「Javaとの競争に勝つ自信がある」とMS、その理由は?

2002/8/6

 マイクロソフトは8月5日、「Microsoft Windows .NET Server 日本語版」のRC1を特定のテスター向けに提供開始したことを発表した。また、米国本社からバイスプレジデントが来日し、.NET第2フェイズへ向けた戦略などを明らかにした。

 米マイクロソフトが同社のWebサービス構想である.NETを発表したのは2000年のことだ。それから2年の月日を経た現在、同社は第2フェイズに入ったとの認識のもとに、さらなる展開を進めていくという。

同社 ストラテジーおよびビジネス ディベロップメント グループ バイスプレジデント サンジェイ・パーサラシー氏

 サンジェイ・パーサラシー(Sanjay Partharathy)氏は、米マイクロソフトのストラテジーおよびビジネス ディベロップメント グループでバイスプレジデントを務めている。.NET構想をゲイツ氏(Bill Gates、同社 会長兼チーフ・ソフトウェア・アーキテクト)とともに練り上げた人物でもある。同氏は.NETのこれまでを振り返り、以下のように語る。

 「弊社のWebサービスである.NETは、2年前の“XMLに社運を賭ける”という大きな決断のもとに推進してきた。弊社にとっては、過去に、グラフィカルなユーザー・インターフェイスを全製品に取り入れたのに匹敵する取り組みだ」(パーサラシー氏)。そして、「現在、Webサービスは、統合という最大の課題を解決する手段としての認知を得、技術的に可能だという証明も十分になされた」と述べ、同社は次のフェイズへ向けての取り組みへ移行するとした。

 同社は今後3年間を第2フェイズとし、.NETを実際に利用してもらうための対策をとる。技術的には、システムと組織間、信頼、人間と人間、知識取得、日常生活における利用、の5つの面で、克服すべき壁を定義し、ソリューションを製品に実装して提供する。例えば、信頼という分野では、ソフトウェア、ハードウェアの両方から信頼性を確保するという試みである“Paradium”(コード名)や、Passportのプライバシーツールなどがあり、知識取得の分野では、データの一元管理を実現する、SQL Serverの次期バージョン“Yukon”などがある。

 これらの技術的課題の克服と同時に進めていくのが、組織における意思決定者層への.NETのアピールだ。今年初めに発売された開発ツール「Visual Studio .NET」は「予想外の成功」(同氏)を収め、開発者への認知は十分に得られているとし、今後は、ビジネスからみた.NETの長所を、決定権のある層に強調していく。ビジネスからみた長所とは、統合・相互運用性を実現することにより得られる、既存資産の保護、生産性の向上、リードタイムの短縮などだ。

 「今後3年間、.NETへの移行が本格化するだろう。現在、Webサービスは、統合や相互運用性といった課題を解決する技術的手段として導入されているが、その後、業務プロセスやビジネスの手法そのものを変革するものへと発展させているところが多い。戦略的なアドバンテージとしてではなく、戦略的に必要な技術としての確立を目指す」(同氏)。

 気になるJava陣営に対して、同氏は、「Javaは今後も共存する」とコメントした。そして、「最終的には、顧客の選択」としながらも、現時点では.NETが優勢との認識を示す。その理由は、Javaを担ぐベンダはWebサービスを追加的機能としてとらえているのに対し、マイクロソフトはWebサービスをコアとしている点。それが、使いやすさや生産性の向上、迅速な構築、パフォーマンスの向上などに表れているという。「.NETは現実に事例があるが、例えばIBMのWebSphereベースのWebサービスは、現実には存在しない。このように、Webサービスにおけるこれまでの実績には満足しているが、本当の敵は、COMとCORBAと考えている」(同氏)。

 同日提供を開始した、Windows .NET Server 日本語版 RC1は、「Windows 2000 Server」群の後継となるサーバ製品。今回はベータプログラム参加者やパートナー各社に向けての提供となる。同製品は.NET実現の中核となるもので、.NET Frameworkや「Enterprise UDDI Services」を組み込むなど、.NETベースのWebサービスの開発から展開までを容易に実現できるという。その他、64ビットコンピューティング、8ノードクラスタリング、NUMAなどをサポートしている。

 マイクロソフトによると、同製品は年内に開発作業の終了を目指し、最終段階に入っているという。

(編集局 末岡洋子)

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マイクロソフトの発表資料

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