ムーアの法則≠パフォーマンス向上? インテルの次世代プロセッサ戦略
2004/2/24
米インテルCTO パット・ゲルシンガー氏 |
インテルが自らのプロセッサ戦略を変更しようとしている。IBM、ヒューレット・パッカードらが進める戦略に習おうというのだ。米カリフォルニア州サンフランシスコで2月17〜19日(現地時間)の3日間にわたり開催されたIntel Developer Forum(IDF)の最終日のキーノートにおいて、米インテルCTOのパット・ゲルシンガー(Pat Gelsinger)氏が明らかにした。
■ムーアの法則≠パフォーマンスの向上
ゲルシンガー氏は、同社が進める研究開発の最新情報の一端をスライドの形として紹介した。その中の「The Era of Tera」と題された次世代プロセッサ構想の話の中で、同社名誉会長のゴードン・ムーア(Gordon Moore)氏が提唱した「半導体のトランジスタ数は18(〜24)カ月で倍増する」という「ムーアの法則」について触れた。
半導体の微細化と集積度についてコメントした同法則だが、それがプロセッサの性能向上とリンクしていたため、集積度の上昇具合をそのままパフォーマンスに置き換えて考えられることが多かった。だがゲルシンガー氏が同キーノートで発した言葉は、「よく誤解されるが、ムーアの法則は集積度の向上について触れたものであって、それがそのままパフォーマンスの向上を示すものではない」という同社の現在のスタンスを示すものだった。
同氏は、半導体技術の向上とともにプロセッサのパフォーマンスが向上していることを示すとともに、そのパフォーマンスが実際にはパイプライン、MMX、投機実行、ハイパースレッディングといった半導体の利用効率をさらにアップさせる追加技術の数々の助けがあって実現したものであることを、写真1のスライドで示した。
写真1 パフォーマンス向上は、純粋なプロセッサ速度と効率化を実現する付加技術によって行われるという |
そして、以前にも同社が半導体学会で紹介した半導体の進化とその放熱量変化のグラフを映して、現在進めている半導体の高速化が、その熱量を核反応炉、ロケットノズル、そしてやがては太陽の表面クラスにまで到達させてしまい、単純なパフォーマンス向上が限界にきていることを説明した。
さらにプロセッサの速度向上に対してメモリアクセス速度(レイテンシ)の向上が図られておらず、ギャップが開く一方で、半導体同士の配線に使われている銅配線の伝送速度の限界や、プロセッサのパフォーマンス向上ほどは実際のアプリケーション速度向上が望めないなど、半導体技術向上以外の要因でパフォーマンス向上が阻害されることを紹介した。
■目指すのは全プロセッサのマルチコア化
こうなると、プロセッサ戦略の一大転換が必要となるである。そこでゲルシンガー氏は、同社がプロセッサの動作における特性を再度見直すことにしたという。その中で、実際にはその動作時間の多くがメモリからの応答待ちでホールト状態に入っていることに着目、このムダな時間をいかに有効に活用するかがプロセッサの利用効率向上に寄与すると語った。
同氏が示すその解決策とは、プロセッサのマルチコア化である。シングルストリームでの単純なパフォーマンス向上はもはや限界にあり、マルチコア化でこれらムダな時間を減らしプロセッサ全体の利用効率をアップさせることが、パフォーマンス限界を突き破る結果につながるのだという(写真2)。Pentium 4から採用されたハイパースレッディング技術は、そのとっかかりだというのだ。
写真2 インテルは、マルチコア化に活路を見いだそうとしている |
確かに、「インテルが待つ「ItaniumがXeonを超える日」で紹介したように、同社の2005年以降のプロセッサロードマップには、マルチコア化を前提にしたプロセッサ開発プランが示されている。同社では、クライアントPC向けのマルチコア・プロセッサを提供する計画もあるようだ。プロセッサのマルチコア化戦略は、数年前からIBMやHPが推進しているものでPowerプロセッサやPA-RISCにも採用されており、最近になりサン・マイクロシステムズもUltraSparcでマルチコア化の道を歩み始めた。今後はインテルならびに、AMDも同じフィールドへと歩を進めることになるだろう。
同社は、スレッド対応されたアプリケーションとプロセッサの組み合わせが、対応していない組み合わせに対して圧倒的な処理速度向上を見せるデモストレーションを紹介している。
(鈴木淳也)
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