「ユーザー系SIerの逆襲」となるか、国内8社がERPを共同開発

2003/10/17

インフォベック 代表取締役社長の三浦進氏

 インフォコムは国内システム・インテグレータ6社とコンソーシアムを組み、中堅企業向けの国産ERPパッケージを共同開発すると発表した。2004年5月に製品を出荷する計画で、事業会社として「インフォベック」を10月1日に設立した。計8社で共同開発する。インフォベック 代表取締役社長の三浦進氏は「ユーザー系SIerの逆襲だ」と強調。ベンダ主導のERP開発をユーザー主導に転換させる決意を述べた。

 ERPパッケージの開発に参加するのは、インフォコムのほかに、ITエンジニアリング、ウチダユニコム、オリンパスシステムズ、JR東日本情報システム、ニチメンコンピュータシステムズ、日商エレクトロニクス。ERPパッケージは.NETプラットフォーム上で開発する予定で、マイクロソフトも開発に協力する。開発はインフォコムが中心となり、参加企業もエンジニアを派遣。すでに約1年間の開発を続けてきたという。三浦氏は「ユーザー系SIerに蓄積されたノウハウと製品を利用して、顧客視点の製品を開発したい」と基本方針を説明した。

 インフォベックは2004年3月にベータ版をリリースし、5月に会計、債権債務、販売、調達、在庫の各モジュールのパッケージを出荷する予定。2004年9月に人事・給与、資産、経費のモジュールを出荷する。出荷後5年で中堅企業向けERP市場のトップシェア獲得を目指す。インフォベックは2008年にパッケージ販売、システム構築で300億円の売り上げを想定。30%の市場シェア獲得を目標とする。

 参加企業は、インフォベックからERPパッケージの販売権と改変権を購入し、独自にカスタマイズする。その後、顧客企業に販売、導入を行う。インフォベックは、参加企業から受け取るユーザーライセンス料と保守料、広告宣伝・営業技術などの業務支援料をベースに開発コストを捻出する。ERPパッケージの開発に参加する企業を今後も募集し、10社程度まで増やしたい考え。インフォベックはインフォコムの100%出資会社(資本金2000万円)だが、今後は参加企業から出資を募り、出資比率を最終的にインフォコム51%、参加企業49%にする。

発表会見に出席した参加企業の代表者ら

 インフォベックの三浦氏は、ERPパッケージのターゲットして中堅企業の全業種のほかに、「高価で日本の商慣習に適合しない外来製品を持て余している大企業」や「市販製品に飽き足らない中小企業」、「分社化が進む大企業の系列企業でのASP利用」などを挙げた。ライバルとして指摘したのは、住商情報システムの「ProActive」や富士通の「GLOVIA」、オービックの「オービック・セブン」などだ。

 国内中堅企業のERP市場は、SAP、オラクルなど大企業向けERPで大きなシェアを持つベンダも開拓に四苦八苦している状況。価格面の考慮も含めて、中堅企業が本当に必要としているERPを用意しないと普及は難しいとみられる。三浦氏はSAP、オラクルについて「価格と、中堅企業向けのサービスレベルを考えるとそれほど脅威になるとは思っていない」と断言。「この事業は日本企業の閉塞状況に一石を投ずるもの。参加企業の顧客に導入することを起爆剤として、業界シェアを早期に獲得したい」と、開発に意欲を見せた。

(垣内郁栄)

[関連リンク]
インフォコムの発表資料
インフォベック

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