アプリケーションサーバの数字の裏を読む
2002/6/15
By Richard Karpinski, InternetWeek,
May 28, 2002(12:26 PM)
今日のIT市場で最も注目を集めているのは、アプリケーションサーバ分野だろう。アプリケーションサーバは、わずか2〜3年の間にeビジネスの原動力として急浮上し、サーバベース・アプリケーションの開発プラットフォーム、Webとレガシーシステムとの統合で重要なカギを握るコネクタ、そしてエンタープライズポータルやWebサービスといった次世代ITインフラの足掛かりとして活躍している。最近、知名度の高い2社のIT調査会社(米ガートナーと米IDC)が、重要なこの分野に関して新たな市場調査結果を公表した。両社の発表の前にも、ここ数カ月の間に米Giga Information Groupと米AMR Researchからレポートが上がっている。
これだけ豊富に情報があるので、ここでは一歩下がって、アプリケーションサーバ市場を推進する大きなトレンドを追ってみたい。というのも、マーケットシェアの数字といった目に見えるものだけではなく、その進化に伴ってこの分野を形づくる水面下の展開についての調査することに価値があると考えるからだ。
IBM、BEAへの追従
Javaアプリケーションサーバの明確なリーダーとして浮上しているのは米BEAシステムズと米IBMだ。米マイクロソフトについては、同社がWindowsで力を維持していることは疑う余地もないが、.NETアーキテクチャはまだ初期の段階にあるため、同社の組込アプリケーションサーバについては依然として予想が付かない。米ガートナーでは、マイクロソフトのアプリケーションサーバを、ハイエンドアプリサーバ市場に影響を与えられる段階には達していないものの「十分優れた無償技術」としている。
米ガートナーではリーダー各社を、BEA(34%)、IBM(31%)、サン・マイクロシステムズ(9%)、およびそのほかのベンダとして格付けしている。5月初めに調査結果を発表した米AMR Researchによると、この市場で最終的に残るのは、BEA、IBM、マイクロソフト、そしてオラクルの4社に絞られると見ている。
それに対し、われわれの意見はこうだ。IBMとBEAは、“アプリケーションサーバ”という新市場の伝道と、最高の品質と絶妙なタイミングでJava標準を実装するという点で大いに活躍した。だがサンは、同社のiPlanet(現在は社内に再統合され、「Sun ONE」というブランドが与えられている)関連の混乱から大打撃を受けている。また、アプリケーションサーバ市場での競合を試みながらも、Java標準を監視するという2つの役割を果たすということも、同様に同社を不利な立場に置いた。
データベースとアプリケーションサーバが密接に連動していることから、オラクルは依然として主要なプレーヤの座にとどまっている。ツール(Visual Studio.Netは絶賛されている)で大きな力を持つマイクロソフトにも、いつかはサーバで注目を浴びる日が来るだろう。「その他」のカテゴリーは衰退が続いているが、このグループで最も興味深いのがJBossやTomcatといったオープンソース製品だ。先日初めてサンがJ2EEクローンのサポートを発表したため、Apache Groupなどの組織はその流れに乗ることが予想される。
では、ユーザーがとるべき対策はなにか? マーケットシェアの数字に注意を払うことは正解だろう。数字には、激しく繰り広げられている戦いを注視する以上の意味がある。AMRによると、主要アプリケーションサーバ・ベンダ各社は、もはや技術的な機能では競争しておらず、ベンダの存続性、プラットフォームのコスト、そしてインフラの追加投資で競っているという。戦略的に重要性の高いこの分野では、ユーザー数と資金の最も多いベンダが最も高い成績を収めることになるのだ。
必需品(コモディティ)が否か?
