特集 インターネット「常時」接続計画

第3回 IPアドレスとドメインの取得

1.IPアドレスの取得

デジタルアドバンテージ
2002/02/01


 前回は、インターネットに向けてサービスをするための(外向きの)DNSサービスの概要について解説した。Microsoft Small Business Server 2000(SBS 2000)をインストールするには、その途中でドメイン名を入力する必要があるが、そのドメイン名がメール・アドレスになどに使われることを考えると、インストール前に正式なドメイン名を取得しておいた方がよいだろう、ということであった。そのために、まずはドメイン名を管理するために必要なDNSサービスの概要について解説した。今回と次回の2回で、実際に外向きのDNSサーバを用意して、その設定を行うことにする。今回は、IPアドレスやドメインの申請などについて取り上げる。

 自社で新たなドメインを取得、運用することに決まったら、具体的なドメインの申請作業や、インターネットとの接続に使う回線の準備などを行う。通常はすべてまとめてプロバイダに申し込めばよいだろう。ほとんどのプロバイダでは、Webページで会社名や住所、管理者、支払方法などの情報を入力すれば、簡単に申し込みができるようになっている。どのドメインを取得するかによって申請先やその方法がやや異なるが、入力する事項にそう大きな違いはない。

 ドメインを管理する団体は各国やドメインごとに存在しており、例えば「.JP」ドメインならば「社団法人 日本ネットワークインフォメーションセンター(JPNIC)」(汎用JPドメインは株式会社日本レジストリサービス)が管理を行っている。しかし実際にはユーザーが直接これらの団体へ申請するわけではなく、「レジストラ」と呼ばれる指定事業者(たいていはISPが指定業者となっている)に対して申請作業を行う。

IPアドレスの取得

 ドメインを取得、運用するならば、通常は固定的なグローバルIPアドレスを取得して、そのうえでDNSサーバを運用しなければならない。

 といっても(ドメイン取得やインターネットへの接続サービスを申し込まずに)IPアドレスだけをわざわざ申請することはない。現在ではIPアドレスは必ずプロバイダ経由で割り当ててもらうことになっているからだ。ISP単位でルーティングが行えるように、ISPごとに利用可能なIPアドレスが決まっているからである(こうすることにより、ルーティング情報をISPごとにまとめて、ルータの負担を抑えることができる)。逆にいえば、自前のIPアドレスをプロバイダに持ち込むことはできないと考えておいた方がよいだろう(10年ほど前までは、各組織ごとにあらかじめ固定的なIPアドレスを割り当てていたのだが、現在では行われない)。IPアドレスを取得するには、ISPのサービス・メニューで、接続回線の種類(専用線かxDSLか光ファイバか無線か、など)を選ぶとともに、「固定のグローバルIPアドレスを複数個割り当ててもらえるサービス」を契約すればよい。

■ISPの変更とIPアドレス
 
ISPごとに割り当てられるIPアドレスは決まっていると書いたが、これは逆にいうと、ISPを変更するとIPアドレスが変わってしまうということでもある。IPアドレスを変更すると、ドメインのネーム・サーバ情報も変更しなければならなくなり、やや面倒な移行作業が発生する。場合によっては、何日かネーム・サーバ情報が外部から利用できなくなり、ドメインが見えなくなる(ドメイン名からIPアドレスへの名前解決ができなくなる)という事態が発生する。するとWebやメールが外部から利用できなくなってしまう。そのためプロバイダを選ぶときは、単に価格だけではなく、将来的にも継続して安心して利用できるかどうかなども十分考慮してから選びたいところだ。最近は高速なブロードバンド・アクセス技術が次々と登場しているので、すぐにでも乗り換えたくなるかもしれないが、個人的な用途ならともかく、会社の基幹回線として導入するのならば、信頼性や安定性、サポート技術力などにも注意を払うべきだろう。

