[IDF Spring 2004:開催]
インテルが待つ「ItaniumがXeonを超える日」
2004/2/20
64bit extentionが登場しても、インテルの戦略に変更はないようだ。Intel Developer Forum(IDF)の2日目、2月18日には、デスクトップからノートPC、サーバにいたるまで、同社のプラットフォーム戦略が紹介された。今回は、1日目に同社CEOのクレイグ・バレット(Craig Barrett)氏によって発表されたIA-32の64bit拡張機能の話に続く形で、同社のサーバ戦略にフォーカスする。
■Itanium 2のロードマップや新機能を公開
インテル エンタープライズプラットフォーム部門ゼネラルマネージャ兼シニアバイスプレジデントのマイク・フィスター氏 |
同社エンタープライズプラットフォーム部門ゼネラルマネージャ兼シニアバイスプレジデントのマイク・フィスター(Mike Fister)氏のキーノートでは、ItaniumとXeonの今後のロードマップや新機能の数々などについて紹介が行われた。
2004年後半には、Itaniumのフラグシップとして、Madisonというコード名の9MBの大容量キャッシュを搭載した1.7GHzのItanium 2が登場する。また同時期に、1〜2プロセッサ構成向けの廉価版Itanium 2(Fanwood)が1.6GHzで登場する。Fanwoodには低電圧版のLV Itanium 2-1.2GHzも用意されている。2005年にはMontecitoというコード名のItaniumファミリが登場予定だが、同プロセッサより90nm製造プロセスによるデュアルコア構成が採用される。廉価版としては、Montecitoコアを採用したMillingstoneというコード名のチップが開発されている。さらに先のロードマップとしては、旧Alphaプロセッサのチームと共同開発のTukwilaと呼ばれるマルチコアプロセッサ(1プロセッサ内に複数コアを搭載したもの)を提供する計画があるという。
Xeonについてもロードマップが公開されたが、その前にまず、1日目に発表された64bit extentionについての補足が行われた。同機能では、セグメントなしの64bitアドレス拡張が行われており、レジスタ/ポインタ群の64bit拡張、8つのSSE向けを含む16のレジスタ新規追加、64bit整数演算機能追加などが行われているという。32bitレガシー、32/64bit互換、64bitオンリーの3種類のモードを持っており、既存のアプリケーションもそのまま問題なく使用可能となっている。
プロセッサ自体のロードマップとしては、64bit extentionが最初にサポートされる1〜2プロセッサ構成向けのNoconaが2004年第2四半期に登場する。その後は、2004〜2005年にかけてJayhawkと呼ばれるプロセッサがNoconaのセグメントに登場することになる。マルチプロセッサ構成向けとしては、Potomacが4MBの3次キャッシュを搭載して2004〜2005年にかけて登場する。Potomacの後継となるTulsaでは、デュアルコアをサポートすることになるという。
新機能群については、ItaniumプラットフォームでのDD2やPCI Expressのサポートが表明されている。また詳細は不明だが、仮想化技術として「Silvervale」、高性能化技術として「Foxton」、可用性を高める技術として「Pellston」というコード名が挙げられていた。前回のIDFで紹介されたセキュリティ機能のハードウェア実装である「Grantsdale」のように、次回以降のIDFで順にその詳細が明らかにされていくことだろう。
■Itaniumか? Xeonか?
近年のインテルにとって最大のテーマが、Itaniumをいかに普及させていくかということである。AMDのOpteronの追い上げも脅威だが、それ以上にやっかいなのがXeonの存在である。Xeonが採用するIA-32コアの性能限界からスタートしたIA-64への移行は、IA-32の予想以上の性能アップや普及により難航している。インテルの敵はインテルというのが、同社にとってのジレンマでもある。
前述のフィスター氏は、2004年1月に報道関係者などを集めて、「2007年以降はXeonを廃止し、Itaniumに一本化していく。そのために、Itaniumのシステム価格を引き下げるための周辺チップや装置の開発などに全力を注ぐ」というコメントを発表していた。これは、同社としてItaniumに本腰を入れた証拠だと考えられていたが、その後すぐに、バレット氏の64bit
extentionについてのコメントが発表され、その動向に注目が集まっていた。インテルとしては、64bit extentionの位置づけと、今後のItanium戦略の変化について、どのように考えているのだろうか。以下に、フィスター氏へのインタビューのコメントをまとめてみた。
――XeonらIA-32勢の勢いがこのままItaniumを飲み込むことはあるのか?
フィスター氏 それはない。現時点で、ItaniumとXeonには2倍近い性能差がある。今後、Itaniumの価格が下がってくれば、コスト性能比で逆転する瞬間がやってくる。それに、Xeonのアーキテクチャは疲れきった老人のようなもので、若いアーキテクチャのItaniumとの差は今後開く一方になるだろう。
――64bit extentionは一時的なものという位置づけか? Opteronとの互換性は?
フィスター氏 高性能を目指すアプリケーションは、やがて64bitの領域にやってくる。気がつくと、多くのアプリケーションが64bit対応となっていることだろう。64bit extentionはその橋渡し的な役割を持つかもしれない。互換性については、確かにOpteronと共通化されている部分はあるが、そもそものアーキテクチャが異なるため、その(性能面などの)挙動で違いが出てくる。
――Itaniumが64bit extentionをサポートする可能性はあるか?
フィスター氏 レガシーサポートを要求するユーザーは、多くの場合アプリケーションの動作にさらなるスピードを求めることはない。性能を要求するアプリケーションであれば、64bitの世界に入ってくるからだ。ItaniumのIA-32サポートが現状の形(ソフトウェアサポート)で行われている理由でもある。
――64bit extentionの発表が、今後のItanium戦略に影響を与えるか?
フィスター氏 今後数年内にXeonからItaniumへの移行は起こると思われるが、それが以前に発表した2007年というスパンとなるかは分からない。現状で、ハイパフォーマンスを要求する分野へのItaniumと、広くビジネス分野に普及するXeonという形で住み分けが行われているが、Itaniumの価格低下とともにXeonがしだいにItaniumへと置き換わることが考えられる。
これらコメントから分かるのは、インテルが、(1) Itaniumの価格性能比がXeonに追いつく、(2) 性能を求めるアプリケーションが64bit対応になる、というタイミングを必死に待っているという点である。それがいつか。前述の2006〜2007年というコメントのように、同氏は数年内と見ているようだ。変化というのは、意外とドラスティックにやってくるものである。
(鈴木淳也)
[関連リンク]
米インテル
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