特集 Windows Server 2003完全ガイド
より実用的なサーバ・コンピューティングに向けて強化されたターミナル・サービス(前編)―― リモート管理機能の強化によりTCO削減を促進 ―― 1.ターミナルサービスとは一色 政彦2003/09/18 |
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1995年末にWindows 95が発売されて以来、約8年が経過した。この間、Windows 98、2000、XPなどさまざまなOSが登場し、さらにハードウェアの性能が飛躍的に伸びたことで、古いPCと新しいPCではそのスペックにかなり大きな差が生じた。
企業の導入スタイルにもよるが、全社のクライアントPCを一斉に変更するというのはむしろ稀だ。通常は、予算などの理由により、段階的にPCの導入やリプレースを実施することが多い。このとき、特に理由がなければ、導入時に提供されている最新バージョンのWindowsを選択することになるだろう。Windowsのサポート期間は発売開始から一定期間までに制限されているため、新しいものほど長期間のサポートを受けられるからだ。
しかし、このように段階的にPCを導入すると組織内に複数のバージョンのWindows OSが混在することになる。環境の統一やトラブル時のユーザー・サポートなど、複数バージョンのWindows OSが存在するとクライアント管理が複雑化し、結果としてTCOが増大する可能性が高い。
このような多様なクライアント環境下で、クライアントを効率的に管理する1つの方法として、すべてのコンピューティング・リソースをサーバに集中させるというソリューションがある。サーバにリソースを集中させれば、個別のPCのスペックやOSへの依存度を低下させ、その違いによる影響を低減させることができる。Windows Server 2003のターミナル・サービスは、そのようなソリューションを提供する機能の1つである。
ターミナル・サービスとは
ターミナル・サービスは、サーバ(ターミナル・サーバ)上に仮想的に構成されたWindowsデスクトップを、クライアントPCから利用して、サーバ上のアプリケーションや管理ツールなどを実行するための機能だ。利用するWindowsデスクトップは、あたかもクライアントPC上で動いているかのように表示され、クライアントPC上のWindowsデスクトップを操作するような感覚で、サーバ上のアプリケーションを操作できる。
このクライアントPC上からWindowsデスクトップを操作する機能は、「リモート・デスクトップ接続(RDC:Remote Desktop Connection)」と呼ばれている(Windows 2000 Server以前は「ターミナル・サービス・クライアント(TSC:Terminal Services Client)」と呼んでいた)。一方、ターミナル・サービスを提供するサーバは「ターミナル・サーバ」と呼ばれる。
この場合、アプリケーションはサーバ側でのみ実行されるので、重い処理でも負荷がかかるのはサーバ側であり、クライアント側は低スペックのマシンでもその影響は受けない。また、複数のクライアントから1つのターミナル・サーバに同時に接続して、アプリケーションを実行することもできる。その場合も、ユーザーごとにセッションが分けられ、別々のWindowsデスクトップになる。
管理者にとって便利なのは、サーバが遠くにある場合でも(サーバ・ルームなど)、それがあたかも手元にあるようにして管理できることだ。リモート・デスクトップを使えば、リモートからサーバに接続し、各種のGUI管理ツールを利用できる。
またエンド・ユーザー向けのクライアントPCで利用すれば、前述したような複数バージョンからなるクライアントPCのアプリケーション環境を共通化できる。クライアント管理が困難なのは、各クライアントへのアプリケーションの配布とそのバージョン管理が必要なためだが、リモート・デスクトップを使えばサーバ側で管理されたアプリケーションを複数のクライアントPCで共通して利用できるようになる。アプリケーションはサーバ側に1回だけインストールすればよいし、バージョンアップする場合でもサーバ側でのみ変更すればよい。利用可能なクライアントPCのOSとしては、Windows 98/Me/2000/XP/Server 2003のほか、Windows CEやMac OS Xなど、さまざまなプラットフォームに対応している。
ターミナル・サービスの仕組み
ターミナル・サービスを提供するサーバは、クライアント側にWindowsデスクトップの画面情報のみを渡して、マウスやキーボードなどの入力データのみを受け取る。これにより、クライアント上でWindowsデスクトップ画面の表示や操作が可能になり、しかもアプリケーションはサーバ上で実行されることになる。
ターミナル・サービスの仕組み | ||||||
サーバ・クライアント間の通信では、RDPというターミナル・サービス独自のプロトコルを使用している。 | ||||||
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このようにサーバ・クライアント間の通信では、RDP(Remote Desktop Protocol)というターミナル・サービス独自のプロトコルを使用している。RDPはTCP/IPベースのプロトコルで、クライアントPCのマウスやキーボードのユーザー入力情報をサーバ側に伝送したり、サーバ側の画面情報をクライアント側に伝送したりする。伝送されるデータは暗号化および圧縮が行われる。Windows Server 2003では、最新のMicrosoft RDP 5.2が使われている。これに対しWindows XPのリモート・デスクトップではRDP 5.1が使われている。
ターミナル・サービスは、当初、Windows NT Server 4.0をベースにターミナル・サービスの機能を追加した「Windows NT Server 4.0, Terminal Server Edition(TSE)」という単体製品として登場し、その後のWindows 2000 Serverでサービスの1つとして標準装備されるようになった。Windows Server 2003では、ターミナル・サービスがさらに機能拡張されている。以下本稿では、Windows 2000 ServerからWindows Server 2003へのバージョンアップでどのような点が機能拡張されたのかについて解説しよう。
INDEX | ||
[特集]Windows Server 2003完全ガイド | ||
より実用的なサーバ・コンピューティングに向けて強化されたターミナル・サービス | ||
1.ターミナルサービスとは | ||
2.クライアント側の強化ポイント | ||
3.サーバ側の強化ポイント―動作モードとユーザー管理 | ||
4.サーバ側の強化ポイント―MMCスナップインとコンソール・セッション | ||
5.負荷分散クラスタ環境での強化ポイント | ||
Windows Server 2003完全ガイド |
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