[NetWorld+Interop 2001 Tokyo開催:会場レポート]
認知度アップのPKI、各社ひしめくアプライアンス製品

2001/6/7

 今回のN+Iで注目すべきテーマはセキュリティだろう。近年相次ぐWebページの不正改ざん事件のほか、2001年4月の電子署名法施行などの注目すべきトピックスもあってか、関連ブースは多くの来場者でにぎわっていた。

 特に、電子署名と暗号化によるセキュリティ・インフラを構築するPKIに関して見れば、RSAセキュリティ、エントラスト、ベリサイン、ボルチモアなど、主要PKIベンダーが一同に会し、PKIもいよいよ普及期に入ったと実感させるものがある。実際、日本ボルチモア・テクノロジーズのブースでは、「初日の午前中だけで、実際の案件にかかわる相談が3件ほどあった」と、予想以上の来場者の関心の高さに、関係者は驚きの声を上げる。

 「PKIとはなにか?」という段階から、「PKIをいかにシステムに組み込み、活用していくのか?」という次のステップに進みつつあるということは、展示内容にも表れている。同社のブースで行われていたジェットフォームの電子帳票システムのデモでは、政府機関への申請書類をPCの画面上に表示し、データを入力後に電子署名を施す例を紹介。

 この例がわかりやすいのは、実際にある紙の帳票をそのまま画面上に表示し、イメージどおりに各フィールドへの直接入力が可能な点だ(例えば、日付のフィールドには、日付以外の情報は入れられないようになっている)。さらに、電子署名を施す際は印鑑のイメージが画面上に表示されるなど、一般ユーザーにとっては特に「電子署名」という部分を意識せずにPKIによる安全なインフラが利用できる点もわかりやすい。ほかにも電子署名を組み込んだICカードベースの社員証など、今後、見た目にわかりやすいソリューションが登場することで、PKIの普及がより加速するものと思われる。

ノキアのファイアウォール・アプライアンス「IP」シリーズ。本製品の展示を行っていたアズジェントでは、昨年比で1.5倍以上の売れ行きを示しているという

 PKI以外のセキュリティ製品では、アプライアンス機器が注目だ。特に、ノキアのファイアウォール・アプライアンス製品「IP」シリーズは、ユーザーからの問い合わせや引き合いも多いという。アプライアンス製品の魅力は、1Uサイズのハードウェアに必要なソフトウェアがセットアップされており、あとは最低限の設定さえ行えば、すぐにでも利用できる手軽さにある。リリース当初はミッドレンジの製品ラインが中心だったが、最近になりハイエンドからSOHOレベルまでをカバーするラインナップがそろい、大規模システムへの導入のほか、常時接続環境の家庭内LANへも広がることになるだろう。

 ファイアウォール以外にも、SSLアクセラレータやロードバランサー機能を備えたアプライアンス機器も数多く出展されていた。代表的なところでは、ノーテルネットワークスが買収した旧アルテオン・ウェブ・システムズや、F5ネットワークス、ノキアなどが製品を出展しており、処理速度やコストパフォーマンスなど、自社製品のメリットをアピールしていた。ネットワーク・アプライアンスの分野は、圧倒的シェアを誇る強力なベンダーがまだ存在しないため、大企業からベンチャーまでが入り混じり、急速に発展を遂げている。ユーザーにとっては、良質な製品が安価に手に入るメリットがあるといえる。

■2、3年で現実となるホームネットワーク

 もう1つの注目が情報家電。いよいよ具体化してきた感がある。前回に引き続き、会場に敷設された先進ブロードバンドネットワーク「ShowNet」(これについては@IT広告企画「ShowNet、ShowNet+でブロードバンドを体験」参照)。とともに、「IPv6 ShowCase」も会場を別にして実施された。ここでは家電や車がインターネットに接続された世界を体感できる。

東芝の「ネット冷蔵庫」 タッチパネル方式で操作・管理できる 「ShowNet」に設置されたITS搭載車 車体後部に無線アンテナを持つ

 例えば情報家電では、東芝が「ネット冷蔵庫」を展示していた。冷蔵庫のドアのスクリーンにある操作ボタンにより、在庫管理や賞味期限管理、料理番組からレシピの取り込み、さらにはオート調理が行える。在庫管理とレシピ機能、オート調理機能を組み合わせれば、庫内の食材でどういった料理ができるのかを提案してくれるうえ、ネットワークに接続した電子レンジの設定を行ってくれるという。遠隔からの操作も可能。携帯電話で在庫をチェックすれば、無駄なく買い物ができそうだ。

 説明を行う東芝 家電機器社 DNA事業推進担当 主務の平原茂利夫氏によれば、将来的にはメンテナンスも大きく変わるという。ユーザーが故障を知らせなくても監視プログラムによりメーカーが管理すれば、故障が未然に防げたり、修理にかかる日数も短縮される。

 「こういった世界が実現するのは常時接続環境が整う2、3年後」と平原氏はいう。技術的にはほぼ実現可能となったいま、「ネットワークのことを知らないユーザーが使うことを考えると、課題はセキュリティの確保とユーザー・インターフェイス」とのことだ。

(編集局 鈴木淳也、末岡洋子)

[関連リンク]
NetWorld+Interop 2001 Tokyo

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