Insider's Eye

Longhorn Serverへの最新OS戦略(前編)

―― 次期Windows Serverのロードマップを検証 ――

2004/06/30
Copyright (C) 2004, Redmond Communications Inc. and Mediaselect Inc.


本記事は、(株)メディアセレクトが発行する月刊誌『Directions on Microsoft日本語版』 2004年7月15日号 p.11の「Longhorn Serverへの最新OS戦略」を、許可を得て転載したものです。同誌に関する詳しい情報は、本記事の最後に掲載しています。

 リモート・アクセス機能の改善と、既存機能のインストールを容易にすることは、開発コード名「R2」と呼ばれる次期Windows Server 2003リリースの目標だ。2005年にリリースが予定されるR2には、エクストラネットのホスティングや企業間Webサービスに対応する重要な新機能が搭載されるほか、ポータルとチームWebサイトのホスティング、文書セキュリティなど、各種作業にも対応する。しかし、Longhorn Serverのリリースは、Longhornクライアントに左右されるうえ、そのリリース予定は、現在MicrosoftがWindows XP Service Pack(SP)2に注力していることもあり、2006年にずれ込んでいる。また、同社はWindows XPのメインストリーム・サポートの期限を2006年末から2008年末以降へと少なくとも2年間延長、さらにWindows 2000の延長サポート・フェイズを3年間延長した。こうした動きは、Windows NT 4.0やWindows 2000を運用している企業にとって重要な意味を持ちそうだ。

 Windows Serverの現行バージョンに対するアップデートは、2005年後半に予定されている。このアップデートでは、一部の新機能が追加されるとともに、Windows Serverに各種の機能を追加する数多くの機能パック(Feature Pack)も一部投入される。R2の後に続くのは、サーバOSのメジャー・リリースであり、WindowsのLonghornクライアントをサポートするとともに、Windowsクライアントとサーバのコード・ベースを一本化する製品となる。

2005年へのWindows Serverアップデート計画

 今後投入される最も重要なWindows Serverバージョンは、いまのところ以下のようになっている。

■Windows Server 2003 Service Pack(SP)1でのバグ修正
 既知のセキュリティ脆弱性とバグに対応するため、徹底的にテストされた修正が加えられるほか、Windows XP SP2でも提供されるセキュリティ面の改善(より安全性の高いリモート・プロシージャ・コール・サービスなど)やロールベースのセキュリティ・ロックダウン・ウィザードなどが盛り込まれる。Windows Server 2003 SP1は、チャネルに対して出荷される新たなベースラインOSとなるはずだ。リリース時期は、2004年後半の見通し。

■Windows Server 2003 「R2」の新機能
 R2というコード名の付いたこのリリースは、Service Pack 1があらかじめインストールされたWindows Server 2003となり、(SP1のすぐ後を追う形で)新機能を提供するアップデート・ディスクも用意される。これらの新機能は、Windows Server上で稼働するアプリケーションへのリモート・アクセスを容易にし、リモート・ユーザーと企業間アプリケーションの統合をサポートできるように設計されている。またこのリリースには、セントラル・サイトから支社のオフィスを管理するための新機能も搭載される。R2に搭載される新機能には、以下のものが含まれている。

  • 統合身元確認(ID)コンポーネント:2002年に発表されたTrustBridgeというコード名のコンポーネントで、ローカル・セキュリティ・アカウントを持たないが、組織が信頼を寄せるパートナーや顧客の1つから認証されている外部ユーザーに対し選択的にアクセス権を付与できるようにする。

  • 新しいリモート・アクセス・サービス:現在Exchange Server 2003のRPCがHTTPシステム上で外部アクセスをサポートしているのと同様の方法で、組織内にあるアプリケーションがHTTPプロトコルを介して認証された拡張アプリケーションにデータを公開できるようにする。

  • ファイル複製サービスの新バージョン:より効率的なファイル・レプリケーション・プロトコルを搭載し、多くの組織がセントラル・サイトでファイルを維持し、支社オフィスでそれらのファイルを複製するという手法の実用性を高める。

 R2は、新機能に加え、ポータルとチームWebサイトのホスティング、文書セキュリティ、UNIXエミュレーションと移行、ID管理などのタスクに対応する各種Windows Server Feature Packを網羅した単一のパッケージを提供する(コラム「Windows Server Feature Packの特徴」を参照)。Microsoftは、これらのFeature PackをR2に搭載することで、顧客がこれらの機能にアクセスしやすくなり、比較できるような機能を搭載していない市販のLinuxディストリビューションをはじめとする競合製品から、Windows Serverを差別化するのに役立つと期待している。

