人材育成におけるeラーニングの光と影

2001/7/28

 オンライン学習のイベント、e−Learning WORLD 2001が7月26日〜28日まで、東京ビッグサイトで開催されると同時に、e−Learning Forum 2001 Summerも東京ファッションタウンで開催された。

 e−Learning WORLD 2001は、105社による展示をメインとしたイベント。e−Learning Forum 2001 Summerは、e−Learningへの政府の取り組み、企業や学校への導入事例、ビジネスモデル、それに開発テクニックなど約40のセミナーが中心。

 e−Learning Forum 2001 Summerの初日、企業へのeラーニング導入セミナーにおいて、日本IBM研修サービス e−ラーニング・サービスの人事・組織プロフェッショナル・スキル部長 長田泰久氏は、「プロフェッショナル制度とe−Learningの活用」をテーマに講演を行った。

 長田氏はまず、IBMのビジネスが1990年代にハードウェアからソフトウェアやサービスへ急激にシフトしたことを詳解した。そのシフトの結果、同社のビジネスのコアは、ソフトやサービスを提供する“人”となり、従業員個人のスキルが最も大切な資源になったという。そのため、従業員個人のスキルを高めるための研修は、企業にとっては必要な投資だと長田氏は強調する。そのため、費用対効果を考え、“やる気のある人”への投資(=研修)こそ重要で、「やる気のない人への投資は無駄」だと割り切ることが必要だという。

 そして同社の急激なビジネスのシフトに対応でき、費用を最小限にできる研修の形態が、eラーニングであったという。

 しかし、「eラーニングには良い光だけではなく、影の部分がある」と長田氏。eラーニングの光の部分(優れている点)は、コストが安く、場所や時間を選ばず柔軟に行える、そして講師の質に左右されないという点にあるという。逆に影の部分としては、コンテンツを含め、メインテナンスにかなりの労力が必要となる、同じコンテンツを利用するため、研修内容の差別化が難しい、内容の陳腐化が早い(これはeラーニング特有の問題ではないが)という点だと指摘した。

 また、eラーニングに向かない研修として、管理職やマーケティング部門などのディスカッション中心の研修を例として挙げた。これらの研修では、ディスカッションの過程が大切で、それらによって自己の意見形成などを行うため、eラーニングでそのすべてを代替することは難しいからだ。企業でeラーニングを導入する場合は、長田氏はこうした光と影を考慮して決定する必要があると語る。

 続けて同氏は、SEなどへのテクニカル教育にはeラーニングは効果的だと語る。その理由として、新たに社内でコンテンツを作成せずとも、さまざまなベンダがIT関連のコンテンツを提供しているので、それらを比較検討して導入するだけでも大きな効果が上げられるからだと述べた。

 なお、IBMが2000年に行った研修のうち、すでに43%はeラーニングによるものだという。従来の集合研修と比較すると、同社のコスト削減効果は、1年間に約15億円になると試算している。

 さらに長田氏がこれからの研修で重要になるのは、「メンタリング」(経験豊富な社員が、決められた後輩の社員を指導すること。コーチング)だという。従業員のコンピテンシーを見極め、どのように育てていくかが重要だと付け加えた。

[関連リンク]
e-Learning WORLD 2001
e-Learning Forum 2001 SUMMER

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