製品名を原点に戻した 「サイボウズ Office」の裏事情

2003/6/18

 「原点回帰」。「サイボウズ AG」の後継版の発表に当たってサイボウズがユーザーに伝えたかったのは、このメッセージだろう。

サイボウズ 代表取締役社長兼CEO 高須賀宣氏

 サイボウズは6月17日、同社の主力グループウェア製品のサイボウズ AGの後継となる「サイボウズ Office 6」を今夏に発売すると発表した。記者発表の冒頭、サイボウズ 代表取締役社長兼CEO 高須賀宣氏は、「グループウェアのシェアが第2位となった。今後近い将来、ナンバー1になる」と述べ、グループウェアのトップへの意気込みを示した。しかし、同社の業績は盤石ではない。

 サイボウズ Office4の後継となるサイボウズ AGでは、インターフェイスを変え、300人程度の中小、中堅企業が必要とする機能に絞った。ところがこのサイボウズ AGの新規導入、導入済み企業の新製品のバージョンアップが進まず、同社の今年2月〜4月期の決算でも足かせとなった。

 そのため、同社は製品名を「サイボウズ Office」に戻し、ユーザーインターフェイスもサイボウズ Officeだけでなく、サイボウズ AGのユーザーもそのまま使い続けられるようにした。これは、同社がサイボウズ Office 6に搭載したユーザーインターフェイス「Harmony」の一部。Harmonyは、多くの人がより簡単にサイボウズ Office 6を利用できるように開発された新ユーザーインターフェイス。そのほかにも、個人ごとに画面をカスタマイズできる「My デスクトップ」や、画面の配色の色やパターンのデザインを変更できる「My デザイン」といったパーソナライズ機能など、多彩な機能が搭載されている。

 そもそもサイボウズの製品がユーザーに支持されたのは、ITに関する高度な知識がなくても比較的簡単に導入でき、すぐに運用できる手軽さにあった。しかし同社は、サイボウズ Office AGでその紐帯を切り、「エージェント」の概念を持ち込み、グループから個人が利用しやすいように製品の方針転換を図った。しかし、同社の決算などから浮かび上がるのは、ユーザーはその方針転換を歓迎したわけではない、ということだ。

 今回の発表で強調する原点回帰により、Office 4までの紐帯を取り戻し、少人数向けのサイボウズ Officeの売り上げ再浮上を狙う。同社では来年度には35万人の新規ユーザーを獲得し、さらに既存ユーザーの半数がバージョンアップすると見込む。

明和電機 代表取締役社長の土佐信道氏のパフォーマンス時には、高須賀氏のとき以上のカメラが土佐氏のパフォーマンスを狙う。パフォーマンス後、高須賀氏が「今日はサイボウズ Office 6のこともよろしくお願いします」と述べる場面も

 サイボウズ Office 6の価格は、スケジュール、掲示板、社内メール、メール、アドレス帳、ファイル管理、個人ファイルなどが含まれる「サイボウズ Office 6 基本セット」が、7万9800円から(10ユーザー)で、サイボウズ AGで廃止された無制限版が復活する(基本セットの場合138万円)。また、現在オプションサービスの「年間継続サービス」が、基本セットの料金に初年度分が含まれる形になる。

 なお、同社はサイボウズ製品の理解促進を助けるコミュニケーションパートナーとして、土佐信道氏プロデュースによるアートユニットの明和電機を起用することも発表した。サイボウズが掲げるコミュニケーションパートナーの要件は、1)簡単なIT社会の実現というサイボウズの理念を体現できる人、2)サイボウズ Office 6の目指す世界をイメージさせるようなキャラクター。その要件を満たすとして発表されたのが明和電機。記者発表でパフォーマンスを披露すると、サイボウズ Office 6の説明時よりも多くのフラッシュ。コミュニケーションパートナーの出だしは成功裏に終わったようだ。

(編集局 大内隆良)

[関連リンク]
サイボウズの発表資料
明和電機

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