 またR2アップデートは、Webプログラミング・フレームワークASP.NET 2.0を含むMicrosoftのランタイム・システムの将来バージョンである.NET Framework 2.0も搭載する。メジャー・アップグレードとなるASP.NET 2.0は、Webサイトの管理製品に対応する将来のMicrosoft製品にとって必要不可欠の要素となるはずだ。

 Microsoftによると、ソフトウェア・アシュアランスによるWindows Serverのアップグレード権を持つ顧客は、無料でR2にアップグレードできるが、それ以外のユーザーはR2のライセンスを購入する必要があるという。また同社は、R2に対するサポートをWindows Server 2003と同時に終了させる方針だ。リリース時期は、2005年後半の見通しである。

Longhorn Serverへの革新時期は?

 このメジャー・サーバ・リリースは、メッセージング・サービスの「Indigo(インディゴ)」やファイル・システムの「WinFS」などLonghornクライアントから新たに導入される機能の一部をサポートする予定だ。しかし、Microsoftは、どのような形でサポートするのかまだ決定していない。例えば、Longhorn Serverは、クライアントに搭載されるグラフィックス・サブシステム「Avalon(アバロン)」をサポートしない可能性がある。また、WinFSファイル・システムは、サーバ上でローカルに稼働しているアプリケーションにのみアクセスでき、ネットワーク・ファイル共有プロトコルを使っているリモート・クライアントにはアクセスできないことも考えられる。しかし、Longhorn Serverは、ダイナミック・システム構想(DSI:Dynamic Systems Initiative)の下で開発中の新しいシステム管理インフラストラクチャをサポートする可能性もあり、これによって、ソフトウェアの中に組み込まれた「システム定義モデル」を使い、サーバ上にあるソフトウェアを自動的に監視したり、構成したりできるようになるかもしれない。

 また、MicrosoftはLonghorn Serverを投入する時点で、クライアントとサーバのWindowsコード・ベースが統合されるとの見通しも示している。コード・ベースが一本化されれば、Microsoftと顧客の両方にとって、メンテナンスが容易になる。例えば、クライアントとサーバの両方に適用可能なService Packの出荷なども可能になる。このようなことは、現在のWindows XPとWindows Server 2003では不可能だ。リリース時期は、Longhornクライアントのリリース後6〜12カ月(2006年末から2007年の予定)になる見通しだ。

 既存のWindows Serverバージョンと同様、Windows NT 4.0も、サポートの終了期日が近づきつつあり、Windows 2000 Serverに対するメインストリーム・サポートは、2005年に終了する(コラム「Windows OSのサポート状況」を参照)。

 さらにMicrosoftは、Windows Server Web Edition(Webサーバに対応)やWindows Storage Serverプラットフォーム(ファイル・サーバとネットワーク接続ストレージ・デバイスに対応)と同様、個々のサーバ機能に対応する専用のWindows Serverエディションをこれからもリリースし続ける予定だ。コア・サーバOSに関しては、およそ2年おきに新機能を開発し、アップデート(R2など)とフル・プラットフォーム・リリースを交互に投入したいと考えている。同社は、個別の機能に対応するFeature Packのリリースを減らし、アップデートとフル・リリースに各種の新機能を盛り込むことに注力する計画だ。これにより同社は、アプリケーション機能に影響を与えず、OSカーネルの変更も必要ないバグ修正、セキュリティ機能、および小幅な機能の改善のみにService Packを限定したいと考えている。

 この方針が追求された場合、安定性とセキュリティは求められるが、導入前のテストはさほど必要としないService Packと、新機能を実現するため、より精密な検査を必要とするリリースが分けられ、ユーザーの負担が軽減されるかもしれない。しかし、MicrosoftはかつてService Packに各種の機能を搭載しないと言明していたにもかかわらず、その後立場を変えたことがあった。

 

 INDEX
  Insider's Eye
Longhorn Serverへの最新OS戦略(前編)
    コラム Windows Server Feature Packの特徴
    コラム Windows OSのサポート状況
  Longhorn Serverへの最新OS戦略(後編)
    コラム 新しい製品サポート・ライクサイクル・フェーズ
    コラム Windowsロードマップの概要
 
 「Insider's Eye」


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