1週間稼働する燃料電池PC、NECが実用化へ

2003/7/1

NECが開発した燃料電池内蔵ノートPC。燃料電池を内蔵した“ざぶとん”にA4ノートPCを乗せるデザイン

 NECは燃料電池を使い1週間のバッテリ稼働が可能なノートPCを今後2年以内に実用化すると発表した。現時点で世界最高の出力密度(40mW/平方センチメートル)を実現。NECでは「AC電源から解放された真のモバイルPCが実現する」としている。

 NECが発表した燃料電池内蔵ノートPCは、燃料電池の触媒電極材料にカーボンナノホーンを採用。PCを安定的に駆動させることができる出力を実現した。実用化時には出力密度を50〜100mW/平方センチメートルまで高めたいという。パッシブ型と呼ばれる燃料電池セルを採用し、小型、軽量にした。小型化したことで、ノートPCの底部に燃料電池を格納できるようになった。

 燃料電池内蔵ノートPCの試作機は、NECのPC関連事業の企画、製造、販売の新会社「NECパーソナルプロダクツ」の説明会場で展示された。展示された燃料電池内蔵ノートPCは、最大出力24W、平均出力14Wが可能。通常のA4タイプノートPCの底部を若干大きくしたデザイン。電池総重量は900グラムで、本体の総重量は2キロに収めた。試作機の動作時間は約5時間だが、2年以内に40時間まで延ばすことを目指している。40時間になれば、1日8時間ずつ利用しても5日間は燃料電池のカートリッジを交換する必要がない。

片手で利用できるWindows XP搭載のマイクロPC。1年以内に商品化予定

 パソコンの開発、生産を行ってきたNECカスタムテクニカと、販売、マーケティングを行ってきたNECカスタマックスが合併し、7月1日に発足するNECパーソナルプロダクツは、ほかにも片手で持って操作できるWindows XP搭載の「マイクロPC」や、音声を認識し、別の言語に通訳する「トラベル通訳端末」などを展示した。

 NECパーソナルプロダクツの代表取締役社長に就任したNEC 執行役員常務の片山徹氏は、CRMを使った顧客満足度の向上や、SCMを活用した生産効率のアップ、燃料電池搭載ノートPCなど商品企画力の強化で、「2003年度のパーソナル事業は黒字定着を見込む。V字回復を実現する年としたい」と述べた。

 燃料電池内蔵のPCは、NECのほかに東芝や日立製作所、ソニーなどが開発を急いでいる。東芝は今年3月にPCに接続する燃料電池を試作、2004年中に製品化すると発表した。前年割れが続くPC市場で、燃料電池がユーザーの需要を喚起する起爆剤になると各社は見ている。

(垣内郁栄)

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NECの発表資料
NECパーソナルプロダクツ

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