MIRACLE LINUX、提携で韓国でも発売へ

2003/9/27

 ミラクル・リナックスは9月25日、韓国のセキュブレインとジェネビックと戦略提携を結び、セキュリティを強化したLinuxシステム環境を日韓両国で発売すると発表した。提携によりミラクル・リナックスは、セキュブレインの持つセキュリティ製品を自社ブランド「MIRACLE HiZARD」として販売でき、一方ジェネビックを通じて韓国での「MIRACLE LINUX」の販売チャネルを得た。

左から、セキュブレイン 代表取締役社長 李炳哲氏、ミラクル・リナックス 代表取締役社長 佐藤武氏、ジェネビック 代表取締役社長 韓勲氏

 韓国企業と提携を結ぶ背景についてミラクル・リナックス 代表取締役社長 佐藤武氏は「不正アクセスやウイルス被害は社会問題化している。政府の進めるe−Japan戦略を成功させるためにも、これまでの企業セキュリティ対策では不十分だ」と指摘した。そのため、従来型のファイアウォールやIDS(不正侵入検知システム)を超えたソリューションとして「セキュアOS」を提唱し、政府・官庁へもMIRACLE LINUXを浸透させたい考えを示した。ファイアウォールはポートの開閉を管理をするのみで、Webサーバやメールサーバといった常時開いているポートへの攻撃(ウイルスメール、DoS攻撃)を防げない。またIDSは不正侵入を検知するが、直ちに防御できるわけではない。

 MIRACLE HiZARDはセキュブレインが開発した製品「Hizard」の日本語ローカライズ版で、ミラクル・リナックスが日本独占販売権を持つ。MIRACLE HiZARDはダイナミック・ローダブル・モジュールとしてカーネルに取り込まれプログラムのコードとスタックのアドレスを監視し、バッファオーバーフロー攻撃をリアルタイムで遮断するという。「韓国でSlammerが大流行したときも、Hizardユーザーは被害を受けなかった」とセキュブレイン 代表取締役社長 李炳哲氏は胸を張った。またウイルスに対しては、パターン検知を必要としないため、未知のウイルスに対しても防御できる。WindowsプラットフォームのGUI管理ツールを持ち、ハッカーから攻撃を受けると直ちにアラートが表示される。また、情報漏えいの防衛にもロールベースのセキュリティを設定でき、たとえrootユーザーがハッカーに乗っ取られてもデータへのアクセスを拒否できる。

 今回の韓国企業との提携について、佐藤社長はアジア市場への足がかりという位置付けを明確に打ち出した。「Linux市場は、アメリカはRed Hat、欧州はSuSEという勢力図が出来上がっている。MIRACLE LINUXはセキュリティをテコに空白地帯のアジア市場でシェア獲得を目指す。もちろん、あの国も視野に入っています」と、本命が中国市場であることを示唆した。そこで白羽の矢が立ったのがジェネビックである。2002年に設立されたジェネビックは日韓のITビジネスを手掛けており、MIRACLE LINUXの韓国市場での販売、コンサルティング、教育、保守サポートなどを受け持つ。

 会見に同席した新宅正明 日本オラクル社長は、韓国2社について「探し回った末、ようやく見付けた提携先」と表現し、「エンタープライズ市場にLinuxが広がれば必然的にOracleも広がる。アジア市場、特に中国市場に向けた施策をこれからシリーズで出していくので期待してほしい」と、日本オラクルのアジア戦略との連動を強調した。

 Linix版のMIRACLE HiZARDは10月20日から発売開始する。Windows版/UNIX版は年内に発売予定。ノード単位の価格体系で最低価格80万円から。

(編集局 上島康夫)

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