レノボ・ジャパン、新しいThinkPadの幕開け
2005/5/17
レノボ・ジャパンが5月16日、都内で記者会見を行った。5月1日に米レノボによるIBMパーソナル・コンピュータ事業買収が完了し、同日日本法人が設立されたのはすでに報じられている通り。レノボ・ジャパンは営業拠点だけではなく、ThinkPadの研究・開発部門を持つなど、レノボのワールドワイド戦略において重要な位置付けを占めるとみられる。
レノボ・ジャパン 代表取締役社長の向井宏之氏 |
同社 代表取締役社長の向井宏之氏は、プレゼンテーションであえてPCという言葉の使用を避けた。その背景には、情報システムにおけるクライアントの位置付けとして、今後ともPCが居座り続けるという将来像に懐疑的な姿勢がうかがえる。向井氏は明言こそしなかったが、PCに代わる次世代クライアントの開発を行っていることを示唆した。
クライアントPCの分野ではシン・クライアントの潮流が新たに起こり始めている。サン・マイクロシステムズが推進する「Sun Ray」技術構想のほか、2005年1月には日本ヒューレット・パッカードとミントウェーブが共同でシン・クライアントビジネスの開始を発表した。5月16日には、NTTコムウェアとノベルが既存のPCをUSBメモリ型のデバイスでシン・クライアント化するシステムを発表している。
レノボのクライアント(PC)に対する立ち位置がシン・クライアントに傾くのかそれとも全く違う方向に向かうのか、現時点では定かではないが、当分の間は既存のThinkPadおよびThinkCentreの設計思想を受け継いだ製品をリリースしていくことになる。というのも、レノボ米国本社の経営陣は6人中、CEOを含めたトップ4人がIBM出身者で占められており、一部のアナリストやメディアが懸念する“製品品質やサポート力の低下”を回避するためにも、数年間はIBMの品質基準に則った製品開発戦略および開発体制を維持することになるからだ。
レノボのビジネス拠点は当初17カ国。数年以内に40〜50カ国に規模を拡大する予定。向井氏は繰り返し「カバレージ施策の強化」とコメントしていたが、デル、HPに続く世界第3位のPC企業としては、ビジネス規模をまずは先行する両社と同等レベルに持っていきたいところだ。しかし、デル、HPともにPCだけのビジネス展開は行っていない。一部のアナリストは、IBMがサーバ事業をもレノボに売却する可能性を指摘しているが、それはあくまで予測の域を出ないとしても、サーバとクライアントとの連携は企業や政府機関といった大規模顧客に対する提案ではどうしても必要になってくる。この点については、IBMとのパートナーシップを生かし、例えば、両社による共同マーケティングが行われることになるかもしれない。向井氏は日本IBMの代表取締役社長 大歳卓麻氏との握手の場面を強調しながら、レノボとIBMとの連携をアピールした。
結局、当分の間は、IBMのPC部門が分離独立して別会社になったという位置付けを維持し続けることになるとみられる(社員数の割合は、IBM出身者が半分を占める)。IBMのPC事業の最大顧客が米国政府および関連機関だったことから、中国政府と少なからず関係を持つ同社のビジネスに影響が現れるという政治的な懸念など、懸案事項はそのほかにもあるが、いずれにせよ、ThinkPad(ThinkCentre)の新たな幕開けには違いない。
(@IT 谷古宇浩司)
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レノボ・ジャパン
ノベル/NTTコムウェアの発表資料
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