運用Service Pack導入のためのバックアップ/リストア・ガイド― 障害発生時の影響を最小化してSPを適用するノウハウ ― 1.Service Packの導入とシステムのバックアップ デジタルアドバンテージ 打越 浩幸 |
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Service Pack(以下SP)は、過去に公開されたセキュリティ修正やバグ・フィックス、一部の新機能などをパッケージ化したものだ。Windowsアプリケーションや、デバイス・ドライバ、セキュリティ修正、バグ・フィックスなどのソフトウェアは、SPの適用レベルを動作条件として限定するものも多いので(Windows XP SP2でのみ利用可能、など)、SPの適用レベルはOSのバージョンに準じる扱いになっている。
基本的には、新しいSPが登場したら検証を実施して、重大な不具合が発生しないことを確認してから実環境のコンピュータにインストールする。中でも特にサーバに対するSPインストールでは十分な検証が必要である。サーバ・システムに対するSPインストールで何らかのトラブルが生じると、その影響は深刻だからだ。だが(テスト環境で)いくら検証を重ねても、実際のサーバに適用した途端に致命的な障害が発生するかもしれない。いざというときに備えて、SP適用前にシステムをバックアップしておき、障害発生時には速やかに復旧させる手段を考えておきたい。
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Windows Server 2003 SP1を導入する
Windows Server 2003向けのService Pack 1(以下SP1)は2005年4月に正式リリースされ、すでに導入したり、本格的な社内での展開に向けて検証を行ったりしているユーザーも多いだろう。サーバ・システム向けのService Packは、クライアント向けと違い、もし導入に当たってトラブルが生じると、最悪の場合にはサーバ・システムやネットワーク・サービスがダウンしてしまうという危険性がある。クライアントPCがダウンしても、その影響範囲は少ないが、サーバだとネットワーク全体がダウンする可能性があり、その導入にはいやでも慎重にならざるを得ない。
このような事情のため、SP1は安易に導入するべきものではないが、だからといっていつまでも導入せずにほうっておくわけにもいかないだろう。さまざまなセキュリティ上のリスクを回避するためにも、SP1で導入されたファイアウォールなどのセキュリティ機能は、いずれは検証して導入すべきものだからだ。また新機能だけでなく、今後提供されるパッチは、SP1を前提にして提供される(SP1をインストールしていなければ導入できない)場合もある。
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現時点では、管理者が明示的にダウンロードしてインストールするまでSP1はインストールされないが、Windows Update(Microsoft Update)による自動的なSP1の配布開始も間近に迫っており(米国時間の2005年7月26日から自動的な配布の開始予定)、サーバの設定によっては自動的にダウンロード、適用してしまうかもしれない。参考記事のWindows TIPSによる設定を行えば、自動的な配布をブロックすることも可能であるが、それでも2006年3月30日になれば、それ以上延期させることはできない。
本稿では、OSに対するSPインストール時のデータ・バックアップ術についてまとめる。具体的な例としては、Windows Server 2003 SP1のインストールを例にとる。ただし、デスクトップ向けのOS(Windows XPなど)にせよ、将来のSP(Windows Server 2003 SP2など)にせよ、以下で述べることは基本的に応用できるはずだ。以下では、Service Pack一般を表すときには“SP”と表記し、Windows Server 2003 SP1にだけ当てはまる場合には“Windows Server 2003 SP1”と略記せずに表記する。
SPの導入手順
SPを検証・展開する方法としては、いろいろな方法が考えられるが、一般的には次のようになるだろう。
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前提条件の確認――SP導入のための前提条件を確認する。インストールされている(市販の)アプリケーションがSP未対応となっているなら、SPの導入を見合わせる。特に、ベンダ自身からSPでの動作が不可能と発表されているものに関しては、ベンダからの発表があるまでSP導入を控えるべきである。
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実験環境での検証――SPインストール対象と同じOSをインストールした実験用サーバ・システム環境を用意し、その上で現在使用中の(自作の)アプリケーションなどが正しく動作するかどうかを検証する。
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SPの導入――検証の結果、正しく動作しているようであれば、実際のサーバ(群)に対してSPを適用する。
