なぜ、企業情報ポータルは失敗するのか
2003/5/17
米モルガン・スタンレーの調査によると、企業ポータルはセキュリティソフトに次ぐ2番目の関心の高さを誇る市場だというし、米ゴールドマンでは2003年1月の時点で(企業ポータル市場は)最も優先度の高い市場であると発表している。
なぜ企業はこれほどまでにポータルを導入しようとするのだろうか。その答えとして3つ指摘できるだろう。すなわち、(1)文書などの電子資産へのアクセスを容易にするため、(2)スプロール現象(窓口が散在している状態)を制御するため、(3)オンライン業務環境の普及である。
5月16日、都内で行われた「企業情報ポータルによるITと経営の統合マネジメント」と題するセミナーで講演したプラムツリーソフトウェアジャパン マーケティング・ディレクタ 湯本敏久氏は、以上のような論旨で、ポータル市場に対する注目度の高さを解説した。
しかし、現在、あるいは今後のポータル市場が必ずしも順風満帆(じゅんぷうまんぱん)な状態にあるとは限らない、とくぎを刺すことも忘れない。実際に企業ポータルの導入を開始したはいいが、稼働していない状態のポータルシステムが多く存在することも確か。湯本氏はこのようなポータルシステムの多くが「Empty Portal」であるとし、外枠だけが形作られ、最初から形骸化しているシステムであると指摘する。
企業の情報ポータル構築が成功を収めるにはどうすればいいのだろうか。そもそも、ポータルの成功を阻む要因として、「導入の目的を見失う」「導入に対する経営層の理解が不十分」「知識・ノウハウをうまく表現できない」「導入・展開の仕方がわからない」「使えるアプリケーションがない」「コストが高い」「カスタマイズが多く、人的・時間的な負荷が高い」など枚挙に暇(いとま)がない。米META Groupは、失敗した企業ポータル・プロジェクトの30%は上記の理由などによって、中身がないこと、まさにEmpty Portalであることが原因だとしている。
湯本氏は企業情報ポータル導入のポイントとして、「まず目的を明確にすること」を強調する。次に、専任グループを設置すること、彼らがコンテンツの維持や更新作業などを行うのである。そして、キラー・アプリケーションを組み込まなければならない。結局、頻繁に使用するアプリケーションがポータルシステムに組み込まれていなければ、従業員はポータルシステムに見向きもしない。さらに、コミュニティを活性化させる具体的な計画を立て、実行に移すこと。社内・外の情報・知識が共有される土壌(どじょう)作りを行うこと。最後に、「あくまでも現場主義であること」とした。実際に使用する従業員の立場に立たないポータルシステムは、必ず葬り去られる運命にあるのである。
(編集局 谷古宇浩司)
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