[IDF Japan Spring 2003開催]
インテルが克服する「メッシュ・ネットワーク」の課題
2003/4/15
ネットワーク事業を拡大しているインテルが、次世代の無線LANアーキテクチャとして期待されている「メッシュ・ネットワーク」の研究を急いでいる。4月9〜11日に開催された「インテル デベロッパ・フォーラム Japan Spring 2003」(IDF)でその最先端技術が紹介された。
メッシュ・ネットワークとは、複数の無線デバイスが相互に接続して、網の目(メッシュ)のように通信するアーキテクチャを指す。無線デバイスは無線のアクセスポイントとPCなどが想定される。現在の無線LANが1つのアクセスポイントを中心に、クライアントとなる複数のPCで構成されるのに対して、メッシュ・ネットワークでは無線機能を持つデバイスが相互に通信する。その結果、堅牢性や広帯域、周波数帯の有効利用、低消費電力などを実現できるという。
米インテルのコーポレート技術本部 ネットワーク・アーキテクチャ・ラボ ディレクタ アベル・ウェインリブ氏 |
IDFで講演した米インテルのコーポレート技術本部 ネットワーク・アーキテクチャ・ラボ ディレクタ アベル・ウェインリブ(Abel Weinrib)氏は、「現在利用されている第1世代の無線LANは有線LANの代替を前提としたアーキテクチャだ」と指摘。「ワイヤレスであることを十分に活用したワイヤレス・ネットワークの定義・設計が必要。その1つがメッシュ・ネットワークだ」と述べた。
インテルが研究しているのはメッシュ・ネットワークを実現する「マルチホップ無線ネットワーク」という技術。無線機能を搭載したあらゆる機器がルータとして動作し、複数の無線リンクで構成されるネットワーク内で、メッセージをルーティングする。「デバイスが互いに通信をすることで、全体としてうまくいく」とアベル氏は説明した。
メッシュ・ネットワークでは、1つのデバイスが接続可能なデバイスが複数になり、通信回線を複数確保することができ、堅牢性が高まる。「1カ所で障害が発生してもネットワーク全体には影響がない」(アベル氏)という。また、現在の無線LANが通信距離が遠くなることで通信速度が低下するのと異なり、メッシュ・ネットワークではデバイス間の通信を短距離にでき、広帯域を保つことができるという。
1つのアクセスポイントをフロアの中心に設置する必要がなく、PCの自由な設置も可能。アベル氏は「企業では多くのアクセスポイントを導入する必要がなくなる」と説明し、メッシュ・ネットワークの普及でネットワークの導入コストが低下するとの考えを示した。家庭でもメッシュ・ネットワークを導入することで、広帯域の確保が可能になり、動画コンテンツの安定的な配信が容易になるという。
アベル氏によると、インテルは現在、IEEE802.11bを使ったメッシュ・ネットワークを研究中。間もなくIEEE802.11aでも研究を行うという。UWB(ウルトラワイドバンド)技術を活用することも検討している。アベル氏は「メッシュ・ネットワークは、エンタープライズ、家庭、xSPおよび工場におけるネットワークに適用可能」と指摘した。
だがメッシュ・ネットワークの本格導入には課題もある。課題の1つはセキュリティだ。悪意のあるユーザーがネットワークに接続して、不正アクセスを試みる危険性がある。インテルではこの問題を解決する方法として、デバイス同士を認識させるユニバーサル・プラグ&プレイ(UPnP)を検討している。UPnPを活用することで、特別なホストなしにデバイス間での安全な相互接続が可能になり、セキュアなネットワークを構築できるからだという。
メッシュ・ネットワークの導入には、ほかにもQoS保証や共存性などの課題があるといい、アベル氏も明確な導入スケジュールは示さなかった。現在メッシュ・ネットワークについてはさまざまなベンダ、通信キャリアが研究を急いでおり、インテルは今後も研究に力を入れる方針だ。
(垣内郁栄)
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