MSがLinuxWorld登場、「オープンソースから学んだのは……」
2005/6/7
マイクロソフトの技術企画室 主席研究員 楠正憲氏は6月1日、オープンソースソフトウェア関連のイベント「LinuxWorld Expo/Tokyo 2005」(主催:IDGジャパン)で講演し、「マイクロソフトはいくつかのことをオープンソースから学んできている」と述べ、オープンソースに対する同社の姿勢を説明した。
マイクロソフトの技術企画室 主席研究員 楠正憲氏 |
楠氏は「Linux IPv6 RPM Project」や「Kondara Project」などオープンソースのコミュニティにかかわってきたエンジニア。UNIXやLinux、WindowsなどさまざまなOSでの開発経験を基に、「顧客のIT投資を生かしながらイノベーションを盛り込むにはOSやプラットフォームの互換性、相互運用性を保ちながらメリットを出していくことが重要」と訴えた。楠氏はマイクロソフトがUNIXやLinuxとの相互運用性を保つための取り組みとして、新たにクライアントOSとしてLinuxに対応した「Microsoft Virtual Server 2005」のサービスパック1を紹介した。「Windows Services for UNIX」や、次世代OSの「Longhorn」に盛り込む予定の標準シェル環境「Monad Shell」もデモンストレーションを行って、説明した。
マイクロソフトがオープンソースから学んだこととは何なのか。「1つはコミュニティとの対話の重要性」(楠氏)。楠氏は「技術コミュニティとの対話で製品をこうしたほうがいいというアドバイスを受けるようになった」と説明し、コミュニティとの話し合いの結果、携帯電話からの操作を改善した「Microsoft Operation Manager」や、サーバ構成の要件を変更した「Software Update Services v2」を例に挙げた。
もう1つマイクロソフトが学んだのは「ソースコードの開示」について。マイクロソフトは2004年4月に、IBMが作成したCPL(Common Public License)の下で「Windows Installer XML」(WiX)を公開した。公開先はSourceForge.net。当時はマイクロソフトがオープンソースソフトウェアをリリースしたとして驚きをもって受け止められた。しかし、楠氏は「ただ、ソースコードを公開するだけでは開発者に使ってもらえない」とし、「(コミュニティ活動は)長い継続的な取り組みが必要ということを勉強させていただいた」と述べた。
楠氏の講演からはオープンソース・コミュニティに対するマイクロソフトの微妙な姿勢が伺えた。楠氏は「マイクロソフトもオープンソースのよいところはどんどん採りいれていきたい」として、オープンソースやコミュニティ活動に対する前向きな姿勢を強調した。一方で、「知的財産など難しい話もある」として、オープンソースに舵を切ることができないマイクロソフトの立場を説明した。楠氏は「WindowsやOfficeのコードを(オープンソースで)出すのは一朝一夕には難しいが、WiXやWTLなどのソースコードを出していく中で、コミュニティと一緒につくっていくことのチャンレンジを手探りで始めている」と述べ、マイクロソフトの柔軟姿勢をLinux World来場者に訴えた。
(@IT 垣内郁栄)
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