これまでは絶対になかったようなことだが、J2EEランタイムが必需品と考えられる日がもうすぐ来るかもしれない。EJB(Enterprise Java Beans)に代表されるような複雑なエンタープライズ技術の習得、そして提供においては、ベンダ間に大きな差があった。そして、(初期の頃に市場参入したベンダ各社の合併や買収をはじめとして)変化が絶え間なく続くため、最高品質のアプリケーションサーバを選択することは、戦略的に非常に重要だった。
だがこの状況も変わりつつある。企業各社は高品質のJ2EEエンジンをタダ同然で入手できる。サンが自社のアプリケーションサーバをSolaris OSにバンドルする判断を下したことで、市場の力関係は確実に変化するだろう。ユーザーは、Windowsプラットフォームが展開している「おまけアプリケーションサーバ」という類似した戦略からもメリットを享受することができる。さらに、ユーザーはオープンソースとして、あるいは米マクロメディア(同社のJRunサーバは依然としてコストパフォーマンスに優れている)などのベンダ各社から、無償もしくは手ごろな価格でJ2EEサーバを入手することができる。
大半の企業がこのプラットフォームを使って簡単なサーブレットやJSPベースのアプリケーションを動かしている現状では、機能を多く持つJavaサーバを数千ドルで入手できる状況で、数十万あるいは数万ドルをアプリケーションサーバに投入する気にはなれない。
このようなトレンドが、IBMやBEAなどのハイエンドベンダ各社が数カ月間に何度も直面することになる疑問だ。
これに対しては明確な回答が1つある。ユーザーは、信頼できるサポート、資金の存続力、そして製品ロードマップを備えた大企業レベルのベンダ各社との共同作業を好むのだ。
だが、おそらくもっと重要な理由は、(コモディティ化された)アプリケーションサーバが一段と大きく複雑な中規模コンピューティングインフラの主要部品となるからだ。
次は拡張されたアプリケーションサーバがプラットフォームになる
アプリケーションサーバにはデータベース、サーバOS、および統合開発環境(IDE)などの多数の製品がバンドルされてくる。そしてこれらは、統合機能、ポータル、そしてエッジサーバ(身元管理システムといった関連技術は当然)などを含んだ、規模の格段に大きいプラットフォームの中心機能として急浮上しつつある。
このようなトレンドは、実現までに時間がかかっていた。先日公表された米ガートナーのレポートはこの現象の分類を試みており、この拡張プラットフォームを「アプリケーションサーバ・プラットフォームスイート」と呼んでいる。同社ではこの新分野のリーダーとしてIBM(33%)、BEA(24%)、オラクル(12%)、そしてサン(7%)に期待を寄せている。
技術面では、新しい標準によるWebサービスやポータルアプリケーションのサポートが進んでおり、標準ベースの統合スキーマがようやくJava Community Process(JCP)作業グループの手を離れようとする中で、JCPがこのトレンドもサポートしていくことになる。
ユーザーとの話の中からもこのトレンドがはっきり見える。ポータルは、大半の企業が依存するようになった各種Webベースアプリケーションを配信するための重要な手段となってきつつある。これらは、今後登場する新しいWebサービスの配信でも重要な役割を果たすことになるだろう。これらのアプリケーションへのアクセスはさらにパーソナライズされ、役割分担がなされていて、アプリケーションサーバのプラットフォーム(そして最終的には堅牢なWebアクセス管理プラットフォーム)と密接にリンクされたディレクトリサーバが必要になる。
そして、これらのアプリケーションすべてがミッションクリティカルな特性を持つことから、ネットワークのエッジ部分でサーバがキャッシングや負荷バランシングといった極めて重要な機能を実行し、ITの現場ではそのトラフィック管理がより大きな意味を持つようになるだろう。
典型的な企業にとって、これらは何を意味するのだろうか? 新たな開発の基盤には市場で最も価格の安いJ2EEコンテナを使いがちだが、アプリケーションサーバに関する判断は依然として戦略的に重要だ。単発のJavaプロジェクトにコストをかけすぎるのはよくないが、新しい分野であるミドルティアに対する企業レベルの戦略展開の必要性を軽視してもいけない。今後しばらくの間は、ここが最も重要なアーキテクチャ関連の判断となることは間違いないからだ。
[英文記事]
App Servers:
Behind The Numbers
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