「金融機関システムの高速化、コスト削減にLinuxを」、ロイター

2004/7/31

 ロイター・ジャパンは2004年6月、同社が提供する市況情報配信システム「RMDS」(Reuters Market Data System)のLinux版「RMDS - on Linux」が毎秒17万回のデータ更新を達成したと発表した。本製品は昨年2月に欧米で発表されており、米レッドハット、米ヒューレット・パッカード、米インテルと共同開発したものだ。このシステムで既存UNIX版と比べて、3〜4倍のスループット向上を実現したという。

 金融市場においては、秒刻みの価格変動にリアルタイムに対処するシステムが求められる。そのためには高価格・高性能なインフラが必須となる。ところがその一方で、どの金融機関も必死に取り組んでいるのが、TCOの削減。ロイターのプロダクト・マネージャーであるジャック・ギディング(Jack A. Gidding)氏は「RMDSのLinux版は、金融市場システムの高速化、TCO削減に大いに貢献する」と述べ、国内金融機関に向けて積極的に販売していく構えを見せた。今回、金融機関などを対象にした技術セミナー「RMDS次世代情報配信ネットワーク説明会」のために来日した同氏に、RMDSの技術優位性を語ってもらった。


――まずRMDSの概要について教えてください。

ギディング氏 ロイターが提供する市況情報のほか、東証・大証・JASDAQ・日経ニュースなどサードパーティの情報も統合し、リアルタイムの金融データを管理するシステムです。従来はSolarisなどの高性能UNIXサーバを使っていましたが、2年半前よりレッドハット、HP、インテルと共同でLinux版の市場データ配信システムの開発を進めた結果、従来よりも3〜4倍高いスループットを実現しました。これにより、TCOを削減しつつ、高性能な金融市場システムを構築できます。また金融取引にITが必須となった現在、データの遅延は取引に大きな影響をもたらします。Linux版により、よりリアルタイム性が向上したことで、金融機関やその顧客にとっても大きなメリットとなるでしょう。

 このソフトウェア自体は、CおよびC++プログラムで書かれており、API開発キットとしてC++、Java、COMを提供しています。こうした標準技術により、ほかのシステムとも容易に連携できます。

――なぜそれだけ高いスループットが可能になったのでしょうか。

ロイターのプロダクト・マネージャーであるジャック・ギディング(Jack A. Gidding)氏

ギディング氏 データソースからアプリケーションへのデータ配信までの階層をフラットにし、高速化を実現しました。データ配信の仕組みとしては、IPマルチキャストの「RTIC」とポイント・ツー・ポイントの「P2PS」の2つを用意しています。そのほか、チューニングの方法のひとつとして「大量データを限られたユーザーに送信するか」「特定のデータを多数のユーザーに送信するか」という2つのパラメータを設け、最適な数値に設定することで、各社のニーズに合わせた高速パフォーマンスを提供します。

――Linuxにこだわったのは、やはりTCO削減というニーズが金融機関から出てきたからですか。

ギディング氏 そのとおりです。TCO削減効果は大きいと思います。なぜならUNIXなどと比べて単に価格が安いだけではなく、金融機関が使っている既存のハードウェアをLinuxのプラットフォームとして使うことができるからです。

 従来より当社が提供してきたマーケット情報配信システム「Triarch」や、「TIBCO Market Data Distribution System」のアプリケーションもそのまま移行できるというメリットもあります。つまり、既存の資産を生かした形で、さらに高パフォーマンスが期待できるわけです。

――市況情報配信システムというと、金融機関の基幹システムと位置付けられるわけですが、安定性はいかがですか。

ギディング氏 実際に欧米では大手金融機関の導入事例がありますが、安定性については問題ありません。またこのソフトウェア自身、プロトコルレベルでのエラーを検知したり、迅速に障害復旧へ対応できる仕組みを備えています。「Linuxだから大量トランザクションが発生する基幹システムに使えない」ということはありません。そこは2年半前より、各社とじっくり開発したため、安心していただいて良いと思います。

(岩崎史絵)

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ロイターの発表資料

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