MCPの試験改定の背景は?

2005/2/18

 資格は有効で、役に立つのか。多くのITエンジニアにとって、それは大いなる議論の的であり、課題であろう。しかし、それは資格を提供するベンダにとっても同じことだ。MCP(Microsoft Certified Professional)、つまりマイクロソフトの技術者向け認定資格について同社が考え、今後実施したいことも、その課題にどうこたえるか、といった視点で考えると分かりやすい。

 マイクロソフトは2月16日、ITスキルをより実践的に評価できるようにMCPの試験内容を変更すると発表した。具体的にはこれまで知識の有無を中心に問う試験問題(多岐選択式)に、実務能力を評価するために実機に近いシミュレーション技術(MCP試験シミュレーション技術)も取り入れる。開始するのは2005年3月下旬からで、対象となるのは次の2つの試験だ。

・70-290 Managing and Maintaining a Microsoft Windows Server 2003 Environment
・70-291 Implementing, Managing and Maintaining a Microsoft Windows Server 2003 Network Infrastructure)

 上記試験で導入した後、ほかの試験にも順次広げていくが、すべての試験に導入するわけではないという。実践力が問われるような試験を中心にシミュレーション技術を取り入れていく。

 さらに、3月から5月末日までの2カ月間限定で「MCP資格取得5大サポートキャンペーン」も行う。キャンペーンの内容は資格取得の機会拡大、受験対策や受験費用のサポート、資格取得後のステップアップ支援などだが、ここでは受験者に最も喜ばれる最初の2つを取り上げよう。

(1)1人分の受験料の免除
  事前登録のうえ、同僚や友人などと一緒にMCPを受験する場合、1人分の受験料を無料とする。対象はMCP試験70-270 Installing, Configuring, and Administering Microsoft Windows XP Professional(Windows Server 2003トラックのMCSAおよびMCSE必須試験)

(2)1回目に不合格でも2回目の受験料を無料とする
  事前登録のうえ受験して不合格となった場合、同じ試験であれば2回目の試験に限り受験料を無料とする。対象は全MCP試験

マイクロソフト マーケティング本部 マイクロソフトラーニング部 部長 森田益成氏

 今回の試験の改定は、マイクロソフトの「MCP資格に対する危機感」にあると語るのは、マイクロソフト マーケティング本部 マイクロソフトラーニング部 部長 森田益成氏だ。グローバルでは、Windows NT 4.0以降960万人にトレーニングを提供し(過去1年では100万人)、認定資格者は合計で170万人(過去1年間では17万7000人が新規に取得)を誇るMCPだが、ここ数年で「ITエンジニア個人は資格のニーズや選択の多様化、経営層からは人材育成に対する厳しい投資効果の評価」にさらされるようになった。こうした声の高まりを受け、マイクロソフトは今後、ワールドワイドで認定資格制度の方向性を3点から見直すことにしたという。

 PROGRAM INNOVATION、DELIVERY INNOVATION、PRODUCTS & SOLUTIONSが、今後の方向性を決める3つのキーワードだ。受験をして資格を得て、というだけの流れから、どんなベネフィットを受験者・資格保有者に与えられるのかの改善(PROGRAM INNOVATION)、受験方法やトレーニング方法などの改善(DELIVERY INNOVATION)、認定資格制度の在り方や内容の改善(PRODUCTS & SOLUTIONS)である。

 これらの実現のため、(1)将来的にはユーザーは自身のプロファイルを作成、登録し、学習状況・進ちょくの確認などができ、(2)現在のスキルチェックなどから学習のプランニングを行う。そのうえで(3)実際にさまざまなトレーニング、書籍、リファレンスでスキルを獲得し、(4)認定試験を受験し、資格を得る。こうした(1)〜(4)の学習サイクルをユーザーのために構築していたきたいという(米国では提供済みのものもあるが)。

 マイクロソフトとしては、MCP資格は取って終わり、というモデル(資格=ゴール)からITエンジニアのスキルアップの一目標として資格をとらえ、自身の現在のスキルの状態を把握するスキルチェックや学習のフォロー、資格取得に対する支援、資格取得後のフォローなどを経て、再度新たなスキルチェック、といったスキルアップのプロセスに資格を位置付けたいと考えているようだ。ITエンジニアのスキル面におけるライフサイクルマネジメントを導入する、といい換えてもいいだろう。そして資格自体もシミュレーションによるものとはいえ、ある程度の実践力の証としたいという考えだろう。

 こうしたことを実現するため、マイクロソフトはMCP試験の内容だけではなく、その周辺のサービス、機能などを徐々に付加していくだろう。

(@IT 大内隆良)

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マイクロソフトの発表資料

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