コンポーネントの再利用、実現間近か?(上)
〜一部試験運用に着手するシティグループ
2001/6/5
May 18, 2001 Internetweek By
JEFFREY SCHWARTZ
シティバンクを有する米シティグループは、システムやビジネスユニットをつなぐ方法としてJavaのコンポーネントの再利用が有効であることを実証しようとしている。整理統合の激しい金融サービス業界で実証されれば、関係者にとっては心強いニュースとなりそうだ。
CitiMortageのエンタープライズ・アーキテクチャと最新技術のディレクターを務めるScott Preble氏は、各種機能をつかさどるオブジェクトのリポジトリを組み合わせてアプリケーションを構築する日が実現すると予測している。それもスクラッチから書くより数分の1の費用と時間で。
これは企業買収活動の多いシティグループにとって重要なメリットとなる。もしこの1120億ドル規模の巨大企業シティグループ傘下のシティバンク、CitiMortage、ソロモン・スミス・バーニー、Travelers Insuranceなどの企業がJavaのコンポーネントを共有できれば、顧客にクロス・セル(同一の顧客に複数の商品を売ること)のプロモーションを行いやすくなるとPreble氏は見る。シティグループや企業統合を行っている他の金融各社は、クロス・セルの可能性に賭けているのだ。
シティグループでは現在、優良顧客を対象に統合した商品やサービスを提供しているが、「一般の顧客に提供する段階ではない」と金融サービスに特化したコンサルティング会社、TowerGroupのアナリストLarry Tabb氏はいう。技術が問題を解決する前に、文化的あるいは政治的障害の解決に取り組む必要があるというのがTabb氏の意見だ。
「デジタル部品の開発に着手する前に、どう顧客と接するのか、どうビジネスを統合するのかといった政治的な問題にどう対処するのかを定めなければならない。」(Tabb氏)
同社内に存在する隔たりは、巨大企業がコード共有するという課題がいかに複雑なものであるかを強調している。例えば、シティバンク・グローバル・インベストメント・バンクでは最近、Javaのコンポーネントで構築したアプリケーションを製品に組み込んだ。技術アーキテクト主任のDavid Rafalovsky氏は「(共有による)メリットは理解しているが、実行するには時期尚早だ」としている。
「コードを共有することは確かに理想的だ。だが、それが実現できるのかというと、まだだね」とRafalovsky氏。同氏は開発者がアクセスとコンポーネント、さらに情報をあまりにも多く持ちすぎていることを心配している。
Rafalovsky氏は、「シティグループは1つの国みたいなもの」という。「取り組みモデルとして複数の方法が出てきて切磋琢磨するのは良い面だが」
一方のPreble氏は意見を異にする。コンポーネント共有により、シティグループは買収企業の可能性を引き出せるというのだ。「コンポーネントだからインターフェイスの変更は容易だ。このことはクロス・セルや協調型の販売に有効だ」とPreble氏はいう。
例えば、Travelersのある開発者が、CitiMortageが開発したローンに関する登録のコンポーネントを利用すれば、住宅保険を購入した人に対し既存のソフトウェアでTrevelersの特別住宅ローン金利を提供できるようになる。
Preble氏は社内のユーザーグループ、Citigroup Websphere user group内部での再利用を率先している。このユーザーグループは、シティグループ内にIBMのWebアプリケーション・サーバの利用者が多かったことから2001年初めに結成された。
今後、グループ企業全体での再利用につながるのだろうか? 「再利用はScott(Preble)の達成目標だったんだ」と同ユーザーグループのディレクターRobert Kraemer氏。「達成するかどうかはこれからの取り組み次第。政治的な組織だからそう簡単にはいかないだろうけどね」
*この記事は一部編集しています。次回掲載予定は6月6日です。
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