「“Write Once,……”は限定的神話」、MSが対J2EE戦略を明らかに
2002/4/3
マイクロソフトの.NET構想は、同社の戦略を方向転換したものではなくこれまで蓄積してきた分散アプリケーション開発基盤の上に成り立つものだという。そして、Windows Serverそのものがアプリケーションサーバであり、J2EEベースのアプリケーションサーバ・ベンダと比較すると、さまざまな点で優位に立てるという。
マイクロソフトは4月2日、プレス向けに説明会を開き、Windows .NET Serverについての戦略を明らかにした。マイクロソフトの.NET構想においてアプリケーション・プラットフォームの役割を果たすのがWindows .NET Server。Windows 2000 Serverの後継となる製品だ。Webサービスのプラットフォームとしては、J2EE準拠のアプリケーションサーバがあるが、同社 製品マーケティング本部 Windowsサーバー製品部 吉川顕太郎氏は、J2EEと比較して同社技術の先進性を強調する。「例えばデータへのアクセス。マイクロソフトがODBC(Open DataBase Connectivity)を発表したのは1996年、JDBC(Java Database Connectivity)は1998年だ。また、動的なWebページ生成ならば、ASP(Active Server Pages)は1996年、JSP(Java Server Pages)は1998年だ」(吉川氏)。Webサービス(マイクロソフトは“XML Webサービス”と呼んでいる)に関しては、「.NETの発表が2001年、Windows 2000 ServerはXML Webサービスの構築が可能だ。一方のJ2EEでは、最新版1.3でWebサービスのサポートはされていない」と語る。
サーバサイドにおけるマイクロソフトの戦略は“ビルド・イン”。Windows NT ServerからIIS、ASP、ADO(ActiveX Data Object)、そしてMTS(Microsoft Transaction Server)、MSMQ(Microsoft Message Queue Server)といったコンポーネントを次々と追加、サーバに統合してきた。今日、Windows 2000 ServerではCLR(Common Language Runtime)を加えた.NET Framework SDKと組み合わせて利用可能で、n層のアプリケーションの構築、Webサービスの構築の2つのシステムアーキテクチャに対応するという。「2つのアーキテクチャに設計の段階からネイティブに対応しているのは.NET Frameworkだけ」(吉川氏)。
Windows Serverは、すでに分散アプリケーション構築に必要な基礎的なリモートプロシージャ、トランザクション処理モニタ、メッセージキューイングといった機能を、OSとしてすべて提供している。「そのものがアプリケーションサーバだ」と吉川氏は言う。また、統合ミドルウェアと組み合わせた広義のアプリケーションサーバという点では、BizTalk Serverなどの.NET Enterprise Servers製品と組み合わせて実現しているとした。
「XML Webサービス、開発ツール、認証などのサービス機能などを比較すると、マイクロソフトの優位性は明らか」と吉川氏、「ただしマルチOSは別だが(笑)」。また、Javaの強みとされるベンダ中立性に関しては、「ベンダ中立を実現しているベンダは存在しない。どのアプリケーションサーバであろうと、ユーザーは選択した製品に必ずロックインされる」と述べ、「“Write Once, Run Anywhere(一度書けばどこでも動く)”は限定的な神話」とした。ベンダ中立性はJ2EEアプリケーションサーバ陣営の優位性にはならないことから、マイクロソフトは、価格と技術とで差別化を図っていくという。
マイクロソフトはWindows .NET Serverの展開にあたり、ターゲットをこれまでのIT技術者から開発者に大きくシフトする。技術動向としては、これまでの路線を踏襲し、.NET Framework SDKとして提供してきたものをビルド・インする。なお、IISに関しては、新バージョン6.0となり、現在の5.0と比べ大幅な強化を行いアーキテクチャも異なるものになるという。
(編集局 末岡洋子)
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