相互接続性:Webサービス間のリンクを目指すライバル各社

2002/3/19
March 6, 2002 InternetWeek, By Richard Karpinski

 米マイクロソフトや米IBMといった大手ベンダから、規模の小さい新規参入企業や1人で開発を行っているようなところまで、さまざまなWebサービス先駆者たちによる専門グループは先日、実践ミーティングを開催し、重要なカギを握るWebサービス仕様の互換性をテストした。

 同グループ(このコミュニティを媒介している公開メーリングリストにちなんで「SoapBuilders」と呼ばれている)は、SOAP(Simple Object Access Protocol)に焦点を当てたミーティングを2回ほど開催したあと、その焦点をWSDL(Web Services Description Language)へと移した。

 今回行われた最新のテストには、米BEAシステムズ、米ボーランド、アイルランドのCape Clear、米ヒューレット・パッカード(HP)、米IBM、米マクロメディア、そして米オラクルといった大手ベンダに加え、多数の小規模企業やデベロッパも参加している。

 初期の段階で互換性にフォーカスしたことはWebサービスに良い結果をもたらしてはいるものの、SOAPやWSDLなどの重要度の高いプロトコルが,

異なるクライアントやサーバ間で首尾一貫した動作をするには、詳細な詰めの作業がかなり残っている、というのが先日のミーティングを終えた時点での同グループの見解だ。

 SOAPおよびWSDLの互換性テストの結果は、White Mesa、デベロッパのSimon Fell氏によるPocketSoap Weblog、そして米マイクロソフトのKeith Ballinger氏をはじめ、複数のソースから入手可能となっている。

 これらのサイトなどでは、異なるベンダ各社間におけるWebサービスの互換性を表にしたものを、エンタープライズユーザーが閲覧できるようになっている。最新のテストセッションを主催したアイオナで、製品戦略担当副社長を務めるPat O'Brien氏は、「カスタマのメリットとしては、どのベンダがどの部分の仕様を実装していて、どのテストに合格しているのかわかることだ」と話す。

 (Soap Buildersテストグループのメンバーは、政治的な駆け引きは避けようとしているが、)もう1つ解決しなくてはならないことに、業界のすべてのベンダが基本的な互換性で協力することの必要性がある。

 O'Brien氏によると、(JavaをビジネスとするIBMやBEAなどが参加した一方で)米サン・マイクロシステムズなどは、招待したにもかかわらず先日のテストには出席しなかったという。だが、この協力体制を実現してくれそうなのが、先日結成が発表されたWeb Services Interoperability Organization(WS-I)だ。同グループはつい先月、独自のテストスイートと互換性プログラムを開発中であること発表したばかりだ。

 ベンダ各社はWebサービスの開発用に最高のプラットフォームとツール(マイクロソフトの.Netとそれに対するBEAのWebLogicや、IBMのWebSphereといったJ2EEプラットフォームなど)を構築すべく積極的な競争を展開することになるが、デベロッパ各社は基本的なプロトコルの互換性を確実に実現すべく懸命な努力をしている。

 米マイクロソフトでXML Web Servicesのプロダクトマネージャを務めるPhilip DesAutels氏は、「全員がプラットフォーム上で競合していく。とは言うものの、私(MS)のカスタマとアイオナのカスタマ(そしてほかのベンダ各社のカスタマ)は、Webサービスを使うことによって自分たちが使用しているプラットフォームに関係なく、Webサービスを使用するか否かを判断できるようになる。現在、Webサイトを変更したいからといってWebサーバを変更したりはしない。Webサービスは互換性を持ち、プラットフォームに依存せず、プラットフォームを越えて機能する必要があるのだ」と話す。

 Webサービスを可能にするため、SOAPは「広く対応する」プロトコルとして機能し、XMLベースのメッセージをWebサービス環境で渡す働きをする。一方のWSDLは、Webサービスインターフェイスを詳細に記述し、Webサービスの使用を自動化および簡略化する。

 (WSDLはSOAPによるエレガントかつシンプルなデータの受け渡しを複雑にしてしまうといった理由で)WSDLがWebサービスの実現に本当に必要なのかどうかを疑問視する陣営もあるが、従来からのエンタープライズベンダ各社は、WSDLが大規模なWebサービスの成功にとって重要な役割を演じると見ている。

 DesAutels氏は、「WSDLは絶対に欠かせないものだと考えている。WSDLは契約だ。われわれの多くは、Webサービスを細かい契約に基づき柔軟に結合されたものだと考えている。Webサービスを明確に自動化されるよう定義しないと、手作業で処理を行うことになる。それでは時間と労力が必要になってしまう」と話す。

 また、たとえWSDLが導入されても、「SOAPはシンプルなものだということには変わりない」とアイオナのO'Brien氏。「だが、基本的なスクリプトや平凡な機能から一歩先に踏み込むと、WSDLが必要になってくる」と、同氏は付け加える。

 WSDLの支持者の主張によると、このような議論の中で見落とされることが多いのは、デベロッパは自分たちに必要なSOAPプロトコルスタックだけを選べば後は気にする必要がない点だという。

 「Webサービスはさまざまな構成にすることができる。SOAP over HTTPだけが必要ならそれだけでいいし、サービス契約を記述したければWSDLを使えばいい。信頼性の高いルーティングやセキュリティが必要ならば、そのための標準も用意されている」(DesAutels氏)。

 現在、WSDL仕様は覚え書きとしてW3Cに提出されており、複数の企業が自社製品への同仕様の実装と互換性テストを進めている。W3Cは将来的にはWebサービスを記述するための正式な勧告を出してくるだろう。ベンダ各社は、必要であればW3Cのこの指導に合わせて調整を行うことになる。

 SOAPのときにそうであったように、ベンダ各社はWSDLの導入とテストのために、まずベンダ内で仕様に目を通して実装を行い、次に異なるクライアント、サーバ、および開発ツールの間での互換性をテストする(これが先週始まったもの)という、確立されたプロセスを進めていくことになっている。

 (自社がCORBAの世界に深く関与してきた)アイオナのO'Brien氏によると、「Webサービスが生まれた年」にベンダ各社が互換性に取り組んでいるという事実は、ベンダ各社が互換性への取り組みを始めるだけでも数年を要したCORBAや、エンタープライズJavaなどと比較しても大きな進歩だと評価する。そして、このような取り組みが進んでいるにもかかわらず、J2EEの場合にはデベロッパがまだ非互換性に遭遇することなくアプリケーションサーバ間でコードを移植できずにいるという。

 先日行われたセッションでは、参加企業各社がWSDLの互換性問題への取り組みで大きな進展を見せている。各社はまた、グループが再度ミーティングを開く可能性の高い3カ月以内に残りの問題を解決すべく、公開アクセスサーバにも熱心に取り組んでいる。

 Soap Buildersグループはその後、セキュリティなどのWebサービスで非常に重要なほかの分野にも取り組むことが予想されるが、ここでは今後登場するXML仕様がWebサービス環境においてデジタル署名や暗号技術がどのように機能するのかを定義している。

[英文記事]
Mission Interoperable: Rivals Aim To Link Web Services

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