液晶パネル裏に水冷装置、ノートPCで静音を実現した日立
2002/3/15
日立製作所は3月14日、世界初のノートPC向け静音水冷システム(Silent Water Cooling System)を披露した。これは、2月25〜28日、米サンフランシスコで開催されたIDF(Intel Developer Forum)で発表したもの。同社は今年第3四半期(7〜9月)に、この静音水冷システムを搭載したA4ノートPCを発売する予定。企業向けだけではなく、コンシューマ向けも視野に入れている。
水冷システムを搭載したA4ノートPCの試作機。赤く見えるのが不凍液の入ったリザーバタンク。分子構造の関係上不凍液の蒸発が避けられないため、リザーブタンクを用意している。冷却液の総量は60ml、リザーブタンク容量は50ml、流量は1ml/sec。配管の総延長は1.5m、径は2mm。試作機では分かりやすくするため、タンクを液晶パネル裏面に配置したが、ノートPCの本体内に設置することも可能 |
水冷システムの披露にあたって、同社インターネットプラットフォーム事業部長の篠崎雅継氏は、「日立では従来より顧客満足度を高めるために、ユーザビリティ、セキュリティ、カスタマイズ、省エネ・環境の4項目に取り組んできた。特に音については、ユーザーからの要望のベスト5に常に入っているもので、日立としても積極的に取り組んできた。Crusoeプロセッサ搭載のファンレスのノートPCやAMDのAthlon XPプロセッサ搭載の静音デスクトップPCなどだ。今回の水冷システムは、3年前から開発を行ってきたものだ」と述べた。
インターネットプラットフォーム事業部長の篠崎雅継氏 |
同社が開発した水冷システムは、従来放熱のために利用されていなかった液晶パネルの裏側を冷却スペース(ラジエター)として利用する。IDFでの発表時には冷却液として純水を使っていたが、今回の国内でのお披露目では、安全性を高めるために不凍液を使用している。
これにより冷却用のファンが必要なくなり、静音化に寄与する。試作機では、モバイルPentium4-M/1.7GHzを搭載し、26dBを実現(図書館の静かさがが30dBとされている)。30Wまではファンレスで対応でき、それ以上の性能のCPUでもファンとのハイブリッド構成で対応できる。
純アルミでできた水冷ジャケットをCPUに取り付け、ステンレスの冷却液循環パイプから放熱板〜リザーブタンク〜ポンプ〜水冷ジャケットと循環させる。また、水冷ジャケットを複数用意してシリアルにつなぐことで、グラフィックチップやメモリコントローラなどCPU以外の発熱体の冷却も可能だ。
また、液体を使っていながらメンテンナンスフリーを実現。「この部分(メンテナンスフリー)が開発に一番時間がかかった」と、事業企画室長の源馬英明氏は語った。
水冷モジュール自体の価格は数十ドルで、従来の空冷に使用している部材と比べても重量増やコスト増にはつながらないとしている。同社では、第3四半期に発売するA4ノート製品の価格は20万円前後になると見込んでいる。
「日立では、この水冷システムをデファクトスタンダードとしたいと考えている。すでに、台湾と日本のいくつかの部品メーカーに技術供与を行い、水冷モジュールの生産を行っていく」と篠崎氏は締めくくった。すでに日立電線株式会社との契約が済んでおり、同社から水冷モジュールが発売される予定。
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