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トラブル時の復旧――もしサーバでトラブルが発生した場合は、SP導入以前の状態に戻し、対策を検討する。
検証の結果、Windows Server 2003 SP1の自動更新でのインストールを先送りにしたければ、前掲のTIPSなどを参考にして、SPが自動的に導入されないように設定しておけばよいだろう。そして自動更新の延長期限が切れるまでに、対策を立てたり、代替案を計画して実施したりすればよいだろう。
しかし、いざSPを本番のサーバ系に導入したものの、そこでトラブルが発生した場合は少々やっかいである。アプリケーションが動作しなくなったり、ネットワークが通信できなくなったといったトラブルならば、追加したSPで新たに導入されたり、変更された機能(ファイアウォールやセキュリティ強化など)の影響が考えられるので、設定を確認し、必要ならば通信に必要なポートを開けたり、ファイアウォールそのものを無効にするなどの対策を施す。
だがどうしてもSPでアプリケーションが稼働しなかったり、安定的に利用できない場合は、SPの導入をキャンセルし、SP導入前の状態に戻す必要がある。またSPを導入したものの、システムが起動しなくなったり、ブルー・スクリーン(カーネル内部で致命的なエラーが発生した場合に表示される通知画面)が出て停止してしまったようなケースでは、元に戻さざるを得ない。
SP導入前の状態に戻す
1度導入したSPをキャンセルし、Service Packがインストールされていない元の状態に戻すためにはいくつかの方法がある(OSやアプリケーションを、再インストールするというのはここでは触れない。またWindows Server 2003には、Windows XPの持つ「システムの復元」機能もないので、これについても今回は触れない)。
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SPのアンインストール機能を利用する
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バックアップ・テープ(もしくはバックアップ・ファイル)からのリストアを行う(OSの標準機能を使用したバックアップとリストア)
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ディスクのバックアップ・イメージからのリストアを行う(市販のアプリケーションなどを使用したバックアップとリストア)
1のSPのアンインストールとは、「プログラムの追加と削除」を使う方法であり、事前の準備が不要な一番簡単な手段である。SPインストール後もシステムが正常に稼働しているならば、これを使うのが簡単でよいだろう。
2と3は、SPのインストール前にあらかじめシステムの状態をバックアップしておき、問題が生じた場合はリストアするという方法である。Windows標準のバックアップ/リストア機能を使う方法と、市販のディスク・バックアップ・ユーティリティを利用する方法がある。OS標準機能は追加コストなしで利用できるのが大きなメリットであるが、作業量や所要時間の少なさなどを考えると、市販のユーティリティ活用も検討の価値がある。特に基幹となるサーバでは、SPの適用といえども、ダウンタイムの最小化が何より求められる。素早いバックアップや、万一の事態が発生した場合の速やかな復旧作業が、コストよりも優先される場合も少なくない。
本稿では、以上の3つの方法について順次解説する。
[プログラムの追加と削除]によるSPの削除
SPのインストールによる不具合が見つかり、システムをSPインストール前の状態に戻したくなった場合、一番簡単な方法はSPをアンインストールすることである。
Windows Server 2003 SP1をデフォルト設定でインストールした場合、元のファイルを保存するフォルダが作成されているので、アンインストールすることが可能なはずである。[コントロール パネル]の[プログラムの追加と削除]には、「Windows Server 2003 Service Pack 1」という項目が表示されているはずなので、[削除]ボタンをクリックして、アンインストールすればよい。
Windows Server 2003 SP1のアンインストール | ||||||
Windows Server 2003 SP1をデフォルト設定のままインストールすると、以前の状態が保存されているので、簡単にアンインストールすることができる。バックアップ用フォルダを保存したくない場合は、SPのインストール時に「/n」オプションを付けて実行する。 | ||||||
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INDEX | ||
[運用]Service Pack導入のためのバックアップ/リストア・ガイド | ||
1.Service Packの導入とシステムのバックアップ | ||
2.ASRによるシステムのバックアップ | ||
3.ASRによるシステムのリストア | ||
4.専用ツールを使ったシステムのバックアップ | ||
運用 |
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