ユビキタス時代に向けガートナーが提言することとは?

2001/11/16

 ガートナー ジャパンは11月13日より3日間、恒例の提言イベント「Gartner Symposium/ITxpo2001」を開催した。今年のテーマは、時代の空気を反映してか“再生そして飛躍”。「IT業界の方向性とシナリオ」と題した基調講演では、米ガートナー カール・クランチ(Carl Claunch)氏が、ユビキタス・コンピューティングと次世代の技術、変わるIT管理者の役割などをテーマに講演した。

 ユビキタス・コンピューティングは、決して新しい言葉ではないが、ここ1、2年ほど、ベンダの間で盛んに使われてきた言葉だ。クランチ氏は、まずこの概念の発達の経緯を示した。話は24年前にさかのぼる。米ゼロックス PARC研究所のリサーチャー マーク・ワイザー(Mark Weiser)氏が将来のコンピューティング・コンセプトの3つの波を表現するのに用いたのが始まりだ。第1の波は1台の大型コンピュータを数千人が使用、第2の波は1人1台コンピュータを使用と発展し、第3の波では1人を多くのコンピュータが取り囲む――、「1人1台の時代はもう終わりつつある」とクランチ氏、2001年はその境界ともいえる年で、われわれはユビキタス・コンピューティング時代に突入しつつあるという。

 クランチ氏は、ユビキタス・コンピューティングを実現する要素として、接続性やコンピュータを意識させないデバイス、デバイスによる位置の認識などを挙げる。これが企業システムにどのような影響をもたらすのだろうか――。企業は多くのデバイスをサポートし、その結果、2005年にはユーザーデータの40%は企業システムの外にあるとガートナーでは予測している。また、ビジネスの形態も変わる。企業は各デバイスに対応した結果、多くのチャネルを持つことになる。「2003年には、グローバル1000企業の取り引きのうち、75%のBtoB、65%のBtoCは3つ以上のチャネルを介して完了される」とクランチ氏は予測を述べる。当然、個人のワークスタイルも変化する。自宅でメールをチェックすることはいまや珍しいことではなくなったが、この傾向はさらに進むだろう。従業員は自宅でも仕事を行うようになり、これまで私生活と仕事の間にあった“カベ”は低くなる。ユビキタス・コンピューティング時代では、統合とセキュリティ対策を含む管理が大きな課題となってくるとクランチ氏は見る。

 クランチ氏はまた、IT管理者の役割も大きく変わると予見している。その背景には、ITとビジネスの関係がより深まることやシステムのアウト・ソーシングという動向がある。ITは企業のビジネスの変化をサポートするだけでなく、将来的には変化を動かすものにもなる。また、システムのアウトソースが進むと、これまでのネットワークの保守・管理といった業務はIT部門の手を離れる。

 そこで、IT部門に求められるスキルは、技術だけではなくビジネスの知識へも広がる。これまで、IT部門のトップであるCIOは技術者であることがほとんどだったが、「ビジネス畑出身のCIOも登場し、専門分野を持つ複数の幹部がIT部門を構成することになる」とクランチ氏は見る。

 その上で、クランチ氏は、時間的・物理的制約をなくし企業変革をもたらすようなテクニックと技術を採用する、ユビキタス・コンピューティングの波に、インフラ、アプリケーション、プロセス、ポリシー、文化を適合させる、ASPを活用するなどしてリスクを最低限に抑え、ビジネスに価値やスキルを加え、企業再構築を進める、などの提言を行った。

(編集局 末岡洋子)

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