NRI、ITILに“What”は載ってるけど“How”はない
2005/4/8
野村総合研究所(NRI)は4月7日、第16回メディアフォーラムを開催し、情報システム運用の具体的な課題とその解決方法や、NRIの経験に基づいた“成功する”ITILの導入方法などを紹介した。講演者は、NRI システムコンサルティング事業本部 産業ITマネジメントコンサルティング部システムマネジメントグループ マネージャ 浦松博介氏と、NRIデータサービス アウトソーシング営業本部 千手サービス事業部 部長 渡辺浩之氏。
野村総合研究所 システムコンサルティング事業本部 産業ITマネジメントコンサルティング部システムマネジメントグループ マネージャ 浦松博介氏 |
特に金融機関の勘定系システムの停止や、多くの業種で発生している個人情報の漏えい事件などを例に挙げ、それらの多くの原因がITに起因していると指摘。「従来の情報は紙ベースだったため、紙という物体を厳重に保管すればよかった。しかし、現在はデータという目に見えないものを管理・保管しなければならないため、一層運用面が重要となってくる」と予測した。
具体的な運用の課題では、既存のIT資産のライフサイクルを検討しないで計画を立てる「企画・計画のモレ」や、運用の効率性を考慮しない「技術調達のモレ」、重大障害の発生要因を根絶できない「障害是正措置のモレ」、要件定義を事後評価しない「事後評価のモレ」などを指摘。浦松氏は「これらの情報化運営面での“モレ”や“アフレ”が問題だ。競争の激化から企画重視となり、それが開発の多さにつながり、運用サイドが受け止めきれていないのが現状である」と警告した。
ではこのような運用面の問題をどのように解決するべきなのか。浦松氏は「システム運用マネジメントを強化するしかない」と答える。特に「情報化の運営実態はすべてシステムの運用現場にこそある」とし、現場の実態を正確に捉えてマネジメント力を強化することが必要だと語った。具体的には、現状として人間系に依存している場合の多い「稼働直後のシステム品質評価」や「稼働環境の全体整合性」などをきちんと整備し、企画部や開発部にボトムアップしなければならないという。また、浦松氏は「トップダウンだけでなく、ボトムアップも強化することでこそ、ITマネジメントの全体最適化が図れる」と語り、ボトムアップの重要性を強調した。
続いて渡辺氏は、「運用業務改革の実行〜ITIL導入は一日にしてならず〜」と題して語った。渡辺氏はNRIの子会社でシステム運用を担うNRIデータサービスで運用管理システム「千手」を担当している。同氏は、NRIデータサービスをユーザーのシステムを運用代行するアウトソーシング事業と、独自のノウハウやサービスを提供し、ユーザー自身のシステム運営の手助けをする“インソーシングのヘルプ事業”の二本柱であると説明した。
NRIデータサービス アウトソーシング営業本部 千手サービス事業部 部長 渡辺浩之氏 |
NRIでは、5カ所あるデータセンターのうち中核である横浜のデータセンターで改革を実施。同データセンターにおける「運用管理業務」と「オペレーション業務」の内訳を調査した。調査結果では、運用管理業務ではユーザーや開発部門との対応や調整が業務の50%以上を占めていることが判明し、オペレーション業務では監視業務の約8割が障害対応だった。このことから、同社では調整時間の短縮(25%短縮を実現)やオペレーション業務の自動化(定点監視業務を75%削減)などの対策を実施した。また、オペレーション業務の高度化を図るために、さまざまなトレーニングも実施したという。
この横浜データセンターでの改革をITILの運用管理業務フレームと照らし合わせたところ、ほとんどの部分が合致している上に、ジョブ管理やオペレーション管理などはITILにない業務フレームも構築できた。渡辺氏は「ITILは“What”つまり『何をしなさい』というのは載っている。しかし、“How”つまり『どうやってやりなさい』という大事な部分は載っていないのだ。これは業種によって方法が異なるためという理由もあるが、実際の運用では“How”こそ重要なのだ」と指摘。同社の「千手サービスマネジメントフレームワーク」では、この“How”の部分をサポートしていると説明した。
最後に渡辺氏は、ITILの導入成功のためには「IT管理導入の目的を明確化し、運用品質を上げること」「自社への導入範囲や適用方法を明確化する」「自社の運用業務をITILの視点から再評価する」「運用現場主体のサービス品質の向上を図る」の4点が重要であると強調し、講演を締めくくった。
(@IT 大津心)
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