IPv6移行への大きな一歩、シスコがIOSのIPv6対応を発表

2001/4/13

 4月11日より4月13日までの3日間にわたり、幕張メッセと隣接するホテルを会場にCisco製品を中心としたネットワーク技術のカンファレンス「CiscoWave+NetWorkers 2001」(主催:日経BP社)が開催されている。

 今年で7回目となる本カンファレンス(開始当初は「Networkers」という名称)は、107の出展社に来場者目標が4万人と、去年品川で開催されたときに比べ、規模にして7倍にもなったという。インターネットとITの社会への浸透が進み、技術者のみならず経営者層など、ユーザーの裾野が広がるなか、どのような注目トピックがあるのかを紹介していこう。

■IPv6対応のIOSを発表

IOS搭載ルータのIPv6正式対応を発表する、シスコシステムズ コーポレートマーケティング本部長 前田信一氏

 本カンファレンスの開催にあたり、シスコシステムズは報道関係者向けに発表会を開催した。その中で、同社のルータやスイッチ製品に組み込まれているOS「IOS」のIPv6の正式対応版「IOS 12.2T」のリリース開始を発表した。

 IPv6は、現行のインターネット・プロトコルであるIPv4の次期バージョンにあたるもの。IPアドレスの枯渇が叫ばれるIPv4に対し、128bitsのアドレス空間をもつIPv6は(IPv4のIPアドレスは32bits)、事実上ネットワーク上に存在するすべてのデバイスに対してユニークなIPアドレスの割り当てが行える。また、データに優先順位をつけて帯域の保証をするQoSや、暗号化などの機能が標準で盛り込まれているため、IPアドレスの問題解決以外にもいろいろメリットがあるのが特徴だ。

 だがIPv6の問題として、移行の際のハードルが高い点がある。IPv4とはそもそもアドレス体系が異なるため専用のバックボーンが必要なこと、PCといった末端の機器も含めてIPv6対応のプロトコルスタックを用意することなど、これらの障壁を乗り越えても移行するメリットを見いだせる必要があった。

 今回、TCP/IPネットワーク(インターネット)の要であるルータの市場シェアの大部分を握る同社が、正式にIPv6対応の製品を発表したことで、IPv6移行に向けての新たなフェーズに入ったといえるだろう。同社では今回の発表をフェーズ1として、フェーズ2で本格導入に向けての機能追加、フェーズ3でルーティング/QoS/マルチキャスト機能の強化を、IOS対応のCisco 800〜7500までの全ルータ製品に対して段階的に行っていくとしている。また、ダイヤルアップ機器やADSL/ケーブル向けのブロードバンド装置、バックボーン向けルータCisco 12000シリーズに対しても、IPv6対応の機能拡張を行っていく。

■展示会場ではIPv6対応製品のデモ

 今回の発表を受ける形で、カンファレンスの展示会場でのシスコブースでは、IPv6に対応したIOS搭載ルータ製品の全ラインナップを並べ、デモストレーションを行っていた。デモストレーション用に特にアプリケーションを動かしているわけではなかったが、IOS搭載ルータ全製品が対応したことを表明するという意味ではインパクトがあった。

IOS搭載のルータ全ラインナップを並べ、IPv6対応をアピールするデモストレーション IPv6のアドレスでtracertコマンドをかけて、その反応を表示してみたところ

音声、データ、映像をIPベースのネットワークで統合するAVVID(Architecture for Voice, Video and Inregrated Data)アーキテクチャ対応製品の紹介。VoIP関連の展示は、これまでもさまざまな展示会で行われてきたが、ようやく実用段階に入った印象だ

 


 2000年末から2001年初頭にかけて、ISP各社よりIPv6の試験サービス開始が発表された。半年〜1年の試験期間を経て、2001年後半〜末をめどに商用サービスを開始するところも出てくるだろう。IPv6への移行は「サービス提供側の都合」と批判的な意見を聞くこともあるが、IPv4と同レベルの料金体系でより付加価値のあるサービスを提供できるようになれば、バックボーンの移行は意外とスムーズに進むものと思われる。

(編集局 鈴木淳也)

[関連リンク]
シスコシステムズ
CiscoWave+NetWorkers 2001

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