読者はすでに、Windows 2000 Service Pack2を適用しただろうか? それによって何か不都合が起きた人は? えっ、特に問題はない? それは何より。今回は、Service Pack2の適用で筆者が経験した、ほんの些細な不都合についてお話ししよう。 周知のとおり、Windows 2000のService Pack(以下SPと略)とは、Windows 2000のバグやセキュリティ・ホールを修正するためのパッチ・モジュールなどを集大成したものだ。これを適用すれば、そのSPが作成された時点までに明らかになったバグや、セキュリティ・ホールはすべて解消できることになっている(SP2の詳細は「Insider's Eye:速報:Windows 2000 Service Pack 2 日本語版」を参照)。 これはすばらしい。すぐにでも適用して、システムの健全性を維持しようではないか。私はさっそく、普段使っている作業用のWindows 2000 ProfessionalにService Pack 2(SP2)を適用してみた。インストール作業自体はいたって簡単。SP2を適用しても、目立って何かが変わるというわけではない。本当に適用されたことを実感するには、デスクトップにある[マイ コンピュータ]アイコンのプロパティを表示して、システムのバージョンを確かめる必要がある(SP2が正しく適用されていれば、OSバージョンのすぐ下に「Service Pack 2」と表示されるはずだ)。 SP2の適用後も、普段の作業は今までどおりに行えた。筆者の場合、作業マシンには特別なデバイスを組み込んだりしていないし、アプリケーション類もMicrosoft Officeなどの定番類がほとんどなので、問題など起こりようがないだろうと高をくくっていた。しかし、意外なところで事件は起こった。 書き換えられたパーティション・ヘッダ筆者は、Drive Image 4.0というディスク・イメージング・ツールを使って、ハードディスクのバックアップを行っている。これはハードディスクの物理的なイメージを、ファイルに書き出すというツールで、OS環境も含めて、ファイルにバックアップをとることができるようになる。開発元は米PowerQuest社で、国内ではネットジャパンが日本語版を販売している(PowerQuest社のホームページ、ネットジャパンのホームページ、ネットジャパンのDrive Image 4.0の製品情報ページ)。 SP2適用後のある日、バックアップをとろうと、Drive Imageを実行した。すると、「#1527 更新のシーケンス番号が無効です」というエラーが発生した。Drive Image付属のドキュメントによれば、エラー番号1527はNTFS診断エラーの1つで、NTFSボリュームが破損している場合に発生するものだという。解決するには「CHKDSK /f」を実行して、ファイル・システムの整合性を修復すべし、とのことだ。しかしCHKDSKを実行してもエラーは検出されないし、説明からしてかなり深刻なエラーのはずなのに、Windows 2000システム自体は何の問題もなく使えている。これはおかしい。 不思議に思ってインターネットを検索してみた。するとPowerQuestのサイトのサポート・ページに説明があった(PowerQuestの当該説明ページ[英文])。製品付属のヘルプにあったとおり、このページでも、最初はファイル・システムの破損をCHKDSKで修復せよと説明している。しかしもう少し読み進むと、「Note」の部分に興味深い記述がある。これによれば、現行のDrive Image 4.0は、開発途中であるWindows XPには対応しておらず、XPをインストールしたシステムの任意のNTFSボリュームに対して実行すると、このエラー1527番を発生するというのだ。Windows XPのNTFSでは、パーティションのヘッダ情報が新しいものに更新されてしまい、Drive Image 4.0がこの新しいヘッダ情報に対応していないことから、エラーが起こるらしい(しかも困ったことに、Windows XPをインストールすると、コンピュータにあるすべてのNTFSボリュームのヘッダ情報が更新されてしまうとのことだ)。 ふむ。Windows XPはまだ開発途中なのだから、これくらいのことはあっても不思議はないだろう。XPユーザーには、Drive Image 4.0の利用はあきらめてもらおう。しかし最も大事なことは、その直後に書かれていた。同様のエラーは、Windows 2000 SP2の適用によっても発生するというのだ! はてさて、どうやら、SP2の適用によって、筆者のシステムのNTFSボリュームは、「最新の」ボリューム・ヘッダ情報に更新されたようだ。PowerQuest社の説明によれば、まもなくこの問題を解決するためのパッチを公開するとしている。それが登場するまで、Drive Imageを使ったバックアップはお預けとなってしまった。 行くも地獄、行かぬも地獄たまたま筆者は、SP2が副作用を起こすソフトを使っていた不運なユーザーだったのだろうか? インターネット上にある掲示板などでは、SP2の適用によって不都合が起こったという書き込みを散見する。それらがすべて、SP2を原因とするものかどうか、真偽のほどは定かでない。しかし、ほかにも副作用が起こる可能性は否定できないだろう。 今回問題が起こったのは、個人的に使っている作業用クライアント・マシンであったし、Drive Imageによるバックアップを少しの間だけ辛抱すればよいだけのことだ。しかしこれがクライアントではなく、サーバだったらどうなるのか? 前述したとおり、SPはWindows 2000に潜む多数のセキュリティ・ホールを解決してくれる。セキュリティ・ホールが重大な影響を及ぼすのは、クライアントよりもサーバであることは説明するまでもない。重要なセキュリティ・ホールについては、すぐにでもこれを適用しないと、攻撃を受ける可能性がある。 しかしその一方では、SPの適用によって万一の副作用が起こったとき、その影響が大きいのもサーバなのだ。 セキュリティ・ホールの解消を急ぐために、最新のSPや公開されたパッチを素早く適用するか。それとも、それらによる副作用を心配して、慎重に適用するか。副作用を躊躇して、SPの適用を延ばし延ばしにしている間に、万一セキュリティ・ホールが攻撃されれば、管理者は怠慢だとののしられるだろう。他方、SPをいち早く適用したはよいが、副作用によって業務に支障が出れば、管理者として慎重さに欠けると責められることになる。行くも地獄、行かぬも地獄である。 残念ながら、ここで明解な指針を示すことはできない。しかしサーバにSPやセキュリティ・パッチなどを適用するときには、万一の副作用を想定して、バックアップをきちんととっておくこと、できれば別のクライアント・マシンなどで重大な問題が起こらないか試してみること、掲示板などに注意し、先人が遭遇した不都合などについて、アンテナを張ることなどが肝要だろう。 今に始まったことではないが、つくづく、システム管理者は損な役回りである。 小川 誉久(おがわ よしひさ)
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