ブレードPCは次世代クライアントの本命か、NECが発表

2005/4/26

 NECは、クライアントPCの環境をブレードサーバ上で一元管理し、PCの処理に応じてリソースを柔軟に割り当てることができる「仮想PC型クライアント統合ソリューション」を4月25日に発表した。データやアプリケーションをブレードサーバ上に置くため、クライアントPCからの情報漏えいを防止でき、運用管理コストの削減にもつながるとしている。

 PC環境をブレードサーバ上に構築する技術は「ブレードPC」とも呼ばれ、米ヒューレット・パッカード(HP)や米クリアキューブも展開している。HPやクリアキューブのシステムは現状では、1台のブレードサーバに対して1台のPCを割り当てる1対1の仕組み。対して、NECが発表した仮想PC型ソリューションは、独自に開発したミドルウェア「VirtualPC Center」を使い、1台のブレードサーバに複数のPCを仮想的に割り当てることができる1対Nの構成を実現している。

NECのマーケティング推進本部 本部長 藤岡忠昭氏(左)と同社 第二コンピュータソフトウェア事業部 事業部長 赤津素康氏

 システムの管理者は、ブレードサーバ上の仮想PC環境に対して、プロセッサやメモリなどサーバのリソースを自由に割り当てることができる。各PC環境に対してしきい値を設定し、あるPCの負荷が高まってきたら、別のサーバのリソースを割り当てたり、別のサーバに仮想PC環境を移して処理を継続させることも可能。NECが会見で行ったデモンストレーションでは、高負荷になったPCの環境がシームレスに別のサーバに引き継がれる様子が示された。仮想PC環境が別のサーバに移される際にもユーザーが使っているアプリケーションは停止せず、ユーザーは利用し続けることができる。

 ユーザーが実際に利用するディスプレーには、デスクトップの画面イメージだけがICAプロトコルまたはRDPで配信される。ユーザーはNECが7月末に出荷開始するハードディスクレスのシンクライアント端末「TC-Station」にディスプレーやマウス、キーボードを接続して利用する。NEC製の既存のPCも使用可能。ミドルウェアのVirtualPC Centerは8月末に出荷する予定だ。

 NECのマーケティング推進本部 本部長 藤岡忠昭氏は、仮想PC型ソリューションについて「この仕組みはシンクライアントのユーティリティ化にもマッチする」として、データセンターに仮想PC型ソリューションを導入して従量課金でアプリケーションをユーザーに利用させるサービスも実現可能とした。「データセンターからは仮想PC型ソリューションを使いたいという話もいくつかきている」(藤岡氏)。

ハードディスクレスの「ネットブート型」

 NECは、またクライアント統合ソリューションの1つとして、サーバに格納しているOSやアプリケーションをクライアントPCにダウンロードして利用させる「ネットブート型クライアント統合ソリューション」を発表した。米アーデンスのミドルウェア「Ardence」を利用する仕組み。NECはネットブート型ソリューションで利用するため、ハードディスクレスのデスクトップPC「Express5800/51Lc」も開発、6月末に出荷する。価格はCeleron D搭載モデルで6万9800円。ノートPC型でHDDを搭載しないPCの開発も行っている。

 ネットブート型ソリューションはクライアントPCのディスク部分だけをサーバ側に集約したシステムといえる。ユーザーがクライアントPCを起動するとネットワーク経由でサーバからWindows XPと各アプリケーションのディスクイメージがPCにロードされる。ディスクイメージはすべてのクライアントPCで共通。個人ユーザーごとの環境設定やデータは別に構築するファイルサーバからロードして利用する。

 OSとアプリケーションはクライアントPCのCPU、メモリ上で稼働する。そのためPCのパワーを最大限使うことができ、3DCADなどパフォーマンスが求められるアプリケーションの利用に向いているという。OS、アプリケーション、データとともPCをシャットダウンすればメモリ上から自動で消去される。実行するアプリケーションや接続する周辺機器に制限はなく、「ローカルディスクがないこと以外は通常のPCそのもの」(NEC)だという。

 NECは2つのソリューションのほかに米シトリックス・システムズの「MetaFrame」とTC-Stationを組み合わせたソリューションも用意する。藤岡氏は「来年以降、既存のPC市場の10%から15%はシンクライアントシステムになるとみている」と予測した。

(@IT 垣内郁栄)

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NECの発表資料

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