携帯機器向け燃料電池の革新か、米社が発表

2005/4/13

 米ポリフューエルは4月12日、新しい携帯機器向けの燃料電池用電解質膜を発表した。電解質膜は燃料電池の心臓部ともいわれる最重要部品。ポリフューエルが開発した新しい電解質膜は別の方式の燃料電池の製造プロセスに容易に組み込むことができるのが特徴で、「日本企業にも売り込みたい」としている。

 ポリフューエルが開発したのはメタノールを化学反応させて発電する「ダイレクト・エタノール方式燃料電池」(DMFC)に対応した電解質膜。燃料電池には、家庭用や業務用のコージェネレーションとして実用化が始まっている固体高分子型燃料電池(PEFC)もある。PEFCが改質器を使ってメタンやメタノールから水素を取り出すのに対して、DMFCは改質器を使わずにメタノールを直接燃料として使用する。DMFCは改質器を用いないため小型化が容易で、携帯機器に向くとされている。

米ポリフューエルのビジネス開発担当副社長 リック・クーパー氏。手に持つのが新開発の電解質膜。連続巻き取り方式で大量生産する

 電解質膜は燃料電池の性能を左右する部品。セロハン状の透明フィルムだが、ポリフューエルのビジネス開発担当副社長 リック・クーパー(Rick Cooper)氏によると、電解質膜の性能によって燃料電池の稼働時間や耐久性、コスト、サイズなどが異なってくるという。

 今回、ポリフューエルが発表した携帯機器向けの電解質膜では、炭化水素系電解質膜を利用した。他社のDMFCではフッ素系電解質膜を利用するケースが多いが、炭化水素系電解質膜ではメタノールや水が膜を透過することを少なくして、燃料電池の性能を向上させられるという。

 ただ、携帯機器向け燃料電池を開発する企業の多くは、すでにフッ素系電解質膜を前提とした製造プロセスを持っている。さらに追加投資を行って炭化水素系電解質膜に移行するのは容易ではない。そのためポリフューエルが今回の発表で強調したのは、フッ素系電解質膜を使った燃料電池の製造プロセスとの互換性だ。「フッ素系電解質膜向けに設計された製造プロセスで、理想的な炭化水素系電解質膜を新たな代替材として効果的に利用できる」といい、各社が行ってきた製造プロセスへの投資を保護できるとしている。

 リック氏によるとポリフューエルはすでに日本企業とも協議を重ねていて、今後は「高い品質を維持しながら量産できるかが課題になる」としている。

(@IT 垣内郁栄)

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