[Interview]
DB、Appサーバ、開発ツールの3点を強みとするオラクル

2001/9/11

 日本オラクルは、主力製品「Oracle9i Database」(以下9iDB)の発売を間近に控え、助走体制に入っている。これまでとの大きな違いは、これら新製品が単なるデータベースやアプリケーション・サーバではないということ。eビジネス技術として注目を集めている“Webサービス”の時代が到来した時、これらの製品はその土台として大切な役割を果たすことになるからだ。

 同社は先週、開発者向けカンファレンス「iDevelop 2001」を開催。1168名の開発者を対象に、9iに関連した35の技術セミナーを設けた。同カンファレンスで基調講演を行った、米オラクル 9iプラットフォーム バイスプレジデント レネ・ボンバーニ(Rene Bonvanie)氏に、新製品の位置付けやオラクルのWebサービス展開について話を聞いた。


iDevelopでは、昨年に引き続き基調講演を行ったレネ・ボンバーニ氏、「アプリケーションはもう作った。われわれが次に目指すのはWebサービスだ」と開発者に訴えた

――これまで“8i”といえばデータベースを意味していた。今回、“9i”には、データベースだけでなくアプリケーション・サーバや開発ツールもある。オラクルはアプリケーション・サーバ・ベンダを目指すのか?

ボンバーニ氏 確かに8iとデータベースは同義語だったが、9iでは9iDBのほかに、アプリケーション・サーバである9iAS、開発ツール「Developer Suite」の3つのコンポーネントを含む。当初はユーザーの混乱を招くかもしれないが、長期的にはさほど問題ではないだろう。

 だからといって、われわれがアプリケーション・サーバベンダを目指して戦略を転換したわけではない。オラクルの主軸はあくまでもデータベース。ただ、この分野では70%以上のシェアを占めており、いまさら強調する必要はない。まだシェアトップをとっていないアプリケーション・サーバに関しては、認知を広げる必要がある。

 われわれがユーザーに訴えていることは、9iはプラットフォームだという点。動的コンテンツが主流となったいま、アプリケーション・サーバとデータベース、開発ツールは補完関係にあり、ユーザーはオラクルで必要なものをすべてそろえることができる。これによりユーザーは、キャッシュ技術や統一的なセキュリティ・ポリシーの徹底など多くのメリットが得られる。中でも、環境の最適化は大きなメリットとなる。これは、企業には、最低限のコンピュータリソースでできるだけ多くのアプリケーションを動かすというニーズがあるが、9iではこれを実現することができるのだ。

――「JDeveloper」などの統合開発環境は、確かに開発者の作業を軽減するかもしれないが、SQL、XML、Java、UMLと次々と技術が登場し、開発者にとって勉強することが多い現実は変わらない。今後、開発ツールはどのように開発者をサポートしていくのか?

ボンバーニ氏 「JDeveloper」では多くの自動化を実現したが、開発の複雑性は残っている。生産性の向上は引き続きわれわれの課題だが、開発者が技術を学ばなくてはならないという現実は変わらないだろう。インターネットに標準はつきもので、言語の変遷は激しいから、開発者はこれからも習得すべきものはたくさんある。そのなかで、CORBAのように難しい言語は廃れていく。

どの技術から学ぶべきかを聞いてみたところ、「まずは、Java、XML。次にSOAPWSDL。そしてUDDI、LDAP。学ばなくていいのはC#(笑)」

 われわれができるのは、開発工程をすべて1つの環境の中で完結できるツールを提供することだ。モデリング、コーディング、コンパイル、そしてデバッグ。以前はこうした作業がすべて別々のツールで行われなければならなかったが、現在では、こうしたことが1つのツールで完結し、開発者の支援になるだろう。

――今回の大きなテーマの1つにWebサービスがある。Webサービスに関しては、マイクロソフトとIBMがリードしている印象があるが……。

ボンバーニ氏 オラクルがWebサービスで遅れていると思われているとしたら、それは誤解だ。マイクロソフトとIBMが昨年9月に“Webサービス”として発表する前から、オラクルでは同様の技術を“Dynamic Service”として提唱してきた。“.Now(ドット・ナウ)”は、マイクロソフト、IBMが“Webサービス”を発表した後の12月に、オラクルのWebサービスとして名称も新たに発表したものだ。

 注目してもらいたいのは、その12月の発表時点でオラクルには実績があったという点。開発者はオラクルのプラットフォームを使ってWebサービスを構築し、稼働が可能だった。それに対し、MSやIBMはイメージ先行で事例はなかった。

――Webサービスが本当に実用的なものになるためには、暗号化や認証などまだ足りないものが多い。

ボンバーニ氏 新しい技術の将来性に懐疑的になるのは当然のこと。18年前に私がリレーショナル・データベースについて語っても、拡張性に乏しいからビジネスでは利用されないと言う人がほとんどで、誰も今のような状況を想像していなかった。

 Webサービスも同じようなものだ。ただ、セキュリティなどで課題はあるものの、この技術は、銀行で用いられていた財務系サービス・システムの「swift」のように、既に部分的には実現している。Webサービスでは、プラットフォームがパブリックになるだけだ。今後、プラットフォームが整備されて実用性のある技術へと発展していくだろう。Webサービスに関しては、オラクル、マイクロソフト、IBMの3社の意見が初めて一致した。今後この3社をはじめ、大手企業がWebサービスの発展に関しては協力していくのだから、将来性に不安を感じる必要はない。

 いま問題を抱えているのは、UDDIだろう。例えば、UDDIに対して輸送業者のFedEexが自社のサービスを「小包運送業者」と登録し、ユーザーが「宅配業者」でサービスの検索をした場合を想定してみる。現在のUDDIでは、この2つの言葉が同義だと認識できないため、両者はマッチングしない。現在、マイクロソフトはこの問題に対し、登録する言葉の定義を独自に進めようとしているが、第三者がこの作業を進めていくことが望ましいだろう。

(編集局 新野淳一、末岡洋子)

[関連リンク]
日本オラクル
iDevelop 2001

[関連記事]
「.NETを待つ必要はない。デベロップ.NOW」とオラクル (@ITNews)
Oracle9iは「5倍の性能、10倍の信頼性」 (@ITNews)
日本オラクルがWebアプリケーションサーバの新版を発表 (@ITNews)
Oracle9i:一体何が新しくなるのか(@ITNews)
転換期の日本オラクルの悩みは? (NewsInsight)

 

 

情報をお寄せください:



@ITメールマガジン 新着情報やスタッフのコラムがメールで届きます(無料)