[Macromedia MAX 2003開催]
新RIAツールが登場、エンタープライズ開発の革命児となるか

2003/11/21


 米マクロメディアは、リッチ・インターネット・アプリケーション(RIA:Rich Internet Applicatoin)を開発するための統合プラットフォーム「Macromedia Flex」を米国のソルトレイクシティで開催中のコンファレンス「Macromedia MAX 2003」の基調講演で正式に発表した。「Royal」のコードネームで開発されていたMacromedia Flexは、Flashを用いたリッチなユーザーインターフェイスを開発するための言語とミドルウェアとで構成される。

米マクロメディア エグゼクティブ・バイスプレジデント Alan S. Ramdan氏。基調講演のオープニングに登場し「Studio MX 2004をいまここで売ります。お求めの方は?」と会場を沸かせる

 HTMLインターフェイスをベースにしたWebアプリケーションが、操作性や利便性の点でデメリットが指摘される中、最近注目を集めているのがRIAだ。これまでマクロメディアは、RIAの構築に向けたプロダクツとして、Flash作成ツールのMacromedia Flash MXやサーバサイドとFlashのコネクションを実現するためのミドルウェアFlash Remoting、そして、Flash RemotingなどRIAのための機能が統合されたサーバ製品としてMacromedia ColdFusion MXを投入してきた。今回発表されたMacromedia Flexがこれらの製品と異なるのは、Flashのアプリケーションをコードのみで生成できるという点だ。

 基調講演に登場した米マクロメディアのエグゼクティブ・バイスプレジデント Alan S. Ramadanは、その後に開かれたプレス向けのラウンドテーブルで「Macromedia Flexは、これまで我々がリーチできなかったエンタープライズ市場に投入する製品」と説明。「これでRIAをエンタープライズの世界にもっていける」と自信を見せた。

 Macromedia Flexは、Flashによるプレゼンテーションを実現するためのランタイムサーバとクラスライブラリ、そしてユーザーインターフェイスを記述するためのXMLベースの記述言語「MXML」で構成される。MXMLにはWeb上にリッチなインターフェイスを実現するための部品があらかじめ用意されているほか、開発者が自ら部品をカスタマイズしてコンポーネント化することができる。また、各部品にはAction Scriptでイベントハンドラを記述することができ、より動きのあるインターフェイスを実現できる。

 テキストエディタ上でコードを書くことによってFlashアプリケーションを作成できるスタイルは、Javaプログラマや、JavaScript、PHP/Perlといったスクリプト言語に慣れたエンジニアには受け入れられやすい点をマクロメディアは強調する。また、来春には、いまJava開発者の間で急速な普及を見せているオープンソースIDE、EclipseのプラグインとしてMacromedia Flexが提供される予定であり(コードネームPartridge)、これをきっかけにエンタープライズの開発者のマインドもつかみたいのがマクロメディアの狙いだ。

 米国では大手企業のカスタマーサービス・サイトのRIA化が進んでいる。MINI USA(http://www.miniusa.com/)などが有名な例だ。RIAが適用される傾向として「例えば、旅行予約サイトはツアーオプションの選択が多く、操作が複雑だ。こういった面倒な操作にユーザーは不満を感じやすい。RIAであれば、ワンスクリーンでの簡単な操作で予約ができる。ユーザーの満足度を高めたいところにRIAが活用されている」(Ramadan氏)と説明する。

会場のセッション情報を提供する「Macromedia Central MAX Guide」アプリケーション(クリックで拡大します)

 なお、基調講演ではそのほかにも、各プロダクトの責任者によってMacromedia MX 2004ファミリー製品が紹介されたが、中でも注目を集めた新製品は「Macromedia Central」だ。Macromedia Centralは、Webブラウザ上ではなく、デスクトップ上に単独で動作するFlashアプリケーションを実現する。開発にはMacromedia Flash MX 2004とCentral用のSDKを用いる。プロのプログラマでなくても、Flash MXユーザーであればインターネットを介したPtoPアプリケーションや、Webサービスを使ったビジネス・インフォメーション・アプリケーションを作成することができる。

 会場では、CentralアプリケーションでMAX 2003会場のセッション情報と会場マップを検索・表示するデモが行われた。開期中、会場にはワイヤレスLAN環境が構築されている。参加者はCentralをその場でダウンロードし、Webサービスで提供される会場の情報をCentralアプリケーションで参照できるようになっている(下記の関連リンクからダウンロード可能)。

 マクロメディアはMacromedia Centralを「Social Application」を提供するためのものだと位置付ける。これは、企業内や個人ユーザー間のコミュニケーションなどを目的とするアプリケーションを指す。今回、Centralの発表と同時にビックニュースだったのは、これまで「AOL Instant Messenger」(AIM)クライアントの仕様を公開してこなかった米AOLが、Central向けにAIMクライアント作成のためのAPIを公開したことだ。これで、Centralユーザーは、ユーザー間のコミュニケーションのためのアプリケーションを、AIMのAPIを使い自由に作成できることになる。また、今後マクロメディアはサードパーティーやユーザーが、Centralで作成したアプリケーションを一般に公開・配布するためのサーバを提供することも発表した。ユーザーは自ら作成したCentralアプリケーションでビジネスの機会を得ることが可能となる。ITを活用した新手のビジネスモデルとして注目されるだろう。

(ナレッジリンク 宮下知起)

[関連リンク]
Macromedia MAX 2003
Macromedia Central MAX Guide

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