ガートナーの戦略提言イベント、eビジネス戦略とは変化を捉えること

2000/11/15

セッションはどこもほぼ満場となった
 日本ガートナーグループは、東京・台場で「Gartner Symposium/Itxpo 2000」を開催している。第5回目となる今回は、「成功へのパラダイムシフト」をメイン・タイトルに、同社の国内・海外のアナリスト、ゲストスピーカーが、21世紀に向けて企業のITパラダイムをどう変えていくかについて分析と提言を行う。

 11月14日の初日は、ガートナーグループ バイスプレジデント兼リサーチディレクターであるカール・クランチ(Carl Claunch)氏と日本アイ・ビー・エム代表取締役社長大歳卓麻氏の2つの基調講演で幕を開けた。

「IT業界の方向性とシナリオ」と題し講演したクランチ氏

 クランチ氏は産業のトレンドを分析し、ビジネス・技術・IT運用のそれぞれに挑戦課題を示した。同氏の見解をまとめると、

  • 今後6〜8年間は、eビジネスが変化しつづける
  • “クリック&モルタル”のハイブリッド型が生き残る
  • ITのフォーカスは社外に向かう
  • CIOの位置付け・役割の変化(ビジネスサポーターからビジネスリーダーへ)

となる。その上で、企業アプリケーションの統合とコラボレーティブな商取引の両分野でコンピタンスを構築する、場合に応じては組織とプロセスを再構築するなどの具体策を提案した。

 シンポジウムセッションは、アウトソーシング、データセンター、eマーケットプレイス、XMLなどをテーマに36セッションが用意されている。「テクノロジを超えて」と題し、ビジネスから人々の生活まで、社会全体の動向について語ったのはガートナーグループ バイスプレジデント兼リサーチディレクターのウィリアム・マリック(William Malik)氏。

 「インターネットは小さくなる」――ネットが普及して身近になった日常生活をこう表現し、個人間で電子的にお金のやり取りが実現するようなCtoC(Consumer to Consumer)、家庭内コミュニケーションにグループウェアを使用するようなシーンを語ってみせた。懸念されるプライバシーの扱い方については、「セキュリティと関係があるが、同じものではない」線引きの必要性を強調した。個人がどんな状況で・誰と自身の情報を共有するのかが重要になるという。

 「情報技術は、社会、経済、環境、政治、技術の全てに影響を与え、また影響を受ける」というマリック氏は、あらゆる場面を想定した進化を念頭に置いて活動する企業こそ、生き残り、繁栄を続けることができると見る。

「ビジネスとは正しいeビジネス戦略を立てることではない。状況を把握してプロセスを増幅させていくことだ」(マリック氏)

 ビジネスでは、ドック・イヤーと言われ、サイクル速度が上がりつづける“Zero-Latency”(遅延ゼロ)経済、ユビキタス・コンピューティングを注目すべき特性に挙げる。PC上のLinuxでもWindowsでもなく、PDAなどのスマートで使いやすいデバイスが席巻するという。

 先の見えない将来へのITビジネス運用戦略について「正しい、間違っているの観点で戦略を立てるべきではない」とマリック氏。ヒントとして、世界経済とビジネスでのIT利用の2つの測定基準を提示した。それぞれの繁栄・停滞、進化・改革により、掛け合わせて4つの状況が推測できるが、「4つのカテゴリに当てはめてみて、どう生き残るかを考えるべきだ」という。

 聴講する側が自由に質問できるのもこのシンポジウムの特徴の1つだが、このセッションでは観客から「ロボットやAI(人口知能)をどう見るか」という質問が寄せられた。「私個人としては、ロボット学やクローンが人に取って代わることはないと考える」とマリック氏は答える。「長い目で見ると、現在は、コンピューティングの長い歴史のほんの初期段階にある。これからの動向は誰にも分からない」としながら、小型で特技を持つロボットは早い時点で実用段階に入ると予想した。

 このシンポジアムは11月16日まで開催される。

[関連リンク]
日本ガートナー「Gartner Symposium/Itxpo 2000」

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