アドビが直接販売を拡大、「もっと汗をかけ!」

2004/9/29

 アドビシステムズは、インテリジェント・ドキュメント・プラットフォーム(IDP)事業で顧客への直接販売を拡大する方針を明らかにした。アドビはこれまでシステム・インテグレータ(SIer)経由の間接販売がメインで、顧客にシステムを直接提案し、販売することは少なかった。アドビ日本法人の代表取締役会長で、米アドビシステムズ アジアパシフィック地域担当 バイスプレジデント トニー・ネメルカ(Anthony Nemelka)氏は「直接販売やサービスを直接提供にすることによって顧客とより密接な関係を結び、顧客の要件を理解し、製品開発につなげたい」と理由を説明した。行政や金融サービス、製造業などの顧客を中心に直接販売を行うという。

アドビシステムズ 代表取締役会長 トニー・ネメルカ氏

 アドビのIDP事業は、電子文書フォーマットのPDFを活用し、ビジネスプロセスを自動化、効率化する製品群。XMLに対応し、ERPなどバックエンドの基幹系システムとも連携できる。ネメルカ氏は「企業の重要な情報の80〜85%は電子的、もしくはペーパーの文書」と指摘し、文書の流れを効率化することが、企業全体の効率化につながると説明した。米アドビの2004年第3四半期の売り上げのうち34%は、IDP事業などのIntelligent Documentプラットフォームが占めていて、アドビのコンシューマ向けソフトなどと同規模の事業に成長。ネメルカ氏は「IDP事業は成長のポテンシャルが高い」としていて、積極的な研究開発を続ける考えを示した。

 アドビが国内で直接販売を手がけるのは、IDP事業のうちのサーバ製品。アドビではIDP事業のサーバ製品ファミリを「Adobe LiveCycle」と名付けている。アドビはこれまでも顧客に直接コンタクトを取ることはあったが、今後はさらに踏み込んで同社の約30人の担当者が顧客にIDP事業のシステムを提案したり、コンサルティングサービスを提供する。提案後は、パートナーと連携し、顧客にSIerを紹介したり、アドビ自らがシステム構築を担当することを想定している。アドビの代表取締役社長 石井幹氏は「実際に顧客と向き合って汗をかくことが重要」としていて、顧客との関係強化を打ち出した。

 ただ、直接販売を開始してもアドビがパートナービジネスを大きく縮小することはなさそうだ。ネメルカ氏は「直接販売は売り上げのアップが目的ではない」として「LiveCycleの80〜90%は従来どおりSIerやソフトベンダ経由で展開される」と語った。

(編集局 垣内郁栄)

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