[WEB SERVICES Conference開催]
開花には最低3年が必要、Webサービスの現実
2002/7/13
“Webサービス”という言葉、日本よりもずっと先行しているIT先進国、米国のIT関連企業の24%が「聞いたことがない」のだという。今年初めに米IDCが米国企業541社を対象に行った調査で明らかになった。同社 eビジネス Java/XML担当ディレクター ダーク・コバーン(Dirk Coburn)氏が、開催中のイベント「WEB SERVICES Conference」(主催:IDGジャパン)で、ここ1、2年、ビジネスを盛り上げようとするベンダがやや過剰気味に提唱してきた“Webサービス”の理想と現実についての見解を語った。それによると、主流アーキテクチャとなるのは早くて2005年の見込みという。
コバーン氏は、まずWebサービスの典型的な“ハイプ(Hype、過大な表現)”として、開発者の生産性が向上し、開発コストとソフトウェアの価格が下がる、ベンダにロックインされることがなくなり、アプリケーション同士が自由に通信できる、といった言葉を挙げる。だが、現実は、Webサービスを実現する標準技術は成熟段階にあるとはいえず、製品数も少ない。IDCでは、現実に立ち返ってWebサービスを以下のように定義したという。「標準化されたアプローチを用い、自己記述性のあるコンポーネント同士が動的に相互接続する分散コンピューティングモデル」(コバーン氏)。
米IDC eビジネス Java/XML担当ディレクター ダーク・コバーン氏 「Webサービスは、ニッチな分野や利用頻度が少ないが重要度の高い分野に適している」 |
では、ユーザーやベンダの認識はどの程度なのか? 同社が今年初めに行ったユーザー調査によると、65%の企業が先にコバーン氏が述べたIDCによるWebサービスの定義に同意し、11%が反対したという。興味深いのは、残りの24%がWebサービスという言葉を聞いたことがないと回答していることだ。調査は今年初めに米国で実施し、調査対象企業は541社。「Webサービスはまだかなり早期の実装段階にある」とコバーン氏は言い切る。
当たり前のことだが、Webサービスが主流となるためには、まず利用されなければならない。利用させるためには、それなりの目的や用途が必要だ。同社が同時に実施した調査結果を見ると、景気の低迷がユーザーマインドに大きな影響を与え、新しいアーキテクチャの実装が後回しになっている状態が浮き彫りになっている。アプリケーション開発関連への投資としては、「既存アプリケーションの維持・強化」がトップで、「社内アプリケーションの統合」「新規アプリケーションの構築・実装」と続く。その一方で、Webサービスに期待するものとして多かったのは、「社内・外の統合に関する課題を解決するため」と「特定のビジネスおよび技術的機能を提供するため」の2つ。「Webサービスがどんなメリットを生むのか、適用分野は何か、といったことが不明確な段階だ」(コバーン氏)。また、提供するベンダ側にも不安が見える。Webサービスが“プライム・タイム”を迎えるために必要なものは何か、という問いに対し、多くのベンダが「技術の成熟」と回答している。
これらのことから、Webサービスの離陸には時間がかかるといえるだろう。コバーン氏の予測によると、2003年の中ごろまでは、ファイアウォール内での実装フェイズで、2003年〜2005年がコミュニティ内での実装のフェイズ、動的にWebサービスを検索して利用というフェイズは、2005年以降という(米国)。
その“プライム・タイム”を迎えるためには、ユーザーのマインドはさておき、技術的にクリアしなければならない課題がある。それが、セマンティックと動的なブローカリングだ。日本語で“意味論”を意味するセマンティックは、Web上で交わされるメッセージ中のボキャブラリ(語い)の意味を、コンピュータが理解することを目指すもので、Webサービスを検索する側、提供する側、利用(消費)する側がランタイムで利用できることが必須だ。技術としては先端の分野で研究段階にあるが、完璧なボキャブラリの辞書を目指すのではなく、「信頼できる標準の策定」が焦点となるという。
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