2001年の展望(3):厳しい選択を迫られるハードウェアベンダー

2001/1/10
(12/20/00, 8:38 a.m. ET) By Mark Hachman, TechWeb News

 ハコにとどまらず、それ以上のことを考えることは、PCハードウェア業界をデス(death=死)スパイラルから救い出すのに役立つだろうか?

 “米国のPC市場は飽和状態に陥っている”とお偉方たちが口にする中、大手ベンダー各社はこの問題の解決策に期待を寄せている。GatewayやMicron Electronics、そしてDell Computerといった各PCベンダーは、ソフトウェアやオンラインオプションまでも販売することにより、主流であるマシン以外のビジネスチャンスをうかがっている。

2000年秋から顕著になった需要の冷え込み

 Gatewayの社長兼CEO、Jeff Weitzen氏は2000年10月に、「われわれは、純粋なハードウェアプロバイダーでいることをやめた。スピードや価格、ビットやバイトは関係ない」と語った。

 そうかもしれない。だが、この程度の考え方では不十分かもしれない。一般消費者は、現行のハードに充分満足している。強い経済という支えを失えば、彼らを相手にセールスをする上で難関が待ち受けている可能性は高い。

 IDCのアナリスト、Roger Kay氏は、「消費者と小規模企業の両方の状況がここ数週間で急速に悪化し始めた」と語っている。

 同調査会社では、まず米国の消費者、そしてそのほかの国々におけるPCの購入数が全体的に減少すると見ている。2000年第4四半期では米国における販売台数が昨年比で17.4%増加する見込みだが、2001年の第1四半期にはこれらの数字が約5%低下して1380万台になる、と予想している。世界的に見ると低下率は少なくとも10%となり、販売台数は3630万台へと減少する。

 しかも、この数字すらクリアできない可能性もある。「おそらくこれを下方修正しなければならないだろう」とKay氏は見ている。

 同様のことはすでに各メディアで報じられている。2000年11月末の感謝祭期間におけるPCに対する需要は急激に低下した。従来であれば、最も活発であるはずのこの時期を台無しにしてしまったわけだ。理由は経済の冷え込み、もしくはこれにあいまったものと見られている。チップとPCの両方の在庫は、1〜2週間分から5週間分以上へと膨らんでしまった。ARSのアナリスト、Matt Sargent氏は感謝祭について、「この期間の販売に向けてこれまで蓄えてきた知識はすべて忘れる必要がある。売れるか売れないかのいずれかなのだ」と語った。そして2000年は売れなかった。

 Robertson Stephensのアナリスト、Eric Rothdeutsch氏は以下のように述べる。「PC市場が崩壊してしまった?――もちろんだ。世界経済が落ち込んでいる?――当然だ。米国では在庫調整があった。問題は、この在庫調整が全体の需要低下とどれほど結びついているかだ」と語った。

 スタンフォード大学経済学部のRomain Wacziarg助教授によると、ヨーロッパの各経済圏や、ドイツやフランスなどの主導的国家は、GDPの成長率も約3%と比較的健全だという。

 しかし、Wacziarg助教授の考えによると、米国経済は2000年第4四半期になって低下し、GDPの成長率は約2.5%になるという。また、The Economistの実施した世論調査では、米国経済は2000年が5.3%成長だったのに対し、2001年には3%の成長率にとどまるという。Rothdeutsch氏にとって、この数字は非常に重要だ。消費者のPCへの需要を左右するのはキャッシュバックや価格設定だが、大手を中心とした企業では経済の動向に従って購入判断を下す傾向があるからだ。

複雑になる製造形態とサプライチェーン管理、OEM、CEMとSCM…

 これまでの7四半期、チップ市場が爆発的に成長したことなどもあり、急激な低下は輪をかけて悲惨なものだった。1998年の第4四半期以来、四半期毎の売上高成長率の前年比は着実に加速していた。

 Morgan Stanley Dean Witterによると、2000年の第2四半期には、チップの総売上高が1999年の同期比で48.8%増加して435億ドルに達したという。これは少なくとも最近の5年間で最大の成長率でもあった。その一方で、生産力の拡大と縮小が景気の動向に合わせて行われるなど、半導体業界は景気の循環と関連が深かった。企業各社が、チップやレジスタなどの各種部品の在庫を縮小することで着実な成長を追求する中、“サプライチェーン管理”は合言葉となった。

 しかし、2000年に予期せぬ問題が起こった。契約製造メーカー各社の登場だ。CEMと呼ばれるこれらのメーカーは、実際にPCやアドオンカード、そして周辺機器をIBMやMatroxなどのメーカー各社向けに製造し、最終段階でOEMのラベルを付ける。

 しかし、CEM各社も急激な在庫不足を回避すべく2000年初頭に積極的に在庫を確保した。これが下半期には多くの部品の在庫過剰につながり、アナリストはそれが2001年も続くのではないかとして懸念している。彼らは2001年第1四半期が過ぎれば在庫はなくなると推測するが、基盤にあるサプライチェーンの問題は解消されない。

 この問題は、CEOのRodney Smith氏が11月は売上げの「悲惨な月」だったとした、プログラマブルロジックベンダーであるAlteraの予告発表で浮き彫りになった。Smith氏はアナリストに対し、「下請メーカーは2000年の最初の3カ月で膨大な量の在庫を抱え、現在その在庫を減らしているところだ」と語った。

 Thomas Weisel Partnersのアナリスト、Jim Savage氏によると、CEM大手のSolectronなどは、1999年の11月の四半期から2000年8月の四半期の間に在庫が23億ドル増加したのを目の当たりにしているという。

 Needhamのアナリスト、Dan Scovel氏は、「Alteraの予告発表は非常に大きな教訓となった。彼らはディストリビューターの在庫のほかに、自社の在庫も厳密に監視している」と語る。同氏は、契約製造がバブルの発端だったと見ている。「ディストリビューターやメモリモジュールメーカーのいる在庫のサプライチェーンに今度はCEMが加わり、これらすべてにも在庫が集まってくる」(Scovel氏)

取り組みを模索するベンダー

 これらすべてを加味して、業界はその脱出口として非ハード戦略を検討するようになった。

 たとえばGatewayでは、Gateway Country店舗でトレーニングクラスや無料の1日導入セミナーを開催している。同社ではさらに、特定のアプリケーション向けに特定の構成でカスタマイズしたPCも販売する。たとえば、デジタルイメージング処理に関心を持つカスタマーには、Gatewayがデジタルカメラと関連ソフトウェアをバンドルする。

 一方のMicronとDellは、法人カスタマー獲得のためにどちらもWebホスティングに関心を寄せている。

 しかも、このような動きはPCメーカーだけではない。チップ業界でも、Intel Capital Unitのような企業では、(業績が良ければだが)他社の持株で帳尻を合わせることができるのだ。

 だが最終的な結果は2001年という年が明らかにしてくれることだろう。

[英文記事]
Outlook 2001: Hard Choices For Hardware Vendors In 2001

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