Java Studio CreatorはJava開発者への福音となるか?

2004/2/19

米サン・マイクロシステムズ エグゼクティブバイスプレジデント ジョナサン・シュワルツ氏

 「Project Raveと呼ばれていたサンの新しい開発ツールは、Sun Java Studio Creatorとして6月に登場予定である」。米サン・マイクロシステムズのナンバー2ともいえるエグゼクティブバイスプレジデント ジョナサン・シュワルツ(Jonathan Schwartz)氏は、Java Technology Conference 2004 featuring Sun Tech Daysの基調講演の中でそう発表した。Project Raveは、「Visual Basicで開発しているプログラマにとって、Javaはハードルが高すぎる」(Java Studioのプロダクトマネージャ ダン・ロバーツ(Dan Roberts)氏)といわれていたJavaによる開発を、一気にエントリプログラマにまで広めるのが狙いだった。

 ロバーツ氏によると、Java Studio Creatorは、同社がすでに展開している開発ツールであるNetBeans、Java Studio Enterpriseなどを置き換えるものではなく、それらを補足する位置付けのツールになるという。サンの位置付けでは、NetBeansはJavaテクノロジを追求する技術者向けの開発環境、Java Studio Enterpriseは、企業のインフラ構築のための開発環境であり、今回のJava Studio Creatorは「企業内アプリケーションを構築する、コーポレイトプログラマのための開発環境」(ロバーツ氏)だという。

 Java Studio CreatorはJavaServer Faces(JSF)を採用し、画面フォーム上に部品をドラッグ&ドロップしていくことで開発していくことが最大の特徴。フォーム上にボタンを配置し、プロパティなどで設定していくと、別の画面へ移動したり、フォーム上にデータベースの検索結果を表示させる、といったことが容易にできる。もちろん、Javaのコードを直接プログラミングすることも可能。十分にVBライクな開発環境といえる。

 6月にリリース予定の最初の版では、JSFベースのアプリケーション開発環境としての基本機能を備えたものが提供されるが、Makoと呼ばれる次の版では、リッチクライアント、ポータル、モバイル画面に対応、コンポーネントのデザインもできるようになる。さらにその次のGreat Whiteでは、ビジネスロジックとプレゼンテーションの分離機能を備える予定だという。

 開発ツールへのJSFの採用はすでにIBMがWebSphere Studioで先行しており、Visual Basicプログラマの取り込みという狙いも同一だ。両社の狙いどおり、新開発ツールの登場でVisual BasicプログラマがJavaプログラマに転向となるだろうか。同社は、Visual Basicプログラマに転向の契機を与えるための“寄せ餌”ももちろん、今回のJava Technology Conference 2004 featuring Sun Tech Daysで用意していた。

 シュワルツ氏に限らず、今回来日したサンの重鎮たちが口をそろえて主張しているのは、実は、Javaによるデスクトップ環境についてだった。日本で4月に発売する予定の「Java Desktop System」を始め、開発段階の3Dインターフェイス「Project Looking Glass」、Webブラウザに代わるサン独自開発のリッチクライアンの紹介など、クライアントPCにおけるJavaの普及を本格的に行うための仕掛けを用意し、エンジニアの開発意欲をそそる方策を展開し始めているのである。
 
 加えて、日本市場では特に、携帯電話端末に対する力の入れようが注目される。シュワルツ氏も基調講演で最初に言及したのは、Java対応の携帯電話端末がいかに世界中で普及しているか、という点だった。

 もちろん、エンタープライズ・システムの開発環境についてのプレゼンテーションこそ、サンのお家芸なのだが、徐々に、携帯電話端末に搭載されるJavaの普及率といった、より消費者向け機器の開発環境に対する言及の割合も増え始めている。こういうところからも、IT業界の技術トレンドの変遷が垣間見ることができる。

(編集局 新野淳一、谷古宇浩司)

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