[2002 XML Japan開幕]
XMLは、Webを変える力、進化させる力

2002/11/29

ティム・ブレイ氏「情報のビジュアライゼーションには、コンピュータサイエンスとデザインがもっと近づく必要がある」

 XMLに関する国内で唯一の技術者向けイベントともいえる「2002 XML Japan」が東京の青山テピアで開催されている。初日の基調講演に登場したのは、W3Cで中心的な役割を果たしているテクニカル・アーキテクチャ・グループのティム・ブレイ(Tim Bray)氏だ。ブレイ氏は、Webは歴史上最も成功したコンピュータシステムだとしながらも、まだ多くの問題があることを指摘し、それを解決する手段がXMLにゆだねられているとした。XMLは将来のWebの核心となるというのがブレイ氏の主張だ。

 ブレイ氏はまず、現在のWebは3つの技術で支えられており、その1つでも欠ければWebではなくなってしまうとした。3つの技術とは、Web上のリソースを指し示す名前であるURI(Uniform Resource Identifier)と、Web上のおもなデータフォーマットであるHTMLやXML、そして3つめはデータをやり取りするためのプロトコルである。

 これらに支えられたWebは、歴史上もっとも成功したシステムであり、どんなデータでもつなげることができ、使っているユーザーをハッピーにしている。「ソフトウェア開発者はWebの原則を理解して、それを学び、自分のシステムにも利用すべきだ」と、ブレイ氏。

 しかし現状のWebは、例えばモバイルに代表されるPC以外のさまざまなデバイスへの対応は十分ではない。また日本語がときどき文字化け表示するように、国際化も完全ではなく、人間が参照するには使いやすいが、コンピュータが直接Webを参照することも十分に出来ないなど、まだ向上すべきことがある。これらは、Webを変える力、進化させる力として作用しているという。

 これらを解決する核心となるのがXMLだ。例えば、いまはWebの参照にPC上でInternet Explorerを使うのが主流であるため、多くのWebサイトは標準に準拠するよりも、Internet Explorerできちんと表示できるかどうかを重視している。しかし、近い将来、さまざまなデバイスとブラウザが登場し、Webへのアクセス環境の複雑さが増すとき、唯一その中で生き残れるのは標準に準拠することだ。そしてその標準とはXMLだとした。XMLの国際化はHTMLのそれよりもずっと優れており、マシンによる構文解析もずっと容易だ。

 もう1つ、Webの進化にXMLが力を発揮する分野が、情報のビジュアライゼーション(視覚化)だ。ブレイ氏は、Windowsのようなローカルな情報の格納にはフォルダのような視覚化されたメタファーが使われているのに、WebではGoogleに代表される文字による検索と表示が主流になっていると指摘。Webでも情報の視覚化が今後の課題になるだろうと予言した。この場合、視覚化の前提となるWebのメタデータの記述と収集、そしてグラフィックの表示にもSVGのようなXMLをベースにした技術が使われる。

 また、現在W3Cが力を入れているセマンティックWebの実現について、ブレイ氏は、「非常にむずかしい課題で、実現不可能なようにも思える。しかし(W3Cのリーダーである)ティム・バーナーズリー氏は賢明な人間であり、それを実現してしまうかもしれない」と控えめながらもその実現に期待を持たせた。

(編集局 新野淳一)

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