS上にリッチクライアント専用の実行環境を直接インストールして利用する。

 通常、スタンドアロン型リッチクライアントの実行環境は、豊富な機能を備え重量化されており、利用できる端末のスペックに条件を付けているものが多い。その場合、インターネット、イントラネットどちらの場合も利用できる端末をコントロールしやすいWebアプリケーションのクライアントに限定される。

ベンダ リッチクライアント クライアント実行環境 サーバ実行環境 開発言語 開発環境
Microsoft Windows Form .NET Framework(無償) VB、C#、VC++など Visual Studio .NET or 2005(予定)
Longhorn Avalon(※有償) XAML、JavaScript Visual Studio 2005(不明)
Windows Office Windows Office(有償) ── VBA VBA(今後Visual Studio 2005でも可)
── Javaアプリケーション Java VM(無償) ── Java Java 2 SDK 1.4以降 (JWS:Java Web Start機能あり)
IBM Eclipse(無償) ── Java IBM WorkPlace Client Technology(Eclipse)
メディア情報開発 Visual Frame(有償) Java GUI Builder
Macromedia Flashアプリケーション Macromedia Central ActionScript Flash MX
Macromedia Central Flex(有償) MXML、ActionScript Flex Builder
Yahoo Konfabulator Konfabulator(無償) ── XML、JavaScript API
表3 主なスタンドアロン型リッチクライアントの体裁
出所)野村総合研究所

 代表的なスタンドアロン型リッチクライアントには、Java Web Start機能を備えたJavaアプリケーションや.NET Frameworkを実行環境とするWindows Formが挙げられる。

 E*TRADE Financialの「Power E*TRADE Pro」やグレープシティのASP「レーザー学校会計」などはインターネット環境への適用ではあるが、利用端末を限定した利用形態となっている。

 前述の代表的なスタンドアロン型リッチクライアントは、イントラネット世界で進化してきた代表的なリッチクライアントでもあり、利用者の生産性維持/向上を目的にしたものである。それに対し、「Macromedia Central」や「Konfabulator」といったExperience性を重視するスタンドアロン型リッチクライアントの提供も始まっている。

 Macromedia Centralは、Flashアプリケーションをスタンドアロン型で利用するための実行環境であり、2003年秋から提供されている。

 Konfabulatorはシェアウェアとして草の根的に普及したデスクトップ上で動作する「Widget」と呼ばれるXMLとJavaScriptで書かれた軽量アプリケーションの実行環境であり、Yahooに買収された後は無償で提供されている。類似の技術にMax OS Xの「Dashboard」やGoogleの「Google Desktop 2」があり、次世代デスクトップ環境として今後の動向が注目される。

 Yahooに買収された後のKonfabulatorは、実行環境も開発環境もすべて無償であり、クライアント実行環境やサーバ製品、開発ツールなどのライセンスで売り上げていた既存のリッチクライアントベンダの収益モデルとは異なるモデルとなりそうだ。2005年8月執筆時点でYahooから正式なアナウンスはないが、Konfabulator上で動作するWidgetを広告に見立てた広告収入モデルが考えられる。現時点でもAmazon.comやeBayなど企業のホームページへの閲覧ならびにジャンプする機能を備えたWidgetが数多く存在しており、アフィリエイトサービスとして利用することも可能だ。

   激化するシェア争いから今後を占う

 イントラネットとインターネットの世界でそれぞれ独自に進化してきたリッチクライアントであるが、今後、ベンダの拡大路線からその境界を踏み越え、互いに相手の世界への適用をうかがうことになる。イントラネットとインターネットの世界の両雄が同じ土俵でぶつかり合うことになり、リッチクライアント市場におけるシェア争いが激化する。

図4 将来のリッチクライアント分類
出所)野村総合研究所

 以下に主要なベンダの動向を示す。

Macromedia社
  • インターネットの世界で進化してきたFlashアプリケーションであるが、すでにFlexを旗艦製品とし、イントラネットの世界への進出を始めている。
Laszlo Systems社
  • OpenLaszloもFlexと同じアーキテクチャで参入しており、イントラネットの世界への進出も視野に入れている。IBMが業務提携をしており、イントラネット向けクライアントへの適用に強力なバックアップを得ている。
Microsoft社
  • 主としてイントラネットの世界でリッチクライアントを進化させてきたMicrosoft社ではあるが、インターネットの世界から萌芽したAjaxの開発環境「Atlas」を提供予定。すでに普及段階にあるインターネットの世界に加え、イントラネット世界での大規模開発への適用もMicrosoft社の成熟した開発環境が用意されることで対応可能となると思われる。
  • 次期OS「Vista」に備わるWindows Presentation Foundationでは、Flashに類似したインターフェイスを実装可能。.NET Frameworkを実行環境とするクライアントにUser Experienceの実現を可能とする。

 また近年、新たに登場したリッチクライアント(「Konfabulator」「Google Desktop 2」「Dashboard」「Windows Presentation Foundation」「Macromedia Central」など)の多くがスタンドアロン型リッチクライアントであることにも注目したい。

 スタンドアロン型リッチクライアントの特徴は、Webブラウザの制約を受けず、操作性/機能性ともに高いレベルのアプリケーションを開発することができることだ。ベンダ側もWebブラウザの域を超えた新たなビジネスや技術の可能性に期待しているのだろう。

 次回は、スタンドアロン型リッチクライアントについて、その将来について解説していきたいと思う。

3/3 次回もご期待ください

 INDEX

ブラウザを飛び越えて進化するリッチクライアント
  Page1<成熟期を迎えるリッチクライアント市場>
生産性重視のイントラネット・リッチクライアント/見栄え重視のインターネットのリッチクライアント
  Page2<ブラウザの外へと進化するリッチクライアント/ブラウザ型リッチクライアントの普及を分析する>
Page3<スタンドアロン型のリッチクライアントとは?/激化するシェア争いから今後を占う>


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