商用サービスを開始したCDN、その前途は?

2002/8/9

 インターネットイニシアティブ(IIJ)は8月8日、CDN(Contents Delivery Network/Contents Distribution Network)によるコンテンツ配信プラットフォーム事業「CDN JAPAN」の商用サービスを、8月1日より開始したと発表した。

 CDN JAPANは、2001年3月より始まったIIJ/日本オラクル/シスコシステムズら8社によるCDNでのコンテンツ配信事業のための共同実験プロジェクト。CDNとは、Mbpsクラスに達するストリーミング・コンテンツの配信など、従来のインフラのままではバックボーンやサーバに対して高い負荷をかけてしまうようなやりとりを、転送品質低下や負荷集中を起こさずに効率的に行う仕組みである。2002年6月まで、IIJの高速ネットワーク網HSMN(ハイスピード・メディアネットワーク)とそこに接続されたiDCをベースに実験が行われていたが、今回IIJが母体となり、本格的な商用サービスをスタートさせた。

 当初提供されるサービスは、「CDNJ/BSM(BasicSystem Module)サービス」「CDNJ/ISPサービス」の2種類。BSMでは、CDN網への接続/コンテンツ管理/ディスク・エリア提供といった基本機能のほか、ライブ配信/決済代行といったオプション・サービスも提供される予定。ISPサービスは、大規模ユーザー向けの接続環境のほか、Web/メール・サーバ機能の提供も可能なISP事業者向けのサービスとなる。

 IIJは今後の事業展開について、「プラットフォームをサービス事業者に水平展開する」「クローズドな環境と、ISPフリーな接続機能の両方の提供」「アプリケーション機能のASP展開」の3つを挙げる。同社自身はプラットフォームの提供のみに専念し、CDN上でどのようなコンテンツを配信するかといったビジネス・モデルについては、コンテンツに関してすでにノウハウを持っている各事業者に任せるという。だが、「インフラを提供して単に利用者を待っているだけでは、先の発展はあり得ない。コンテンツに関するアイデアなど、各事業者と積極的に相談していきたい」(アイアイジェイテクノロジー プロフェッショナルサービス部 シニアコンサルタント 染谷 直氏)と、CDNの普及に向けて意気込みを見せる。

 CDNはその性質上、品質の一定しないインターネットを経由することになると、ストリーミング・コンテンツのビットレートを落とさなければ安定した配信が行えない。クローズドなネットワークを構築したり、ISPごとにキャッシュ・サーバを配置したりするのはそのためだ。IIJのネットワークに直接接続できれば問題ないのだが、ほかのISPとの契約を行っているユーザーなどに対しては、NTTのフレッツADSL/Bフレッツ経由でISPとの契約なしにCDN JAPANのネットワーク網に直接接続可能な環境を用意している。このISPフリーな接続は、フレッツのアクセス回線のみの支払いで行える。

 また事業者向けには、ユーザー管理やコンテンツ管理など、CDNでの配信事業において必要な各種アプリケーションをASP形式で提供する。これらサービスにより、事業者がコンテンツをすばやく展開することが可能になる。

 先日エキサイトが発表を行った「BB.Excite」は、このCDN JAPANを利用した第1号のサービスである。今後も、コンシューマ向けのeラーニング教材の配信など、各種コンテンツの提供を考える事業者と提携を行い、1年以内には10社程度まで拡大していく予定だという。

(編集局 鈴木淳也)  

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