第3回 読者アンケート結果
〜XML-BtoBシステムの離陸に必要なものは?〜
小柴 豊
@ITマーケティングサービス
2001/6/1
SOAPなど関連規格の発表、フレームワーク標準化の進行、専用サーバ製品の発売など一連のニュースに接すると、XML-BtoBシステムが普及する日も近いような気になるが、果たして一線のエンジニアはどのように思っているのだろうか? 2001年2月〜3月に実施した「第3回 XML eXpert eXchange フォーラム読者アンケート」から、その現状と課題を見てみよう。
■夜明け前のBtoB :必要なのはエバンジェリスト?
そもそもXML-BtoBシステムの導入はどこまで進んでいるのだろうか? 読者勤務先での“XML-BtoBシステム導入状況”を聞いた結果、「現在すでに導入/稼動している」という回答は全体の3%に留まった(図1)。また今後の導入意向でも「2001年度中に導入予定がある/導入したい」(13%)を「導入したいが、2001年度中には難しい」(35%)が大きく上回っており、同システムの本格的な普及にはしばらく時間がかかる模様だ。
図1 XML-BtoBシステム導入予定 |
■BtoBを阻害するのは認知不足や理解不足
ではXML-BtoBシステム普及のための課題とは何だろうか。システム導入の阻害要因を聞いたところ、「業界内や取引先間でのXMLに関する認知/理解不足」を挙げる読者が約6割に達した(図2)。ツールの普及や規格標準化などの技術的な問題以前に、今はまだXMLやBtoBそのもののメリットや必然性を、ビジネスの場でプレゼンテーションすべき時期ということだろうか。
図2 XML-BtoBシステム導入の阻害要因(複数回答可) |
ここでXML-BtoBシステムについて、読者のコメントをいくつか紹介しよう。
- BtoBそのものについては、システム利用者が時代の流れに乗り遅れないように、といったユーザーサイドの思惑によって進んでいく気がするが、XMLはその必然性がシステムの開発者レベルのみのメリットに限られているのが現状。
- XML利用というより、BtoBシステム利用での利便さや、効率化などをもっと、宣伝すべきである。変に、XMLとBtoBが密接に関係していることの情報が多いため、XMLを知らないと、BtoBが構築できないという認識が高いように感じる。
- 標準化やツールの普及は今後進むと考えられるが、BtoBシステムの普及を広い業種に広めていく必要があると思う。
- 社内研修を行うなどしてで一人一人の意識的な改革が必要だと思う。
- 適用事例が増えてきているのでそれを効果的に用いて啓蒙活動をする。特に40〜50歳の人たちに向けて。
図2で示した「認知不足/理解不足」については、業界・取引先以前に、IT関連企業の社内においてすら充分でないことも多いようだ。こうした声にお応えすべく、当フォーラムではインフォテリア平野社長による連載コラム『BtoBの時代に備える』の掲載を開始した。BtoBの必要性を社内外で広めるのに苦労している方には、説得材料として活用頂ければ幸いである。
■BtoBサーバ/フレームワークへの認識は?
次に、XML-BtoBシステムを実際に構築する上で重要となる製品やフレームワークについて、読者の認識を確認してみたい。XML-BtoBシステムを(時期は問わず)導入したいと答えた 61人を対象に、国内で発売され始めたBtoBサーバ製品の認知/導入意向を尋ねたのが図3である。まず認知率(すでにご存じの製品)では、マイクロソフトの「BizTalk Server」が一歩リードしており、インフォテリアの「Asteria」、エクセロンの「eXcelon B2B Integration Server」がそれに続く結果となった。今後の導入意向では、認知率の高い3製品がほぼ同率で並んでいるものの、まだどの製品も大きなポイントを得られていない状況である。
図3 XML-BtoBサーバ製品認知率/導入希望率(複数回答可) |
■知名度ではBizTalkが1位に
続いて各種BtoBフレームワーク(企業間取り引きのガイドライン)の中で、今後市場をリードしていくと考えられるものをBtoBシステム導入意向者に聞いた結果が図4。ここでもトップはマイクロソフトの「BizTalk」が挙げられ、「RosettaNet(ロゼッタネット)」、OASISと国連の「ebXML」が続いている。
図4 今後BtoBフレームワークをリードすると思うもの(複数回答可) |
BtoBサーバやフレームワークについては、最近「ebXML、ついにSOAPを統合(@IT News 2/24)」「マイクロソフト、BizTalk ServerをRosettaNet対応に (@IT News 4/20)」などのニュースが相次いでいる。いずれ全てのシステムがシームレスに相互乗り入れ可能になり、どのサーバやフレームワークを導入しようがビジネス上影響なくなるのかもしれない。BtoBを単なるBuzzワードで終わらせないためにも、ベンダーや標準化団体間の地域紛争を超えた市場創出活動に期待したい。
調査概要 | |
調査方法
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XML eXpert eXchange サイトからリンクした Webアンケート |
調査期間
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2001年2月26日〜3月26日 |
有効回答数
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120件 |
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