Googleニュース日本語版、直リンク問題を抱えてスタート

2004/9/2

 グーグルは「Googleニュース日本語版」(ベータ版)の提供を開始したと9月1日に発表した。グーグルが提供を開始したGoogleニュースは、さまざまなニュースソースからニュースを検索して集めたうえでグループ化(クラスタリング)や分析技術を利用して、ポータルのようにまとめて見やすくしたWebページ。なお、グーグルは日本語版のほか韓国語版の提供も同時に開始した。

9月1日に公開を開始したGoogleニュース日本語版の画面

 ポータルサイトのように、と書いたが、通常のポータルサイトと異なるのは、リンク先は実際のニュースサイトの記事への直リンクであること。「ポータルサイトのように独自の場所に囲い込んで広告でもうけることは考えていない」と語るのは、米グーグルのインターナショナル ビジネス プロダクト マネージャー リチャード・チェン(Richard Chen)氏だ。では、このサービスでは、どこで収入を得るのかについては、「ビジネスモデルはない。いいビジネスモデルがあれば教えてほしい」と述べるにとどまった。

日本生まれの米グーグル インターナショナル ビジネス プロダクト マネージャー リチャード・チェン氏。文系出身のエンジニアで、現在興味があるのは「日本語の形態素解析」だと語る。日本語のニュース通知サービスの「Google News Alerts」についても意欲をみせる

 日本語版で検索し、集めてくるニュースソースはサービスを開始した9月1日当初で600以上だ。が、Googleニュース日本語版のトップページに「ヘルプ・ご意見」へのリンクがあり、そこで要望があれば数を増やしたいという。また、日本語サイトであれば日本の内外を問わない。例えば「ブラジルの日本語サイトも含まれている」(グーグル関係者)という。それらを「リアルタイムに近い形」で検索し、集めてきた記事を、トップニュースのほか、社会、国際、経済、政治、文化・芸能、科学・テクノロジーの8つに分類して表示する。

 では、同じような記事のうち、どの記事が上位に表示されるのか。その点についてチェン氏は、「PageRankの応用で100以上の要素によって決まる」と述べる。どのWebサイトからリンクされているのか、集中制、タイミングなどさまざまな要素があるという。

 米グーグルが英語版のGoogleニュース(ベータ版)を開始したのは2002年9月。それから日本語版の提供まで2年近くかかった。その理由の1つとしてチェン氏が挙げたのは、「日本語などの2バイト言語の処理などの開発作業」だ。しかし、そのほかの理由として考えられるのは、リンクに関する著作権問題がある。グーグルは日本でももっと早い時期にサービスを提供したいといった考えを持っていたようだ。だが、サービス提供の可能性をヒアリングしている間に持ち上がったのが、リンクをめぐる著作権問題だった。

 今年3月、讀賣新聞社が原告となった直リンクに関する裁判で東京地方裁判所は、「見出しは著作物ではない」との判断を下し、讀賣新聞が敗訴した(東京地裁 平成14(ワ)28035)。が、同社は東京高等裁判所に控訴し、争う姿勢を変えていない。また同社の「YOMIURI ON-LINE」にある「リンクについて」の「ヨミウリ・オンラインへのリンクに関するお願い」では、リンクする場合の条件などを列挙し、それに従わない場合はリンクは認めない旨の記載がある。また、「個別記事へのリンクは原則としてお断りしております」との記載もある。

 これは何も讀賣新聞に限ったものではない。日本新聞協会の見解(1997年11月6日 第564回編集委員会「ネットワーク上の著作権について」)もこれに近い。この中では「インターネットの特徴の一つであるリンクについても、表示の仕方によっては、問題が発生する可能性がある場合も少なくありません」とし、「リンクや引用の場合を含め、インターネットやLANの上での利用を希望されるときは、まず、発信元の新聞・通信社に連絡、ご相談」するようにお願いしている。社団法人著作権情報センターもこの日本新聞協会の例を挙げ、「リンク張りが全く法律上問題がないとはいい切れません」との見解を表明している(社団法人著作権情報センターのWebサイトにある「コピライトQ&A(著作権相談から)」を参照)。

 こうした中でサービスを開始したグーグルは、「法的には問題がないと判断している」(チェン氏)が、「リンクをやめてほしい企業があればやめる」としている。

 Googleニュースには現在のところ(本原稿執筆時点)、全国紙系のWebページでいえば、YOMIURI ON-LINEとSankeiWeb(産経新聞)の記事は掲載されていないようだ。それに対してアサヒコム(朝日新聞)、MSN-Mainichi INTERACTIVE(毎日新聞)、NIKKEI NET(日本経済新聞)の記事は掲載されている。今後、この古くて新しい「インターネット上のリンク」問題が再び活発に議論される可能性があるだろう。

 なお、アットマーク・アイティ編集局長 新野淳一氏によれば、「アットマーク・アイティが提供しているコンテンツのリンクに関しては歓迎します」と語る。

(編集局 大内隆良)

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グーグルの発表資料

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