サイボウズのビジネスモデル転換は、吉か凶か?

2002/9/10

サイボウズの代表取締役社長 高須賀宣氏は、「パートナー制度の導入で、いい製品をより多くの顧客企業に使ってもらうことができるようになった」と述べた。ガルーンの製品名は、その製品の特徴を示す「つながる、おてがる、ひろがる」から付けたという

 サイボウズは、同社初の大企業向けグループウェア「サイボウズ ガルーン」を9月24日に発売すると発表した。その発表と合わせ、ガルーンの販売、導入支援を行う販売代理店のパートナー制度を作ることも発表。サイボウズは、これまでのWebサイトを通じての直接販売から、パートナー制度による間接販売にも力を入れ、ビジネスモデルを大きく変えることになる。サイボウズの代表取締役社長 高須賀宣氏は「パートナー制度導入でエンドユーザーだけでなく、業界全体に商品を提供できるようになる。今年はサイボウズの第2の創業になる」と述べた。

 サイボウズが販売している「サイボウズ AG」など小規模向けグループウェアは、ベンチャー企業などの新規参入が相次ぎ、競争が激化している。サイボウズもAGだけで収益を上げるのは困難な状況だ。大企業向けのガルーンを投入することで、盛り返したい考えだが、発売が当初予定していた7月から9月に延びたことで、悪影響が出る可能性もある。ビジネスモデルの転換は吉と出るか、凶と出るか。

 サイボウズの主力ソフトウェア、「サイボウズ AG」が300人までの中堅企業や部門が対象のグループウェアだったのに対して、ガルーンは1万人以上に対応する製品。グループウェアの機能はAGとほぼ同様で、掲示板やニュースの閲覧、スケジューラ、アドレス帳などグループウェアの基本的な機能が利用できる。

 AGとの違いは社内で導入している基幹システムやCRM、データベース、そのほかのグループウェアと連携してデータを取り出すことができる点にある。連携したシステムへのシングルサインオンが可能で、ガルーン上の画面でデータを確認できるようにした。

 価格は500〜999アカウントで利用する場合、1アカウントに付き9000円。1年継続するごとに1800円かかる。利用するアカウント数が増えるにつれて、1アカウントごとの価格は低くなる仕組みとなっている。サイボウズの取締役営業統括責任者 山本裕次氏は「ほかの大企業向けグループウェアと比較して安い価格だ」とコスト面でもほかの製品に対して有利だとの認識を示した。

 ガルーンは、サイボウズが新しく導入するパートナー制度を通じてのみ販売する。パートナー制度には、NECソリューションズ、内田洋行、日本ビジネスコンピューター、大塚商会、リコーテクノシステムズが参加。富士通も参加を予定している。

 パートナー企業はガルーンの販売のほか、販売代理店への教育や販売支援、サポートなどを担当。導入する企業に合わせてガルーンをカスタマイズするなど、サイボウズがこれまでウェブではできなかったことサービスを顧客企業に対して提供する。

 山本氏は「これまでの直販では、カスタマイズができないなどマイナス点があった。新パートナー制度では全国規模で営業、サポートできる。サイボウズにとっては非常に力強い」と、新パートナー制度のメリットを強調した。サイボウズは販売ルートを増やすことで、サイボウズ全ユーザーのアカウント数を2005年に480万人まで伸ばしたい考えだ。

 一方、グループウェアの「サイボウズ Office」を真似た製品を出荷したとして、サイボウズがネオジャパンに対して製品の販売差し止めなどを求めた訴訟で東京地裁は9月5日、請求を棄却した。

 判決ではサイボウズとネオジャパンのソフトに対して「表示画面で共通する点は、いずれもソフトウエアの機能に伴う当然の構成か、あるいは従前の掲示板、システム手帳等や同種のソフトウエアにおいて見られるありふれた構成」などと指摘して、著作権侵害には当たらないとの認識を示した。

 この判決について高須賀氏は、「ガルーンの発表はいいニュースだったが、判決はサイボウズにとってもソフト業界にとってもいいニュースではなかった」とコメント。今後、サイボウズは控訴する方針だ。

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サイボウズの発表

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