例えば「指揮官とIT」という視点

2005/2/18

 「防衛ITシンポジウム 2005」(主催:マイクロソフト)が2月17日、都内で開催された。テーマは「トランスフォーメーションと情報通信」。マイクロソフトによる防衛システムに対する同社技術の貢献度のアピールに加え、在日米軍関係者による軍事的情報通信システムの構築に関する講義や、前海上自衛隊関係者によるC4ISR[*]の在り方など、バラエティに富んだプログラムが組まれていた。

[*]
C4ISR:(Command、Control、Communications、Computers、Intelligence、Surveillance and Reconnaissance=指揮・統制・通信・コンピュータ・情報・監視・偵察)

 海軍指揮官にとって、ITとは何なのか? 前海上幕僚長 海将の古庄幸一氏は17年間の海上勤務経験(その半分以上の年を指揮官として過ごした)から、「指揮官とITのあるべき姿」を3つのポイントに集約した。すなわち「全体最適のための目標を明確に示す」「人が主役であるためのC2(Command & Control)が必要」「経営・市場原理/コスト・拡張性」である。これらのポイントは、どのようなレベルの指揮官であろうとも麾下(きか)の組織を統括し、運営していくうえで必要な要素を示している。ITは、このような行動を効率化するツールとしての役割を果たす。
前海上幕僚長 海将の古庄幸一氏

 古庄氏は、1805年10月21日にジブラルタル海峡西方の大西洋トラファルガー沖で行われた「トラファルガー海戦」(ネルソン提督率いるイギリス艦隊27隻対ヴィルヌーブ提督率いるフランス・スペイン連合艦隊33隻)と、1905年5月27日に日本海で行われたロシアのロジェストウェンスキー中将率いるバルチック艦隊と東郷平八郎大将率いる日本連合艦隊とのいわゆる「日本海海戦」を例に引き、ネルソン、東郷の高度な艦隊指揮能力の高さとともに、彼らの指揮判断を支援したC4ISRの質の差が勝利をもたらしたと指摘した。

 現代の軍事的脅威は、多くの識者の指摘を待つまでもなく、正規軍対正規軍という形式を持った戦争ではなく、敵の存在さえも不明確なゲリラ戦という形をとっている。当然、C4ISRの重要性は高まりこそすれ、低くなることはないだろう。そしてこれは、世界的な状況である。

 このような状況における日本の自衛隊をITの側面からみた課題として、古庄氏は「情報の共有化」「ネットワークの価値」「発想の転換(ハードウェアからソフトウェアへ)」「C4ISRにおける日米間のギャップの縮小」を挙げる。特に、ハードウェアからソフトウェアの価値比重の移行という観点では、「イージスシステムを搭載する駆逐艦1台を1200億円で調達するよりも、ネットワーク環境、ソフトウェア開発に予算を割くことで、イージス艦などのミサイル護衛艦を含む護衛艦相互のネットワーク環境整備を狙うことの方が有効かもしれない」と古庄氏はいう。

(@IT 谷古宇浩司)

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マイクロソフト

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