強力な総合ソリューションベンダを目指す、NEC

2004/4/29

NEC 代表取締役社長 金杉明信氏

 NECは4月28日、2003年度の決算を発表した。2003年度の成果は「収益力の回復」「財務基盤の強化」、そして「課題事業の構造改革」となる。NECの代表取締役社長 金杉明信氏は「ほぼ目標どおり」を強調した。

 2003年度のNECの売上高は4兆9068億円(前年度比で4.5%増)、営業利益は1826億円(同51.1%増)、税引き前利益は1605億円(同161.1%増)となった(いずれも連結決算)。昨年度からの大幅な収益改善を実現するとともに、懸案だった有利子負債の比率を下げ、株主資本比率は向上させた。

 同社の個々の事業領域に目を転じると、同社の現在の状況、取り組みなどが見えてくる。そうした点を中心に紹介しよう。

 ITソリューション事業の売り上げは昨年度比で1%増だったが、営業利益は1058億円(2002年度)から917億円に減少した。これは「先行投資プロジェクトの増加が要因」(金杉氏)という。それを分析するとその要因として同社が挙げるのは次の2点だ。1点目は地上デジタル放送システムで、金杉氏によれば「東名阪で約7割のシェアを取った。が、お客さまも当社にとっても新領域だった」ため、採算を度外視して多くのリソース(人員)をそのプロジェクトに投入したためだ。2点目は「Javaを全面採用するような企業が増加した」ことだという。

 2004年度に関しては、地上デジタル放送システムがキー局から地方局へと需要が移る中で、キー局のシステム開発で培ったノウハウによって受注を確実に狙っていく。また、自動車業界、電機業界などはIT投資に積極的で、特に「サプライチェーン・マネジメントやCRMなどを中心に根強い需要がある」と語り、好調な業績を上げている業界などを中心に、IT投資が盛り上がるとの見方を示した。

 ネットワークソリューション事業の売り上げは大きく伸びた。この要因は携帯電話の成長による。出荷台数では2002年度が940万台だったのに対して、2003年度は1550万台へと伸びた。特に海外での台数の伸びは5倍。金杉氏によれば「全体(1550万台)の出荷台数のうち3割が3G(第3世代携帯)。中国での実績は100万台弱」という。2004年度に関して同氏は、「全体ではほぼ横ばいだろう。上半期末に(NTTドコモなどの施策によって)2.5Gと3G(の出荷台数)が逆転するとみている」と語った。

 エレクトロンデバイス事業の売り上げは2002年度と比べて微減だが、これはエルピーダメモリの売り上げが連結決算からはずれたためだ。営業利益では、2002年度は22億円の損失から2003年度は542億円の大幅増益を実現。特に好調なのはシステムLSIなどで、携帯電話向け、PC周辺機器向け、デジタル家電向け、自動車向けだ。さらにエルピーダメモリは2003年度第4四半期から黒字化し、通期での黒字化にめどをつけたとの見方を示した。

 金杉氏は会見の中で、NECのコア事業として「ITソリューション事業」「ネットワークソリューション事業」「エレクトロンデバイス事業」の3つを挙げた。このうちエレクトロンデバイス事業に関してはエルピーダメモリやNECエレクトロニクスを中核に据えることで、「ビジネスモデルを変えた」と成果を強調。そのうえで、ITソリューション事業とネットワークソリューション事業とを融合させることにより、より強力な総合ソリューションベンダを目指すとの考えを表明した。

(編集局 大内隆良)

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NECの発表資料

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