 筆者が所属するデジタルアドバンテージでは、とある米国のプロバイダと契約してドメインのホスティングを委託していたのだが、ネットバブル崩壊の影響を受けてか、このプロバイダが経営危機に見舞われ、経営主体の変更などが何度も行われた。そのたびに、メールやWebサーバ、DNSサーバなどが不安定になるという事態が発生している。メールなどのネットワーク・サービスが業務の一端を担うようになった現在、こうした事態は業務遂行に多大な影響を及ぼす。1ユーザーが、プロバイダの経営状態をどこまで見通せるかという問題はあるが、少なくとも企業で利用するプロバイダ選びは慎重に行う必要がある。


 なお同様のケースとして、会社が引っ越すとか、統廃合などで所在地などが代わる場合がある。もし転居先でも同じISPのサービスを継続的に受けられるのならば、DNSサービスなどのダウンは最小限ですむだろうが、転居先で使用できないとなると、新たなISPで契約を行い、ドメインの移転手続き作業などを行う必要がある。特定の地域しかサービスされていないようなISPや、特定のエリアでしか利用できないようなサービスも注意した方がよいかもしれない。

 ただし、外部に対してメールやWebサービスを提供しないような場合には(インターネットはWebアクセスやVPNで他の支社などに接続するためだけにしか使わないというような場合には)、この限りではないので、もっと自由にサービスを選んでもよい。

 割り当てられるIPアドレスは、一般的には8個ないし16個である。ただしISPにもよるが、16個のIPアドレスを使うためには若干の余分な審査が必要になる(コストも高くなる)。これはISPの制約というよりも、実はJPNICの審査などによるところが大きい。現在ではIPアドレス(特にIPv4のIPアドレス)は限りある貴重な資源であり、使う予定もないのに、むやみやたらと余分なIPアドレスを割り当ててもらうことはできない。本連載が対象とするSBS 2000システムを使ってインターネットへの接続環境を用意しようとしているSOHOや小規模な会社ならば、通常は8個のIPアドレスでも十分であろう。実験的なサービスも含めて、何台かのサーバを公開するというような用途では、将来的には16個のIPアドレスが必要になるかもしれない。

■IPアドレスの割り当てプラン
 最初に必要なIPアドレスがいくつか、将来的にさらにいくつ必要になるかは、具体的なサーバ構成などを考えて決める必要がある。例として、以下に8 IPアドレスのための割り当てプランを示しておこう。

IPアドレス
用途
解説
*.*.*.0
(使用不可)
ネットワーク・アドレスを表すため使用不可
*.*.*.1
ルータ
xDSLルータや専用線ルータなど、ISPとの接続用に使用
*.*.*.2
DNSサーバ
DNSサービスを提供するために使用
*.*.*.3
メール・サーバ
メールの送受信のためのサーバで使用
*.*.*.4
Webサーバ
WWWやFTPなどのサービスのためのサーバで使用
*.*.*.5
(予備)
VPNやその他の用途で使用
*.*.*.6
ファイアウォール
内部ネットワークからインターネットをアクセスするためのサーバで使用
*.*.*.7
(使用不可)
ブロードキャスト・アドレスを表すため使用不可
8 IPアドレスのための割り当てプラン
IPアドレスの割り当てプランの例。IPアドレスの上位29bitは任意であり、ここでは最下位の3bit(0〜7)のみを示している。1つのIPアドレスに1種類のサービスを割り当てるとすると、このように8つのIPアドレスではあっという間に使い切ってしまうだろう。将来(1年以内に)不足するようになると考えられるなら、必要に応じて1台のマシンでサービスを兼用するか、16 IPアドレス・プランの使用を(最初から)検討しておく。

 この表で分かるように、固定IPアドレスが8個というサービスでは、自由に利用できるホストの総数はそう多くない。一番下と一番上のIPアドレスは、それぞれネットワーク・アドレスとブロードキャスト・アドレスで使用されるので、ユーザーは利用できない。

