[Interview]
WebサービスとCORBAの両面から“統合”を貫くアイオナ

2001/12/13

 日本アイオナは12月12日、Webサービスのインテグレーションを行うプラットフォームを含む製品群「Orbix E2A」を12月25日に販売開始することを発表した。

 Orbix E2Aは、米国では11月に同社の新戦略とともに発表されたもので、今後数年間、同社が注力していく製品(「エンド・ツー・エニウェアへ、アイオナがWebサービス戦略発表」参照)。同製品は、Webサービスの統合を行う「Orbix E2A Web Services Integration Platform」分野で3製品(「Collaborate」「Partner」「XMLBus」)、アプリケーション構築を行う「Orbix E2A Application Platform」分野で3製品(「Enterprise」「Standard」「J2EE」)の合計6製品で構成される。

 CORBA ORB製品を提供してきた同社だが、新製品と新戦略「End 2 Anywhere(E2A)」とともに、フォーカスを大きくWebサービスに移すことになる。

 同社プロダクト・マーケティング担当副社長 ジョン・ライマー(John Rymer)氏に、新戦略の狙いや今後の技術動向について話を聞いた。


ジョン・ライマー氏 J2EEに乗り遅れたことを認めつつ、「Webサービスでは、このタイミングでこの完成度の製品をリリースするベンダは弊社ぐらいだ」と自信を見せる

――新製品では、Webサービス市場を狙うのか、アプリケーション・サーバ市場を狙うのか? CORBAプラットフォームの「Orbix2000」とJ2EEプラットフォームの「iPortal Application Server」を統合したことになるが……

ライマー氏 両方の市場を狙う。アプリケーション・サーバでもWebサービスでもそれぞれに市場は異なり、顧客も異なる。

 CORBAとJ2EEの統合については、EJB2.0では、異なった EJB 製品間での相互運用を保証するためにIIOPをサポートすることが規定されている。これは事実上、EJBサーバをCORBAで実装すべきであると規定されたことになり、ここに、統合の理由がある。顧客は両方のプラットフォームを求めており、弊社はこの動きに応じた。Javaがポピュラーになったといっても、大半のアプリケーションはCやC++で書かれているのが現状。これらとの接続を考えると、この動きは当然といえる。現在、アプリケーション・サーバとIIOPの2つのプロトコルが存在するというケースが多いが、弊社の場合、ベースとなるレイヤーは共通で、J2EEとCORBAの両方を利用できるというメリットがある。

 今回の新製品は、これまでばらばらに提供していたものをまとめて、新しい製品カテゴリを作ったにすぎない。これにより、ユーザーは選択の自由が広がる。

――CORBAもWebサービスも、“接続”に関する技術。CORBAとWebサービスはどのように使い分けられるのか?

ライマー氏 たしかにCORBAもWebサービスも、異なるアプリケーションの接続を可能にするものだが、それぞれに用途が異なる。CORBAはタイトな結合を実現し、適する対象はオブジェクトやコンポーネント。一方のWebサービスは、疎結合を実現し、適する対象はアプリケーションとビジネスプロセス。それぞれに長所・短所があるので、これからもCORBAは使われ、Webサービスと共存することになる。

 弊社は“統合”に着目し、Webサービスの統合を標準技術を用いて実現するツールを提供するチャンスだと思い、この製品をリリースした。その意味では、この分野では業界初のベンダ。今回、CORBA、J2EE、.NET、メインフレームなど、サポートするプラットフォームは業界最多だ。これも、弊社のミッションが、技術のブリッジング(橋渡し役)だからだ。これまで培ってきた統合に関する技術を生かし、優位性を確保していく自信はある。

――Webサービスはどのように進化すると見ているのか? また、それにどう対応していくのか?

ライマー氏 3段階(フェーズ)で定義している。フェーズ1が、社内でのアプリケーション統合。いま、われわれはこの時点におり、現在の弊社の製品で対応できる。例えば、顧客であるギフトカードのメーカー、米Nordstromの場合、オンラインと店舗の両方の販売チャネルを、同じ発注管理システム、在庫管理システムで管理したいという要求があった。オンラインはマイクロソフトのサーバで稼働しており、発注や在庫管理はレガシーシステムがそれぞれ別に動いていた。これを、新規の開発ツールやハードウェアの追加なしに、SOAPを用いて統合した。要した期間はわずか2カ月間で、クリスマス商戦に間に合わせることができた。

  フェーズ1にやや遅れて進行しているのが、フェーズ2。WebサービスがBtoBおよびBtoCに用いられ、よりダイナミックな商取引を実現する。

 そして、フェーズ3のダイナミック・Webサービス。パーソナライゼーション機能が付加され、顧客に応じてビジネスプロセスが動的に変化する世界。このレベルに到達するまであと2年はかかるだろう。弊社としても、当然、タイミングを見てフェーズ3で求められる製品をリリースしていく。

 ただ、Webサービスはシンプルな使われ方でも、大きな利益を生むもの。いまの段階でも十分にメリットはあるといえる。

――EAIツールのベンダやアプリケーション・サーバのベンダと競合することになるが、御社製品の優位性はなにか?

ライマー氏 EAIツールのベンダは統合技術に独自技術を用いており、弊社はオープン性を強調していく。オープンであることは、柔軟性、選択の自由、コスト削減といったメリットをもたらすからだ。

 アプリケーション・サーバ市場では、CORBAとJavaのコンビネーション、低価格(IBMやBEA製品と比較すると6分の1の価格)、高度な相互接続性が差別化につながる。特に、SOAPの相互接続性に関しては、接続性の実験結果を弊社サイト内で公開しており、接続性に優れていると自負している。また、「XMLBus」ではWebサービスレベルでビジネスプロセスをサポートする。これは他社がまだ実現できていない技術だ。

 現在、システム開発プロジェクトの約4割が統合に関するものといわれている。企業システムは日本であれ米国であれ、ポイント接続されたアプリケーションが散在する“スパゲティ”状態といわれており、統合に関する費用や人の手間は社会的損失といっても過言ではない。そういう意味では、統合に関する標準技術が提供されることによるメリットは大きいと考える。われわれは統合のエキスパートだ。今後もこの分野にフォーカスして専門性を高めていく。

(宮下知起、編集局 末岡洋子)

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日本アイオナの発表資料

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