レガシーマイグレーションはうまくいっていない〜NRI

2005/7/22

 野村総合研究所(NRI)は7月21日、第21回メディアフォーラムを開催し、レガシーマイグレーションの現状などを、NRI 常務執行役員 基盤ソリューション事業本部長 末永守氏が説明した。

 末永氏はまず、「最近景気に明るい兆しが見えてきたことからシステム投資が増加し、経営者も経営に役立つIT投資を加速させたいと考えるケースが増えている」と現状を説明。それに合わせて、従来の「主:レガシーシステム」「従:オープンシステム」から、「主:オープンシステム」「従:レガシーシステム」というレガシーマイグレーションが流行しているという。

NRI 常務執行役員 基盤ソリューション事業本部長 末永守氏
 しかし、レガシーマイグレーションの実態については「どこもうまくいっていないのが現状だろう」(末永氏)と説明した。その原因には、「仕様書が古い」「正しいソースコードが分からない」「仕様が分かる人間がすでに退職している」などを挙げた。その結果として「バグが収束しない」「スケジュール・予算超過」といった事態に陥っているケースがほとんどだという。

 レガシーマイグレーションの手法は、メインフレームをそのまま残し、外部システムからアクセスできるように標準インターフェイスに対応させる「ラッピング」、メインフレーム上のプログラムやデータをそのままオープン系プラットフォームへ移植する「リホスト」、ビジネスロジックは残しつつ、プログラムやデータベースを作り直す「リライト(再生成)」、業務の中身やプロセスを一から見直す「リエンジニアリング(再構築)」の4種類がメインだという。中でもリホストとリライトが一般的。費用や移行期間はラッピングが1番安く・早い、そしてリエンジニアリングの場合は長期間掛かり、多くの費用も必要になる。しかし、末永氏によると「リホストやリライトでも、やり方を間違えるとリエンジニアリングよりも費用や時間が掛かってしまうケースもある」という。

 これらの手法にはそれぞれメリット・デメリットが存在するため、マイグレーションを成功させるためには、「システム全体の最適化を考えて手法を使い分けることが重要」(末永氏)だという。例えば、採用されることが多いリホストでは、レガシーの内在化したアプリケーション課題を先送りのまま移行しなければならないほか、アプリケーション構造の見直しが進まない点や、オブジェクト指向にならない、標準インターフェイスが使えないといった問題も抱える。このため、移行が完了したとしても生産性の向上につながらない場合が多く、そもそもリホスト自体、簡単に移行が実現できるわけではないため、想像以上にコストが掛かり、コスト削減の趣旨からも外れてしまうケースがあると末永氏は指摘した。

 これらの問題を踏まえて、末永氏は「レガシーマイグレーションにおいてもシステム構築と同等のプロジェクト運営が必要だ」と強調する。レガシーマイグレーションは非常に初期の見積が難しく、大体見積が外れるという。このことから、スケジュールの遅延や体制不足になりやすい。この問題を解決するために、全体をマネジメントできるプロジェクトチームを編成し、全体マネジメントや運用環境の検討や非機能要件をどう実現するのかといった問題を検討する必要があるとしている。

 また、テスト工程に予想以上に手間取るケースも多いという。「たかが、同じモノを移行するだけ」という甘い認識からテストを軽視し、予定の10倍近くテストに時間が掛かるケースもある。末永氏は「特に10〜20年放置されていたような帳票系のプログラムなど、何に使われているのかも分からないような小さな問題に苦労する場合が多い。これを移行するためにプログラムの作成やテストの実施など相当なコストと時間が必要になっている。これは非常に費用対効果の悪い現象になっている」と指摘した。

 このように、昨今はレガシーマイグレーションへの関心やニーズは非常に高いものの、ユーザーが想像している以上に実際の難易度は高く、さまざまなリスクを考慮した検討が必要だ。特に、盤石な基盤構築や周到なテスト実施は必須だという。今後は、現在さまざまなベンダが開発している「レガシーマイグレーション関連ツール」の技術向上によって、特にリホスト/リライトツールを中心にツールの利便性は上昇するだろうと末永氏は説明した。しかし、それらのツールによって、一部の移行作業は簡単になるものの、マネジメントに関する課題は依然として残り、今後もマイグレーション時の壁になるだろうと末永氏は予測した。

(@IT 大津心)

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