 さらに通常は、ISPに接続するためのルータ自身(xDSLルータや専用線ルータなど)でも1つIPアドレスを消費する。

 この3つを除くと、ユーザーが利用できるIPアドレスは最大でも5つしかない。もしサービスごとにマシンを分けたりするのであれば、それぞれ異なるIPアドレスが必要になるので、最大でも5台分しか確保できないことになる。この連載記事では、(セキュリティ上の観点から)DNSサーバとSBS 2000サーバを別のマシンに分けてサービスを行うことを想定しているので、これだけでも最低2つはIPアドレスを消費することになる。

 そのほかのサービス、例えばWebサービスやメールなどは、たとえ同じマシン上でサービスするにしても、IPアドレスを分けておいた方が、後でマシンをそれぞれ分離したり、(SBSに含まれるISA Serverのファイアウォール機能などを使って)アクセス制限などを行う場合に便利である。よってここでは、それぞれ別々のIPアドレスを割り当てているが、これは各サイトのポリシーや管理のしやすさなどで選べばよいだろう。

 将来もっと多くのサービスを提供したり、実験用のサービスなどを提供したりする予定があるのなら、増加を見越してあらかじめ16個のIPアドレス・プランを立てておく。IPアドレスの申請時には、将来必要になるホストの数(6カ月後、12カ月後)を予測して記入しなけれならないが(これはJPNICの規定)、少なくとも6台以上のホスト(サーバや、外部VPN接続用のルータなどを含む)をインターネットに接続する可能性があるならば、16個のIPアドレスを申請しておくべきだろう。IPアドレスは申請順に各ISP内で順番に割り当てられるので、後で16個に増やしたくなっても、直後のIPアドレス空間がすでにほかのユーザーに割り当て済みであれば、増やすことができないからだ。

 特に、将来複数のドメインを取得してWebサーバなどを運用しようと考えている場合は、たとえ1台のマシン上で運用する場合でも、それぞれ異なるIPアドレスにすることが望ましいので(1つのIPアドレスでも実現は可能だが、いろいろと面倒である)、これらも勘案して必要なIPアドレスを見積もっておこう。

 また、実際にサーバ・マシンを恒常的に運用するだけでなく、実験的な用途や一時的に使用するようなマシンでも、インターネットに直接接続するならばグローバルIPアドレスを必要とするので、それらの分も含めてプランを立てておく必要がある。

■1 IPアドレスのサービスの場合
 最近では、固定的な1つのグローバルIPアドレスを取得できるというプロバイダのサービス・メニューが用意されていることがある。一番安価なサービスでは、DHCPで非固定のグローバルIPアドレスを割り当てるものがほとんどであるが、その1ランク上のサービスとして提供されていることが多い(価格的にもやや高くなる)。IPアドレスが1つながらも、固定的なグローバルIPアドレスが割り当てられるので、Webサーバを用意して、インターネットにサービスを公開したりできるというメリットがある。

 しかしこのようなサービスでは、一般的にはDNSは利用できず、ホスト名もあらかじめ決められたものしか使えないことが多い(一般的にはそのプロバイダのサブドメインになっている)。しかし後述するドメインの取得や登録を請け負うサービス会社を利用すると、このようなネットワーク形態でも自由にドメイン名を割り当てることができる(詳細については今後解説する)。ただしDNSの逆引きサービスはその仕組み上提供できないので、利用形態によっては、何らかの制約を受けることがある。

関連記事(Windows Insider内)
インターネット「常時」接続計画 第1回 接続計画とSBS 2000
インターネット「常時」接続計画 第2回 ドメイン構成のプランニング
 
関連リンク
社団法人 日本ネットワークインフォメーションセンター(JPNIC)のページ
株式会社日本レジストリサービスのページ
 
 

 INDEX
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  第3回 IPアドレスとドメインの取得
   1.IPアドレスの取得
     2.ドメイン名の取得
 
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