「ビジネス・インテリジェンス格言集」が教えること

2004/6/19

 ガートナージャパンのジャパンリサーチセンター リサーチバイスプレジデント 栗原潔氏は6月17日、コグノス主催の「Cognos Performanceセミナー」で講演し、ビジネス・インテリジェンスの最新動向を解説した。BIが企業で受け入れられるために必要な企業カルチャーを示す例として「ビジネス・インテリジェンス格言集」を紹介した。

ガートナージャパンのジャパンリサーチセンター リサーチバイスプレジデント 栗原潔氏

 栗原氏が紹介した格言の1つ目は「Bad news must travel fast」。業績の悪化や顧客からのクレームなど企業にとって悪い情報ほど、トップマネジメントに速く伝わらないとダメ、という意味だ。都合の悪い情報を隠すという企業カルチャーがあるとBIを導入しても必要な情報がBI上に載らず、真価を発揮できないことになる。

 2つ目は「Don't shoot the messenger」。トップマネジメント中には企業にとって都合が悪い情報が伝えられると、その情報を伝えた担当者を攻撃してしまうケースがある。しかし、攻撃すべきは担当者ではなくて、トラブルを生み出した要因。情報を伝えて担当者を攻撃する企業風土があると、BIがあっても都合が悪い情報がトップに上がらずに風通しが悪い企業になる。

 3つ目は「Every worker is a knowledge worker」。企業では従業員を経営企画や営業、マーケティングなどのナレッジワーカーと、コールセンターのオペレーターなど定型的な業務を行うプロダクションワーカーの2つに分けて管理することが多い。しかし、常に顧客に接して製品の問題点やニーズを認識しているプロダクションワーカーが情報を豊富に持っていることが多いのは事実。従業員を業務によって単純に二分し情報を遮断するのではなく、すべての従業員が企業にとって有益な情報を持つことを前提にBIを構築することの重要性を、この格言は示している。

 栗原氏はBIの初期導入に成功した企業の「次の一手」も紹介した。1つ目は社外のパートナーとのやりとりにもBIを適用し、全体最適を図ることだ。サプライチェーンの最適化を目指す。2つ目はBIを使う社内ユーザーの層を拡大すること。Every worker is a knowledge workerに沿った考えで「すべてのワーカーに情報を提供する“情報民主主義”」(栗原氏)を目指す。

 3つ目はCPM(Corporate Performance Management:企業パフォーマンス管理)だ。従来のBIが業務目標をベースに業務処理とトランザクションを効率化することに主にフォーカスしているのに対して、CPMでは企業のパフォーマンスを監視・管理することで企業全体の目標と戦略の実現を目指す。CPMはその実現のための手法、評価基準、プロセス、システムの総称。「一言でいうとCPMでは戦略系のフィードバックループをバックアップする」(栗原氏)。

 ガートナーでは2006年までに年商10億ドル以上の大企業の70%が、従来型のアプリケーションとBIツールを組み合わせてCPMを実現すると予測している。栗原氏によると「日本でもグローバル企業は関心が高い」という。

 栗原氏はBIのリアルタイム性をより高めたBAM(Business Activity Monitoring)も今後重要性が高まると指摘。BIに関心を持つ企業が中堅企業も含めて増えているとして、「おそらく来年、2年後くらいに堰を切ったようにBIの導入が進むのではないか」と予測した。

(編集局 垣内郁栄)

[関連リンク]
コグノス
ガートナージャパン

[関連記事]
「いまこそ戦略的にBIに投資するときだ」、ガートナー (@ITNews)
コグノスからシービヨンドへ、「スピード経営」で疾走する (@ITNews)
BIからエンタープライズBIへ、コグノス (@ITNews)
帳票は日本に学べ、Cognos ReportNetは和魂洋才 (@ITNews)

情報をお寄せください:



@ITメールマガジン 新着情報やスタッフのコラムがメールで届きます(無料)