ThinkPad10周年、誕生の秘話が明らかに?

2001/12/18

 日本アイ・ビーエムは12月17日より、同社幕張事業所にあるコンピュータギャラリーで「IBM Design from Japan」を開催中だ。この展示会は同社のデザイン活動を紹介するもので、会場には、すでに製造が中止となり入手が難しいThinkPadから“LinuxWatch”など将来のコンピュータ機器まで、さまざまな製品が展示されている。

“ThinkPad犬”を中心に、ずらりと並んだ過去のThinkPad

 巨大メーカーIBMといえども、デザインに関しては拠点を3つしか持っていない。そのうちの1つが日本、神奈川県大和市にある“大和研究所”と呼ばれているデザインセンターだ。ビジネスユーザーを中心に固定ファンの多いThinkPadシリーズは、実はこの大和のデザインセンターで1992年に生まれたのだ。

「5523‐S」 日本ではそこそこに好評だったものの、海外では不評だったとか “バタフライ”の愛称で親しまれた「701C」  

 

 当時、ノートPCといえば東芝の「DynaBook」が圧倒的なシェアを誇っていた。その中に食い込むにあたり、同社がデザイン面で差別化を図ったことは、キーボードと本体のサイズ。かくして、黒塗りのA4サイズ(当時としては小さめ)の「5523‐S」が誕生した(写真上・左)。約10年前のことだ。

 その後、「700C」「701C」など次々に登場。ThinkPadの最大の特徴の1つ、赤い「TrackPoint」は、700Cより世界的に採用された。701C(写真上・右)は別名“バタフライ”とも呼ばれたノートPCで、画面を開くとキーボードが横に広がるというもの。ニューヨーク近代美術館に展示されている名品だ。ちなみに、同社のノートPCに“ThinkPad”という名称がつけられたのは700Cから。

「850」 見た目にもかなり重力感がある 「Palm Top PC」1995年に発売された。同製品も、予想ほど売れなかったとか

 もう1つ、珍しい展示といえそうなのは「850」(写真上・左)。PowerPCのノートPCで、PowerPCの性能を生かし、カメラなど様々な機能を搭載した。だが、売れ行きはいまいちだったとか。

山崎氏 将来のノートPCは?「軽量・小型化が全てではない」

 現在、ThinkPadの最新モデルは「s30」。今年11月に発売された。メモリは、5523‐Sでは40MB/80MBだったのに比べ、s30は128MB/256MB、バッテリー持続時間は、700Cでは2時間だったのに対し、s30では6.7時間を実現した。そして、来年ThinkPad誕生10周年を迎えるにあたり、同社では“Think Smile”という新コンセプトを掲げ、さらなる展開を図る。

 「居酒屋を考えるとき、イスの高さ、お酒のボトルのディスプレイなどいろいろと工夫が必要だが、最も大切なことは、お客さんが居酒屋を出た後、気持ちが良かったかどうか、“また行きたい”と思うかどうか」とデザイナー/デザイン・マネージャー/部長 山崎和彦氏は語る。“Think Smile”のSmileは感性の部分。使った後、ユーザーが気持ち良いと思えるインターフェイス作りを目指す。「デザインといえばイタリアなど外国が有名かもしれない。でも、日本でいいと思ったものは海外でも評価される」と日本発デザインへの期待を語る。

 このThink Smileの下、この先、どんな逸品、名品、あるいは迷品が登場するのか、楽しみだ。

LinuxWatch シチズンと協業するまでは、時計というより小型コンピュータだった。防水加工など、専業メーカーから教えられたことは多いという
Wearableコンピュータ。技術的にはほぼ実用に耐えうるレベルに近づきつつあるという
 

(編集局 末岡洋子)

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IBM Design from Japan

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